人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2009年5月31日

意味ある一言(ビジネスサプリメント369号)

私がどん底であった時、旧知の人から「深刻になり過ぎている、真剣に

取り組めばどうか」と言う、私の人生を変えた大きな一言をいただいた。

それ以来「真剣だったら知恵が出る、中途半端だったら愚痴が出る、

いい加減だったら言い訳ばかり」ということを肝に銘じている。

「真剣」とは木刀・竹刀ではなく、人を殺傷できる刀剣なのである。

会議でもぬるま湯の中で「どんどん意見を出そう」と言っても有益な

意見が出ることは少ない。トップに対しての甘言的な意見の羅列では

全く意味のないものになってしまう。

「瀬戸際でこの企画が通らなければ我社は倒産する」と言うくらいの

真剣さがあれば、人間いくらでも知恵が出てくるものなのだ。

「自分で真剣に考え、真剣にやりぬき、真剣に結果を出すべきである」。

今この100年に1度の危機・大不況で多くの人や経営者が深刻になって

いるに違いない。「深刻」からは「ダメだ!」と思い込み、

負のスパイラルにはまり込んでしまうし、何も生まれてこない。

「真剣勝負」という言葉はあるが「深刻勝負」と言う言葉はないのである。

先日の日経新聞の交遊抄で、兼松エンジニアリング会長やまもと・ごいち氏が

昔中小企業に勤めておられた時に旧友に対して「私の給料は都会で働く

君らの半分だ、君らがうらやましい」と愚痴られたそうだ。

それに対して旧友の方は「それはお前が悪い、社長が喜んでたくさん

給料を出せるよう、もうかるようにするのが君の役目ではないか!」と

言われたとか。この一言で人生が大きく前向きに変わられたと

述べられていた。そう!「他責」は簡単であるが「自責」にならないと

真剣にはなれない、意味ある一言で随分考え方が変わるのである。

それこそが「気づき」ではないだろうか。

2009/05/31 06:55 |

2009年5月24日

改革(ビジネスサプリメント368号)

現在の大不況や閉塞した社会では「変革」「改革」が叫ばれて久しいし、

まさにCHANGEの時なのだろう。しかし上手く改革が出来ている事例

にはめったにお目にかかれない。

丹羽宇一郎氏が朝日新聞で「メタボのおなかをたたいてみれば、

カイカク、カイカクの音がする」という川柳を掲載されていたが、

思わずうなってしまった。

世の企業の多くはメタボ化した組織をスリムにするため

「安易な人員削減」が行われている。しかし本当にそれでスリム化

するのだろうか?第一生命保険のサラリーマン川柳の2位に

「久しぶり、ハローワークで 同窓会」とあったが笑い事では

すまされない現状である。人員削減する側は働く人たちのマインドを

考えたことがあるのだろうかと疑問に思う。

安易な人員削減や、人件費減額では優秀な人材がいなくなり、

人時生産性が著しく落ちてくるだろう。

残った人達のモチベーションは著しく落ちるし、贅肉落としが

結局は筋肉を落としてしまう、目に見えない手抜きが起こる、

短期の数字に一喜一憂すると言ったことが起きないか。

またもっと身近な無駄を忘れてはいないか、無駄な会議、

無駄な交通費、無駄な残高、無駄な光熱費などまだまだ手を

付けなければいけないところを疎かにしてはいないだろうか。

コストカットよりもっと大事なのは社員の心や改革の精神である。

社員一人一人が改革のマインドを持って行動することがありき

ではないだろうか。

改革とはまずは各自の「気づき」からしかなし得ない。

そのためには経営者自らが「変わらなければならない」し、

自ら変われば周りは変わるものである。

職場がギスギスしていては改革どころか、やる気喪失病が蔓延する。

この川柳の6位に「ストレスか?聞かれる上司がその原因」

になってはもう破滅である。

2009/05/24 07:02 |

2009年5月17日

野鴨の精神(ビジネスサプリメント367号)

IBMの2代目経営者トーマス・ワトソン・ジュニア氏が「野鴨の精神」

を唱えておられたという日経新聞の記事を見た。

海岸で秋に南に渡る野鴨を見て、親切な人が餌を与え始めた。

そうすると安楽に過ごして太った鴨は飛べなくなったと言う寓話である。

野生を失った鴨は自然には戻れないのだ。

また野生の「虎」と言う話を思い出した。動物園の虎は檻と言う限られた

枠の中でしか動けないが、餌は飼育係から与えられるので生きてはいける、

しかしもしジャングルに放たれたら自分で餌を捕獲する力がなく飢え死に

するだろうと言う話である。

最近良く見かけるがカラスがゴミステーションに来て、ゴミ袋をつついて

ゴミをバラバラにして餌にしている。誠に見苦しいし汚い状態になっている。

鳩ならば公園で餌を与えている人を良く見かけるがカラスには誰も餌を

与えることはないだろう。だからカラスは自分で餌を工夫してあさって

いるのだ。またカラスはすごく頭が良く人の顔を覚えているらしい。

自分で生きる力を付けている。

ビジネスパーソンは如何だろう。野鴨やカラスと比べるのは誠に失礼な話

であるが、餌を与えられ「飼育」されてはいないだろうか。

経営者は統制的になり、社員は従属的になってはいないだろうか?

