人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2014年9月 1日

指摘する勇気(ビジネスサプリメント589号)

先日電車の優先座席の前で立っていた時、優先座席に座っていた若い男性が盛んにメールをしていたのである。周りの視線も彼に集まっている。私は注意しようと思ったがタイミングを失して、はっきり指摘出来ないようになってしまった。恥かしながら「私が言ったところで何になる」「もし文句を言われて危害でも加えられたらどうしよう」なんてつまらない意識が働いたのが正直なところであった。そうすると彼の隣に座っていた中年女性が「ここは優先座席だから携帯はだめですよ!」と言われるではないか。言われた彼は「すみません」と素直に謝罪され、気まずい雰囲気は全くなかった。その時の私はストレートに指摘する勇気がなかったのである。そんな私が偉そうに言えないが、今の世の中「自分には関係ないこと」と思う風潮が広がっているような気がする。
振り返って各職場の中を見てみたら如何だろうか。上司や同僚・仲間がルール・マナーを守っていなければ、お互いに注意し合える風土になっているだろうか。「うるさいことを言う人と嫌がられはしないか」が先に立ち見て見ぬふりをしてしまうような状態は非常に危険である。ある企業であまり指摘しない管理職がおられたが、「何故注意しないのか?」と尋ねたら「嫌われたくないから」と言われたことを思い出した。ましてや部門が違えば全く関心を示さず「見ざる・言わざる・聞かざる」の職場を数多く見ている、そんなところは必ず「あいさつ」することさえ満足に出来ていない。またついうっかりで気づかずにマナー違反をしている場合も多いのではないか。公共広告に出てくるような場面はお互いに素直に注意・指摘が出来る職場でなければ強いチームワークは醸成されない。人間は「関心を持ってもらいたいものなのである」、無関心は一番辛いものだ。お互いに良い意味で関心を持ち合う職場、まじめに気楽な話が出来る職場、おかしいことは、おかしいと素直に言える職場こそ、イキイキとした風土が醸成され、お互いにチームワーク良く生産性もアップするものである。今のような混迷した時代、組織メンバーが「気づいたことをはっきりと言える勇気」を持ち、「決められたマナーやルールを守る信念」が貫かれたチーム作りが急がれるのではないだろうか。

2014/09/01 07:14 |

2014年9月15日

怒ると叱る(ビジネスサプリメント590号)

以前から「怒る」と「叱る」とは違うとよく言われてきたものだ。
「叱る」は愛情、「怒る」は感情が入ると説明されることが多く、感情的にならず、愛情を持って指摘するのが「叱る」と言われることが多い。確かにその通リだが、また少し違った考え方もないだろうか。ある本に自分のために怒る、相手のために叱ると書かれていたのを思い出した。「怒る」とは、相手が自分に悪い影響を与えたり、自分が指示したとおりに動いてくれなかったりした場合に、自分が腹をたてたことを相手にぶつける動作であるのかも知れない。
人に注意する時「今から叱る」のだから「愛情」を忘れなくしようとか、腹が立つが「感情的」にならずにおこうと思ってその場に臨むことは少ないのではないだろうか。私自身の経験で「怒られた」のだが後で「叱られた」のだと思い返すことが良くあった。最初に述べたことは基本ではあるが、お互いの信頼関係が構築されておれば、叱る時に「思い切り感情を入れ込んでもおかしくはない」と思う。手を出すのはもってのほかだが、机を叩いて大声でどなりつけることも場合によっては愛情表現かもしれない。いささか乱暴だが「アホ・ボケ」なんてパワーハラスメントになるような言葉も効果的なこともあるだろう。
しかし「相手に対するリスペクトマインド」がなくては単なる怒りの感情発散になってしまい、何の効果も出ない。また叱る時は1人で周りに人が居ない時にすると言う説も良く聞くが果たしてそうだろうか。筆者が随分昔あるミスを犯した部下に対して「辞表を出せ!」とどなったことがあった。しかもみんなの前であったが、周りには緊張感が漂っていた。問題点の重要性を全員が共有したのである。但し打たれ弱い人には禁物である、そのことで立ち上がれないことが生じる。人を見て対応しなければいけないことは言うまでもない。
叱った部下とは「絶大なる信頼関係が築かれていたのである」、その後「カッーとなってしまったが、あのミスは今後絶対にしてはならないと思い、荒い言葉や態度になってしまった、ごめん!」と事後一言添えたのである。その後彼との関係も極めて良く、彼はその失敗を2度としなかった。愛情や感情論で語るのはたやすいが、一番大事なことは「叱る」にしても「怒る」にしても相手に対して「人としての尊敬の念」がなければならないと言うことかもしれない。

2014/09/15 09:16 |

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