今なかなか職に就けない人が多い世の中である、働きたくても働けない辛さは計り
知れない。そんななか元大関の琴風関(現尾車親方)の非常に印象に残った話を思
い出した。初めての負傷休場された時のこと、左ひざじん帯断裂で4場所連続休場
に追い込まれ、番付けは前頭筆頭から幕下30枚目まで急降下、入門から番付けを駆け
上がり、前年には関脇までトントン拍子に昇進されていたのである。復帰された時は
土俵に上がる前に相当な葛藤があったそうだ。付け人を従えた場所入りから一転し、
まわしを包んだ風呂敷片手に一人ひっそりと入るのが情けなかったと述べられている。
支度部屋では周りの視線が気になり格好が悪いという思いばかりが先に立ったそうだ。
救ってくれたのはお客様で、土俵に上がるとすごい拍手と歓声の渦、そこで「番付な
んて関係ない」と吹っ切れ、相撲にも迷いがなくなりその後大関の地位にたどりつか
れたのである。尾車親方曰く「負けることよりつらいものがあることを知ったのが大
きかった、土俵に上がって勝ったり、負けたり出来るのはすごく幸せなこと」と感じ
られたのである。まさに克己心(自分との戦いに勝つ)が芽生えたのである。
挫折が人を強くするものである。どん底を見たらあとは這い上がるだけ、以前の私は
底なのにまだ底を掘っていたような気がする。今働けている人の中には、いろいろと
不満や不平や面白くないことも多いことだろう、しかし働ける「幸せ」に目を向ける
とまた違ってくるのではないだろうか。そう!働けるという土俵に上がれていること
を忘れてはならない。職に就けていない人は5つの(あ)あきらめない・あわてない・
あせらない・あなどらない・あてにしないを忘れないで欲しい。先日の新聞に掲載
されていたが、日本生産性本部が調査した今年の新入社員の意識調査で「今の会社に
一生勤めたい」との回答が6割もあるのには驚いた。苦しみは逃げるから追いかけて
くるものだ。追いかければ逃げていくと思いたい。負けよりもつらいことに気づいた
人は真の安定を手に入れるのではないだろうか。
2010/05/30 11:03