それぞれの道(ビジネスサプリメント516号)
先日、日経新聞のスポーツコラムにロンドンオリンピックについての面白い記事が
掲載されていた。コラムによると日本のスポーツ取材には「一夜明け会見」と言う
ものがあるらしい。一晩おいて整理した心情を記者会見で語ってもらうので、印象
深い2人のメダリストの言葉が紹介されていた。
1人はフェンシングの大田雄貴選手、北京の銀メダリストはロンドンの個人フルーレ
で金を目指したがその夢が砕けた、しかし団体戦では見事1秒の奇跡を起し銀メダル
を手に入れたのである。コラムでは彼の言葉から団体戦で感じた次世代への継承と
言う手応えを感じられたとある。彼は「少子化が進み、サッカー人気もあって野球
でさえ苦しんでいる、ならばフェンシングは、そこでしか食べられない味の豆腐屋
みたいな存在になれたらいい」と語ったとか。その後の身の振り方を踏まえての
発言であり、自分自身から次世代へのつなぎの言葉だったのである。そこでしか食
べられない豆腐屋の味は、ビジネスの世界でも言えることではないだろうか。
日本の社会はどんどんと高齢化しており、若い人達が少なくなってきている、今こそ
シニア世代が「技術の継承役」として、今まで培ってきたものを次世代に伝えてい
かなければならない。ビジネスの世界も個人戦から団体戦へシフトしていかないと、
世界では生き残れない時代となってきたように感じる。
2人目は女子レスリングで苦節を乗り越えた金メダリスト小原日登美選手、女子レス
リングは猛烈な練習を繰り返すらしい、小原選手は1回戦で右眼を腫らしていたが、
直前の練習が原因だったとか。彼女の戦い方を観戦していて気持ちが良かったのを
記憶している。彼女は「私は旦那が年下なので、私生活でも強気に出てしまうのです、
尻に敷いていたかも、食事も旦那任せ、これまで支えてもらった分、これからは一歩
下がってついていけたらいいなと思います」と語ったとある。ご主人もレスリング
選手で彼女のコーチを務められ、ご夫婦の金メダルだった。彼女は今大会限りの
引退を表明しているが、何だが爽やかではないか。専業主婦も兼業主婦も良いでは
ないか、それぞれに状況に応じて役割は変わってくるものだ。これからは働く女性
が大いに増えて欲しいものだが、小原選手のような生き方もまた素晴らしい。
それぞれの新しい道でまたまたメダルを獲得して欲しいと思う。
2012/08/16 09:12 | パーマリンク