人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2012年6月24日

極めた人の言葉(ビジネスサプリメント510号)

先日の朝日新聞に「頂点の極意」と題して昨年のワールドカップで優勝したサッカー

女子日本代表(なでしこジャパン)の佐々木則夫監督と、アテネ、北京オリンピック

金メダリスト北島康介選手を育てた競泳日本代表の平井伯昌ヘッドコーチの対談特集

が掲載されていた。人と組織を語る上で非常に参考になる言葉の満載であった。

以下ポイントを解説するとお2人共「精神面のサポート」が卓越されている。佐々木

さんは「絶対に勝たなければいけない状態に追い込むと、失敗を恐れる、しかし失敗

を恐れてはつまらないし、勝てない」「緊張していると思うと、くだらないギャグを

言ってみる、それでリラックスし、澤さんが<頑張ろう!>と言うと盛り上がる」と

言われる。平井さんは主将の松田丈志選手が「僕らのようにオリンピック経験のある

10選手は、初めての17選手に成績を出させてあげるのが役目」と言ってくれる、即ち

個人とチームの目標が一致するようにもっていくらしい。そうだ私の経験上も

「MUST=ねばならない」からは緊張しか生まれてこない、「WILL=このようにした

い」と思わせないと成果は残せないものだった。そして必ず自分の意を受けたナンバー

2をチームに作っておかないとワンマンだけでは難しいことが多い。また「本人に分か

らない才能を見つけてあげる」ことも大切だとのこと。平井さんは「北島選手はもと

もと自分では100メートルが得意だと思っていたが世界新記録を出したのは200メート

ル、寺川選手も200メートルでアテネオリンピックに出たが、今回は100メートル、

本人に分からないような才能を見つけてあげることが大切と述べられている。平井

さんが佐々木さんに「女子を教える向き不向きはありますか?」と言う質問に対して、

佐々木さんは「格好つけないでやれば結構やれる、NTTに入社した時に女性がたくさん

いるなぁと格好つけて疲れてしまった」とも。実は私も百貨店に入社した時、女性の

パワーに圧倒された経験がある。随分昔に新入社員教育合宿で200名あまりの女子の

中で男は私1人になったことがあったのを思い出した。その時思ったことは普通に素直

に自分を出せば、男性であろうと女性であろうと全く関係はない。必死に教える後ろ

姿さえ出しておれば問題はなかった。印象的だったのは平井さんの「人に勝つと言う

より、自分に克てば、相手が負けると言うのが金メダル」と述べておられた。間もな

く始まるロンドンオリンピックでは女子サッカーも競泳もメダルを期待したいものだ。

2012/06/24 07:17 |

2012年6月14日

メンタルヘルスとは(ビジネスサプリメント509号)

