先日の朝日新聞に「世にはばかる 異才・異彩」と題した記事が掲載されていた。
将棋界の糸谷哲郎五段は20代棋士の中でも、かなり個性派らしい。
ニッネームはプロデビュー戦で対局相手が敗戦後に漏らした「強い!・・怪物だ」
が由来で「怪物君」と言われ、優等生の棋士が増えていると言われる中、規格外
の才能や言動でも注目されている。礼儀作法を重んじる将棋界だけに、デビュー
直後はその対局態度が物議を醸し出した。記事によると対局相手を睨む癖に
「下からのぞきこまれるように、睨みつけられた」とぼやいた方もおられた
そうだ。ご本人は「もともと目つきが悪くて、盤上を見る延長でつい相手と目線
が合うのかもしれない」とのこと。指し終えた将棋を対局者が振り返る感想戦
での直言癖も強烈な印象を与え、相手が誰であってもお構いなしに「そんな手は
意味がないです」とダメだしをされるらしい。将棋界の大御所の気分を害した
こともあるとのことだが、ご本人は「自分の考えを率直に言わない方が相手に
対して失礼」とお考えだったようだ。優等生的な棋士が多い中、「言動がはっき
りして面白い」との評価もあるそうだが、ご本人は気をつけるようにされたとか。
羽生名人は「睨まれたかどうかはよく覚えていないが、彼のような独自路線と
いうか個性は棋士には絶対に必要」と述べられている。
この内容を読んで何時も私がセミナーでお話している「甘言」と「諫言」を思い
出した。「甘言」は相手の気にいるようなおだて言葉で相手を気持ちよくさせ
波風を立てないようにすること、一方「諫言」は相手にとって言いにくいこと
でもはっきりと言い、主に目上の方に対してものを言う時に使われる。上向き
指向の強い組織では「甘言」が多く、世の常としてそのような組織は衰退して
いくものだ。ある組織で聞いた話であるが、一言自分の意見を上司に具申したら、
その何倍もの勢いで反論があったので、もう言われたことしかしないと言う。
このような組織が多いのが現実であるが、お互いの信頼関係を築きながら何でも
率直に言える風土づくりが、この混迷の時代に求められているのではないだろうか。
2011/01/24 19:57