2009年の全国百貨店売上高は24年ぶりに7兆円を割り込み、売上のピークだった91年
と比較すると、3兆円以上が吹き飛んだようだ。多くの評論家の方達は、ネットへの
顧客離れ、自主販売力のなさ、場貸しに成り下がったなどとの意見がかまびすしい。
このことに対して、先日元職場の後輩が「我々の努力も知らず簡単にコメントして
いるようなぁ」と不満げに話していたが評論家の虚飾の話には説得力がない。
先日の日経ビジネスに三越伊勢丹ホールディングスの故武藤会長が昨年「お客様を
ハグしましょう」と社内向けのビデオで大きな身振りを交えて社員に語りかけられた
そうである。「ハグ」とは抱きしめること、抱きしめるぐらいお客様に密着して
ニーズを組み取らなければ、これからの百貨店は生き残れないと言われたのである。
百貨店はこれまで消費者の生活に入り込み、さまざまなニーズに応えることで支持を
得てきた。今、目先にとらわれすぎて百貨店の強みを磨くことを忘れてはいないだろ
うか。元職場で真にお客様の心を捉えた中堅販売員のことを思い出した。
その方は自分の頭の中に100名までのお客様のお好みやご性格などが入っていた。
もちろんデーターを検索すれば出てくるものなのだが、常に自分のものとして更新も
していたようであった。その販売員がある時総額1億円の商品仕入れをすることに
なった。私は「どのようの仕入れをするのか」を詳細に聞いたことがあった。
そうするとまず商品展示場に行き、A様には○○を、Bさまには□□をと、まずは売り
先を具体的に決めて仕入れると言うのである。まさにお客様に密着した仕入れを行
うと言うではないか。そして店頭に入荷されたら、即お客様にご連絡し「良いお品
を仕入れました、ご来店いただけますか」と連絡をする、お客様は即来店され
「この商品はお客様のために仕入れてまいりました、如何でしょうか」と言うと
大変感動されて殆ど完売すると自信を持って言っていたのを思い出した。
お客様との「心のハグ」が出来ているのである。厳しい状況の百貨店であるが、
ある場面ではこのような真に販売力のある方々をもっと育成し、「心のハグ」が
出来るようにしていくべきかも知れない。
2010/03/14 07:48