人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

ブログ

2011年3月23日

あるヒアリング(ビジネスサプリメント456号)

以前にご支援した企業で入社2年目の男性社員とヒアリングした時のことである。

最近ミスが多く何となく元気がない様子と上司からは伺っていた。私と彼とは

2回目のヒアリング、向かい合わずに真横に座って緊張をほぐしながら話を始めた。

確かに以前より声は小さいし暗い感じがする。私がホンネでざっくばらんに話し

かけると意外に以前より能弁ではないか。彼は今の仕事に追い回され毎日が大変

だとのこと、与えられた仕事のやり方も変わったようである。話しながら感じたが、

メンタルヘルスの問題までは心配なさそうだし、辞めるということも口にはしない。

ともかくスピードが遅く残業になる、本人は「この仕事は向いていないのでは?」

と言う。1年ぐらいで向き不向きは分からないがしばらくじっくりと聴いた。直属の

上司からは今の仕事を整理して、優先順位をつけながら報告・連絡・相談をする

ように言われているらしい。しかし毎日の仕事に変化がなく変われない自分がある

と言う。そして「私は人から言われたことを素直に聞けない性格なのです」と言う

ではないか。正直びっくりしたが、ここで否定してはならない。「そうなのか!よく

そのことを素直に言ってくれたね」と話しかけると笑顔が出て来た。そして「こんな

に自分の気持ちをはっきりと言ったことは初めて」とのこと。私は「あなたの気持ち

や信念は決して否定はしない、しかし組織は大勢の人達がいるから、そのようにいか

ない時が多いものだ、そのあたりをあせらずに考えてみようよ!」と申し上げた。

彼は「確かに他の人からは変に思われることがありますね、指摘されたことが完全

には出来ないかも知れないが、一度やってみます」と私に誓ってくれた。

そしてまた困ったら話し合おうよと言うと「是非お願いします」と明るい顔で答えて

くれた。その後彼の様子を上司に確認すると、「何だがすっきりした様子で、イキイ

キと仕事をしてくれています」と言う答えが返ってきたのを覚えている。おそらく自

分のスタンスにやや気づき始めたのだろう。今は中堅社員として活躍しているらしい。

2011/03/23 10:09

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