人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

ブログ

2013年9月20日

気持ちが大切(ビジネスサプリメント559号)

先日の日経新聞に「その叱責、効果ある?」と言う記事が掲載されていた。
経営者や学識者でつくる日本生産性本部が国内企業に実施した調査によると、叱ることが部下の「育成につながる」と答えた課長級が89%に達したのに対し、部下である一般社員は56%が叱られると「やる気を失う」と回答したらしい。叱責の効果に対する上司と部下の差は大きく、熱血指導は必ずしも「やる気アップにはつながらないようだ」とある。企業の社員ヒアリングをしていて「叱ってくれない上司」に失望すると言う部下の声がかなりあったのに、この結果には少し驚いた。
また「褒め」についても双方の認識に差があり、「部下を褒める」と答えた課長級は80%に上ったのに対し、「上司が褒めてくれる」と答えた一般社員は51%にとどまったとある。上司が褒めたつもりでも、部下はそう受け取っていないようなのだ。「嘘の褒め言葉」と捉えているのかも知れない。以前「叱り方検定」なるブログ537号を掲載したが、叱るや褒めるは「検定」にはなじめないのではないだろうか。検定的に「叱るや褒める」をしても、上司と部下の間に必ずギャップが生まれると思うし、正しい叱り方や褒め方などを意識しすぎるから上記のような乖離が生じるのではないか。叱り方をビジネス書で学べるだろうか?やや言い過ぎだが職場のミスに怒り心頭があってこそ、互いの信頼関係が構築されるような気もする。
要は「相手に対するリスペクトマインド」があればこのような結果につながらない。この記事を見て過日ブラジルで行われた柔道世界選手権大会の井上康生男子監督の「選手を奮い立たせる言葉」が印象的だった。しかし最近のニュースに見られるような日本の柔道界の悪しき慣習が消えていないのは誠に残念でならない。その中にあって井上監督は金メダルを獲得した海老沼選手の目を見据えて「おまえは世界一にふさわしい人間だ、誰よりも努力して、ひた向きにやってきた、自信を持てばいい」励まされ、また同じく金メダルに輝いた高藤選手に対して「おれの監督最初の世界チャンピオンになってくれ、約束だぞ」と声をかけられたらしい。常に目線は選手に向いている、一緒に戦っていると言うスタンスから出た言葉であり、選手たちに自信を与えたのは間違いない。
私も以前は部下の方達に厳しい言葉を投げかけたことがあったが、その後必ずフォローしたし、また上司の方から厳しい叱責の言葉があったことはその後の自分に凄く役立ったことを思い出した。叱るや褒めるは「検定や書籍」からは学べることは少ない、部下の育成を望みサポートする気持ちが最も大切なことは言うまでもない。

2013/09/20 15:53

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