人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

ブログ

2012年4月20日

常套句(ビジネスサプリメント502号)

日経新聞の春秋にスポーツ選手の「応援よろしくお願いします」と言う常套句に

ついての面白いコラムが掲載されていた。観戦する側に何か響くものがあれば頼

まれなくても応援するものだ。その中でも水泳の北島康介選手の言動は誠に素晴

らしいものがある。29歳の彼は最近100メートル平泳ぎで日本新記録を出し4大会

連続オリンピック出場と言う快挙を成し遂げた。21歳のアテネ五輪での金メダル

の時は「チョー気持ちいい」、25歳の北京五輪の金メダルの時は「何も言えねえ」、

そして今回の日本新記録の時は「自分でもさすがと思う」と言った。なんて爽やか

な自信に満ちた言葉だろうか。今回彼は29歳の新境地のレース配分を考えたようで

ある。2011年の世界水泳上海の時、ライバルのノルウェーのダーレ・オーエンに

惨敗し「力すら出させてもらえなかった」と素直に認め、ズタズタにされた自分

を再度見つめなおし、今までのレース運びを変える努力をしたようだ。要は惑わさ

れない泳ぎを確立したからこそ「自分でもさすが!」と言う言葉が出たのであろう。

伸び盛りの若手を振り切った姿に興奮した身には、その興奮が心地よく腑にしみて

いく効果があったと掲載されていた。応援を求める以前に、自分が出来る限りの

努力をした姿は美しい。北島選手には年齢はあまり関係なさそうだ。サムエル・

ウルマンの「年を重ねただけで人は老いない、夢や希望や情熱を失うと老いが始

まる」を実践されているのではないだろうか。そう言えば同じ水泳の平泳ぎで

1992年バルセロナ五輪金メダルを取った岩崎恭子選手を思い出す。その時に彼女

は「今まで生きてきた人生の中で一番幸せです」とコメントした。なんて爽やか

な自然の言葉なのか。そう常套句を言っているレベルではダメなのである。

振り返れば自分自身もこのようなアスリートの言葉が自然に言えるのかと言うと

まだまだである。他責にせず、自分が懸命な努力をしたのかどうかが問われる。

先日大リーグ初登板で5失点だったダルビッシュ投手は味方の大量援護で白星が転

がり込んで来たが、観客のスタンディングオベーションに対して素直には応えな

かった。彼から3安打したイチロー選手が「この内容では、と言うプライドが見え

た、あそこで帽子を取っていたら、大したことないと思ったかも」の言葉が重い。

2012/04/20 20:40

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