自分自身を振り返ると野生的な気持ちがかなり薄れていたように感じる。

100年に1度の危機・不況と言われてもこの「野生的」な気持ちが薄れて

いては手の打ちようがないのではないか。

自分で考え動く力や、当事者意識をもっと植えつけて生き抜いていかない

ことにはこれからは極めて危ういことになりはしないか。

要は組織の中での「自立」が大事であり、従属した世界からは気づかない

のである。今こそ「自分の強みを再発見し、自分の力を存分に発揮する」

ことが求められている時はない。結果として組織に貢献するものなのだ。

自分がこの野鴨になっていないかを、真剣に考える時が来たのである。

2009/05/17 07:01 |

2009年5月10日

2:6:2の考え方(ビジネスサプリメント366号)

ビジネスの世界で良く言われる「優秀な20%の人材で売り上げの80%を占める」

と言う言葉がある。確かにそうかも知れないが、そのような企業は基盤が脆弱に

思えてならない。では残りの80%の人材は要らないのか、どうして成果を残せ

ないのか?よく言われる20%の人が変われば「組織は変わる」と言う説もあるが、

私はそうは思わない。ある講演で「2:6:2の原則は良く分かる、優秀な2割を

増やしていかないと行き詰まる、どのように増やせば良いか?」と言うご質問を

受けたことがある。

その時にお答えしたのは「ノウハウやスキルだけでは部下は伸びない、

部下に対してしっかりした人間観を持つこと、2:6:2を上司が思い込んでいないか

まずはじっくり検証して欲しい。そして6の中にも2:6:2がある、この中の出来ると

思われる2の方を優秀な2の中に入れるように指導しませんか!

この繰り返しをして欲しい、人材を見分けるのは非常に難しいがポイントはその人の

変化度や成長過程を良く見ること」と申し上げている。

そして「あなたは6の中の出来ると思われる2を認識されていますか?」とも

付け加えたが、首を傾げられたことを思い出した。

組織と言うものは本当に優秀な2が増えて過半数以上になればその組織は

必ず変わるものではないだろうか。取り残された人達に危機感が生まれ、

自然に自分自身で変わっていく可能性がある。

もう思い込みや結果だけの評価を止めよう、指導的立場の方は、人材には

必ず素晴らしい強みが有るはず、それを思いきり伸ばす「ナビゲーター」となり、

自ら「気づき」が出来て主体的に動けるように導いていかないと人は

「人財」にならない。

私自身の経験からもかなりの「思い込み」だけで決め付けてしまい出来る方の

芽をつんでしまった経験がある。

2009/05/10 09:13 | | コメント (1)

2009年5月 3日

年輪経営(ビジネスサプリメント365号)

寒天で有名な長野県伊那の「伊那食品工業株式会社」の塚越会長が上梓された

「リストラなしの年輪経営」という本を読んだ。創業以来48年連続増収、増益と言う

記録を達成されているのである。一貫して「会社は社員を幸せにするためにある」と

言う強い信念を貫いておられる。老舗企業と呼ばれるには

① 無理な成長はしない
② 安いというだけで仕入れ先を変えない
③ 人員整理をしない
④ 新しくより良い生産方法や材料を常に取り組んでいく
⑤ どうしたらお客様に喜んでいただけるかという思いを常に持ち続ける

理念を実践されている。今の大不況の原因も殆どの企業がこの理念を忘れ去った

からだろう。

①は100年に一度の危機は経営が無理に無理を重ねた結果、またまたバブルが

弾けたのである②は安さだけで品質を考えないから欠陥商品がまかり通る

③は人がコストでもあるが、それは近視眼的見方であり資産であり宝を生む財産

なのである④は常に時代の変化をキャッチして工夫改善を怠ると生き延びることは

絶対に出来ない⑤は「顧客目線」に立てているのか、お客様のご期待値を上回る

ことが出来ているのかが問われる。

企業というものは述べられているように「遠きをはかり」ゆっくり成長してこそ

永続的発展となり、何よりも先に社員の満足につながるものだ。

今のこの大不況時代には貴重な真っ当な企業理念ではないだろうか。

常に守りを固めての攻める経営を忘れてはならない。安易に人員整理をして、

筋肉まで細らせては回復不可能なことは明確である。

私の経験からも「破綻」すればどれだけ多くの不幸な目にあう方が生まれるか

身をもって体験しているので、述べられていることについての異論は全くない。

今こそ経営者が「変えるべきものを思いきって変える勇気と、

創業時の守るべきものを守る信念」を峻別する英知が求められる時はない。

2009/05/03 07:42 |

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