ある企業の管理者の方のお話である。何時も笑顔がさわやか、人あたりも良く感じ
の良い人がおられた。唯一の欠点は「仕事を部下に任せることが出来ず自分でやっ
てしまう」ことだった。上司の方に伺うと「個人ヒアリングで刺激を受けたり」
「部下育成の話を聞いたり」すると、即翌日から実践されると言う。普通いくら良
い話でも現場に戻ると「忙しいから」と言う大義名分で殆ど実践されないケースが
多いものであるが、その方は実践に移されるらしいが暫くすると止めてしまい継続
されないそうだ。そのことを上司の方からお伺いしていたから、再度ご本人にずば
り「本当に育てる気持ちはあるのですか?」とやや厳しく質問をし「何故続かない
のか?」を分析しようとした。彼は「良いことだとイメージはされる」が、あきらめ
が早いようだ。ご本人曰くしばらくはやってみるのだが「任せるとスピードが遅く
生産性が上がらない、そしてイライラする」従って自分でやった方が早いのでつい
ついやってしまうと言われる。そこで「単純に仕事を任せていないか?任せる時は
その方の特性を良く見極めて、やり方のポイントや、要領を丁寧に教えて、途中で
チェックしているのか」を尋ねてみた。そうするとそんな時間はないので、ついつ
い「これをお願い」と言って任せているとのこと。それでは自分自身の仕事も軽く
ならないし、肝心の部下は育たないではないか。そこで彼と次のような約束をした。
「時間がかかっても誰に任せるのか、何時までに出来るようになるかを決めている
のか、その目的は何か、やり方のポイントを丁寧に教えてからやらせる、途中で必
ずフォローをする」と言うことを十分に話し合った。そして毎週私からメールで問
い合わせをする、その時の状況を教えてくれとまで約束をしたのである。その後し
ばらくメール攻勢を続けたが、思いのほか早く「部下の方が素早く出来るように
なった」とのメールが戻ってきた。おそらく彼はこの成功体験から学んだことを今後
の仕事に活かしてくれることだろう。今は管理職として凄く活躍しているらしい。
2011/10/30 18:08