先日の朝日新聞に桂文珍さんの「私の視点」と言うコラムがあった。
落語家らしい極めて分かりやすい事例が述べられていたので少し
ご紹介してみたい。この信じられない世界的金融大危機のことを落語の
「花見酒」に例えて次のように述べられていた。
「リーさんという男がコモカブリの酒樽を仕入れ、花見酒の席に一杯5銭で
売りに行こうと言うことになった。1人で担げないので弟のマンさんを誘って、
後ろを担いでもらうことになった。担いでいると良い匂いがするので、
マンさんが<一杯飲みたくなった>と言い出した。リーさんは商売用なので
ダメと言ったが、マンさんは5銭あるのでと言い飲ませることになった。
上手そうに飲むのでリーさんも飲みたくなったと言い、もらった5銭をマンさんに
渡し飲んでしまった。同じ5銭をやりとりしている間にお酒がなくなっていく。
花見の席に着いてみると売る酒がなくなっていたし、お金もない」という例えであった。
いわゆる虚業であり実業ではなかったし、そのことに彼らは気づかなかったのである。
最近は「派遣切り」という嫌な言葉が氾濫している。非正規社員は契約ベースの
関係で決められた仕事をしてもらえばよい、正社員との間には質的な違いがあると
解釈されている。しかも外国人の派遣社員がリスクの波を被っているが、
最近の言葉では「人材ガラパゴス」なのである。
ここで花見酒の考え方をすると、生産調整のためには、その産業が低い賃金コスト
でないと成立しない状態だったということに気づかず実は中身が空っぽだったのでは
ないだろうか。
日本型経営の長所であった「人間尊重」「長期的視点に立った経営」を真剣に
考えなければ花見酒に終わってしまうことを肝に銘じたいものである。
2009/01/14 01:25