先日次世代のメンタルヘルスと題した公開講座でゲスト講演し「気づきの風土作

り」の大切さを実例ばかりでお話した。従来のメンタルヘルス対策はメンバーの

危険信号を如何に早く見つけ出し、早期に解決しないといけないかと言うものばか

り、心の病気になれば早く専門医の診断を受けゆっくりと休養させ、職場復帰は焦

らずに様子を見ながらと言うものではなかっただろうか。しかしこれからは人と組織

の関係に着目して、個人の問題もさることながら、組織のあり方を見直していかな

いといけないと言う主旨の公開講座であった。そうイキイキした職場であれば悩む

個人も少ないだろうし、生産性もぐんぐん伸びることは間違いない。「我が社は

公平な組織か?」「うちの上司は公平なマネジメントをしているか?」と言うこと

がメンタルヘルスに大きな影響を与えている。日経ビジネスに高野知樹先生が職場

のモチベーションを高める「組織公平性」を4つの尺度として次のように述べておら

れた。まず1つ目は分配の公平性(報酬・人事・業務内容・などの分配が公平である

か)、2つ目は手続きの公平性(報酬・人事・業務内容などの決め方の手続きが公平

であるか)、3つ目は情報の公平性(業務に関する情報を公平に伝達できるか)、そ

して4つ目に対人関係の公平性(従業員がお互いの人格を尊重し、公平な対人関係が

結べているか)だと。「職場の公平性」が実践されていないところでメンタルヘルス

を語っていても根本的な解決にはならない。特に4つ目の対人関係の公平性がかなり

重要ではないだろうか。相手に「関心」を持つこと、即ち関わる心がない組織ほど

冷たいものはない。上司が部下の1人ひとりと公平に向かい合って、それぞれ特性が

違う方々に合わせたコミュニケーションが取れているか、部下の人格を尊重し誠実

に接しているかが問われるのではないだろうか。そこにはハラスメントの言葉も存在

しない。「おや!おかしいなぁ」では遅いのである。数々の方々との気づきヒアリン

グを通して感じることだが、メンタルヘルス問題に至るまでに多くの方々がその

「予備軍」におられることが多い、その時点で的確なナビゲートが出来ていれば問題

は大きくならないと思うことがしばしばある。これからのメンタルヘルス問題は

「1人ひとりに関心を持ちお互いがリスペクトできる人間関係作り」がより求めら

れるのではないだろうか。

2012/06/14 11:02 |

2012年6月 4日

バタバタ(ビジネスサプリメント508号)

最近企業の個人ヒアリングをしていてよく聞く言葉は「この頃バタバタして1日が

終わったら何をしていたのか?物事が進まず何だか虚しい気がします」と言うも

のだ。このような方々は与えられた仕事に熱心にお取り組みをされている場合が殆

どであるし、極めてまじめな方が多い。突っ込んで聞いてみると「今日はこれをし

よう!」と一応スケジュールは立てているが、必ずしもその通りにはいかないこと

が多いと言われる。そこで「どのようなことがスケジュールを狂わすのか?」とお

尋ねすると、突発的な仕事や締め切り間近の仕事が多く計画通りにはいかないと思

い込んでおられる様子が垣間見られ、それは仕方ないことだと半ばあきらめておら

れることが多い。そこでスティーブン・R・コヴィーの「7つの習慣」を思い出し

た。横軸に緊急性、縦軸に重要性のグリッドを作り4つの領域に分けた理論である。

人間は緊急度の高い重要性の高い第一領域(締め切りのある仕事、クレーム対応等)

を優先してしまい、緊急性はないが重要度の高い第二領域(準備や計画、人間関係

作りなど)を後回しにすると言うものである。そう第一領域に振り回されているの

だ。そこで「もう一度、仕事の再整理をして突発的な仕事が入ってきても良いよう

なスケジュール化をすれば」と申し上げるが、上手くいくことはまずない。要は

従来の仕事の進め方の延長線上でしか考えられないのである。何が今一番重要な

仕事であるのかを考え直さないと解決は難しい。また仕事を省くことも大切である、

即ち「この仕事をしなくても良いのではないか?」「今この仕事をしなければなら

ないのか?」「この仕事は誰かに任せることは出来ないのか?」などを考えないと

いけない。即ち従来の行動パターンから「新しい行動の習慣化」を考えるべきであ

る。もっと突っ込めば「この仕事の目的は何か?」とか「この仕事の重要性は?」

が希薄になってはいないだろうか。そこである人に自分の仕事を整理してもらい、

重要度や目的意識まで突っ込んで考えてもらったことがあった。最初は邪魔臭いと

言う抵抗感があったようだが「自分のため」と言うことに気づかれ、かなり突っ込

んで整理をされた。そして一緒になってその内容を分析したことがあった。ご本人

が「随分無駄な時間を過ごしていました」と言う言葉が印象的だったのを覚えて

いる。そう従来の行動パターンから重要性を重視した新しい行動パターンに気づ

かれたのである。その後お目にかかったが「バタバタしています」と言う言葉は

言われなかった。

2012/06/04 06:10 |

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