全国各地を周って講演していると、今の世界的金融大不況は想像以上に
厳しいものがある。先日もある都市でタクシーの運転手の方とお話しして
いると、派遣先を辞めさせられやっとこの仕事に付いたが、思ったほどは
稼げないと嘆いておられた。TV番組の「カンブリア宮殿」で日産のゴーン氏が
「派遣切り」は経営として当然と発言されていた。そうなのだろう!
しかし、日本の強みは「従業員の一体感」「身を挺して懸命に取り組む従業員」
だったのではないか?今はそれがなく、雇用不安が障害者の方や高齢者に
まで影響が及んでいる実態は見逃がせない。
ふと夏目漱石の「草枕」の有名な言葉を思い出した。
「智に働けば角が立つ、情に棹させば流される、意地を通せば窮屈だ、
とにかく人の世は住みにくい」。智に働きすぎて、ギスギスした職場からは
品質の良いものは生まれない、みんなの持っている力も100%は出さない
であろう。情に流されれば、他社との勝負に負けてしまうし生産性は上がらず
致命的な傷になりやすい、意地を通せば「面従腹背」の風土になるだろう。
今の日本企業はともかく「減産」「コストカット」しか見えてこない。
去年は新卒の求人も2倍強で完全な売り手市場、しかし今年は何と様変わり
して気の毒な状況なのだ。1年でそんなに変わるものだろうか?
将来の人員構成に大きな溝が出きることは明らではないか。
正規に働く人たちもいつかは自分たちもと思うのではないだろうか?
あまりにも安直な人員カットがまかり通っている。
経営とは偉そうなことは言えないが、「情」と「理」のバランスだ。
そう!「理」に傾き過ぎて「情」が見えない。短期的には頓服薬には
なるかも知れないが、日本的経営の強さはだんだんと無くなっていくのが怖い。
今一度全員が100%の力を出せるような方策がないものかを考えてみる時でもある。
2009/02/16 06:28