日経新聞の春秋にスポーツ選手の「応援よろしくお願いします」と言う常套句に
ついての面白いコラムが掲載されていた。観戦する側に何か響くものがあれば頼
まれなくても応援するものだ。その中でも水泳の北島康介選手の言動は誠に素晴
らしいものがある。29歳の彼は最近100メートル平泳ぎで日本新記録を出し4大会
連続オリンピック出場と言う快挙を成し遂げた。21歳のアテネ五輪での金メダル
の時は「チョー気持ちいい」、25歳の北京五輪の金メダルの時は「何も言えねえ」、
そして今回の日本新記録の時は「自分でもさすがと思う」と言った。なんて爽やか
な自信に満ちた言葉だろうか。今回彼は29歳の新境地のレース配分を考えたようで
ある。2011年の世界水泳上海の時、ライバルのノルウェーのダーレ・オーエンに
惨敗し「力すら出させてもらえなかった」と素直に認め、ズタズタにされた自分
を再度見つめなおし、今までのレース運びを変える努力をしたようだ。要は惑わさ
れない泳ぎを確立したからこそ「自分でもさすが!」と言う言葉が出たのであろう。
伸び盛りの若手を振り切った姿に興奮した身には、その興奮が心地よく腑にしみて
いく効果があったと掲載されていた。応援を求める以前に、自分が出来る限りの
努力をした姿は美しい。北島選手には年齢はあまり関係なさそうだ。サムエル・
ウルマンの「年を重ねただけで人は老いない、夢や希望や情熱を失うと老いが始
まる」を実践されているのではないだろうか。そう言えば同じ水泳の平泳ぎで
1992年バルセロナ五輪金メダルを取った岩崎恭子選手を思い出す。その時に彼女
は「今まで生きてきた人生の中で一番幸せです」とコメントした。なんて爽やか
な自然の言葉なのか。そう常套句を言っているレベルではダメなのである。
振り返れば自分自身もこのようなアスリートの言葉が自然に言えるのかと言うと
まだまだである。他責にせず、自分が懸命な努力をしたのかどうかが問われる。
先日大リーグ初登板で5失点だったダルビッシュ投手は味方の大量援護で白星が転
がり込んで来たが、観客のスタンディングオベーションに対して素直には応えな
かった。彼から3安打したイチロー選手が「この内容では、と言うプライドが見え
た、あそこで帽子を取っていたら、大したことないと思ったかも」の言葉が重い。
2012/04/20 20:40