人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2010年11月29日

木鶏(ビジネスサプリメント442号)

横綱白鵬は九州場所も優勝し5連続優勝と言う輝かしい記録を残したが、

連勝記録は稀勢の里に負けて63連勝でストップし、双葉山の69連勝への道が

途絶えた。その時白鵬はうっすら苦笑いし「これが負けか、相撲の流れに隙が

あった」とつぶやいたらしい。この言葉からも心・技・体の中でも特に「心」

の重要性を感じる取組であった。白鵬の心のどこかに隙があったのだろう。

まだまだ若い横綱である、白鵬の今後の更なる活躍に大いに期待したいものだ。

昭和の大横綱双葉山は年2場所制の中にも関わらず、角界の大記録69連勝と言う

素晴らしい結果を残されたが、70戦目に出羽の海部屋の新鋭である安芸の海に

連勝をストップさせられた。その時双葉山は師と仰ぐ方に「イマダ モッケイ 

タリエズ  フタバ」と打電されたらしい。木鶏とは「荘子」に出てくる言葉

である。昔中国で闘鶏の名人がいた、鶏を前にして王が名人に次のように尋ねた、

「もう闘わせてもよいか」、名人の答は「まだ自分の力を過信しています」と。

しばらくしてまた尋ねた、すると名人は「他の鶏を見て、まだ興奮するのでダメ

です」、また尋ねた、今度は「まだ血気盛んすぎます」。そして最後に尋ねたら、

「もういいでしょう、まるで木鶏のようです」と答えたと言うことらしい。これが

木鶏の所以である、鍛えられた闘鶏は、木掘りの鶏のように微動だにしないと言う。

まだ木鶏の域にたどりついていない、是が非でも到達したい、そう念じながら

相撲道に精進し続けた双葉山の命のほとばしりを感じる。本物の謙虚さを持つ人で

ないと出てこない言葉である。

今の世の中は本当に暗いニュースばかりであるが、それを嘆いていても何ら前には

進まない、「木鶏」は肝に銘じさせられる言葉ではないか。この先いろいろなこと

が起きるだろう、何が隠れているか、何が待ち受けているかは誰も分からない。

なかなか出来ないことではあるが、少々のことに身じろぎしない自分でありたいし、

周り左右されない自分の力をつけて、双葉山の言う木鶏には遠く及ばないが、

泰然自若たるその精神は学びたいものだ。

2010/11/29 08:30

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