雇用の大切さ(ビジネスサプリメント536号)
昨年は自殺者が3万人を下回り2万7千人強となったようだがまだまだ多い。以前に
新聞紙上に自殺を「本気で考えた」人が20%以上と言うショッキングな記事が掲載
されていたのを記憶している。内容は大人の4人に1人は自殺を考えたことがあり、
20人に1人はそれが1年以内のことだったと言う内閣府の調査であった。また自殺者
数が多いのは中高年だけではなく、若い世代への対策も重要と指摘していたのが
怖い。20歳以上の3千人にアンケートし、2017人が回答されたらしいが「本気で自殺
をしたいと思ったことがある」と答えたのは23%、各年代で自殺を考えたことがある
人の割合は、20代が28%、40代は27%、50代は26%、「最近1年以内」に自殺を考え
た人は5%、20代では10%とある、びっくりしたのは20代の高さは異常ではないか。こ
れは最近の若い人達の雇用状況が影響しているかもしれない。働きたくても働く職場
がない、全国の非正規社員は1800万人弱と言われているが、このうち15歳から34歳の
若者の非正規社員は400万人を上回ると聞く。若者の半数は懸命に働いても満足な
収入が得られず、契約社員等の不安定な位置づけに問題があるのではないだろうか。
私も阪神淡路大震災時に非正規社員の雇い止めをせざるを得ず、雇用側の直接担当
者になってしまったことがあったが、お互いに誠に辛い不幸な出来事に直面したことが
あり、「雇用」の大切さを身をもって感じた。アメリカ連邦準備理事会は2012年12月に
失業率が6.5%程度に下落するまで事実上のゼロ金利政策を決めたようだ。日本も何
とか若者の雇用環境の改善を望みたいと思う。卒業しても就職先がないのは誠に不幸
なことである。また全回答者のうち43%が悩みを抱えた時に誰かに相談したり、助けを
求めたりすることにためらいを感じているとある。自殺を考える人が多いのに、支援を
求める人が少ない現実に驚く。メンタルヘルス対策が叫ばれて久しいが一向に改善の
兆しが見えないのも実態であろう。「ストレス耐性が弱い人は仕方がない」と言う切捨て
論があるのも怖い。人は資産であり、決してコストではない。悩んでいる人の信号を見
つけようと言うことも大事だが、所詮モグラたたきのような気もする。最も大切なことは
若い人の雇用が確保され、お互いに相手に関わる心、即ち関心を持ち、何時でも何処
でも「気楽にまじめな話が出来る風土づくり」が一番大切ではないだろうか。