随分昔の名著中根千枝氏の「タテ社会の人間関係」の新書を書棚から
取り出した。もう黄ばんでいたが昭和42年版であり、価格は220円で
あるから驚きであった。
著者は「ウチ、ヨソの意識が強く、この感覚が尖鋭化してくると、
まるでウチの者以外は人間ではなくなってしまうと思われるほどの極端な
人間関係のコントラストが、同じ社会に見られるようになる。
知らない人だったら、突き飛ばして席を獲得したその同じ人が、
親しい知人―特に職場で自分より上の人―に対しては、自分がどんなに
疲れていても席を譲るといった滑稽なすがたがみられるのである」と
述べられていた。今の時代はこのようの若い人は少なくはなっただろうが、
凄い洞察力に感心し感銘を新たにした次第である。
企業の個別ヒアリングをしていて、組織の大きさに関わらず部門間連携が
誠に弱いケースに出くわす。まさに「タテ社会の人間関係ばかりで、
横串がないのである」。
世の中は金融大混乱で世界が協調して緊急の対応策をとらないといけない
時を迎えている。今まさにグローバルな時代なのだ。にもかかわらず
部門間意識が強く「我々の部門は関係ない」なんて言葉が飛び交うことは
「組織がかなり重度のメタボリックシンドローム」に侵されて証拠である。
論理より感情が優先し、好き嫌いが出すぎているのも大きな原因の一つである。
このような周りの環境がますます厳しい時代こそ、部門の壁を取っ払って
「情報を共有し風通しの良い組織」作りが求められている時はないと感じる。
2008/11/05 16:28