内田樹さんが朝日新聞のコラムで「仕事力」と言うテーマで語っておられた。今の
人達は「最も少ない努力と引き換えに、最も高い報酬を提供してくれる職種、それ
を適職と呼びます」とあった。これは消費者マインドそのものである。賢い消費者
とは安くて価値ある商品を手に入れる、即ち価格<価値があればお買い得なので
あるが、職種にこの考えを取り入れると、とんでもない間違いを起こすことになる
だろう。宮大工の西岡棟梁が残された言葉で「南側斜面の檜は南側に、北側斜面の
檜は北側に使えば、木材の本来持つ自然な特性を最大限活かし1000年はもつ」と
言う言葉を思い出した。まさに「適材適所」そのものである。しかし適職は難しい、
今の時代必ずしも高学歴イコール高収入ではないし、世の中そんなに甘いものでは
ない。私も人生今までいろいろな経験を積んで来たが仕事で手を抜いたことは一度
もないと自負できる。そのため全力投球するから時々肩を壊す時があるが、無駄な
ことで損をすることはないし、また何かしら気づくことも多いものだ。失敗のない
人生なんて誠につまらないものではないか。失敗は大いに勉強であり、その原因を
クリアしてこそ自分の血となり肉となることは確かである。少ない努力ばかりでは
必ず将来破綻をきたすこと間違いない。内田氏が「ミニマムを至上として、若い人
は労働市場に来る」とあるが自分自身の経験からも誠に怖いことだと感じる。また
職場で手が空いた時に上司に「何をやっていけば良いのですか?」なんて質問が
あなたの職場ではないだろうか。自分で考えることをしない癖がついていなければ、
良い成果など残せないことは自明の理である。また資格試験等のスクーリングで
「この問題は出ますか?」と尋ねるケースも多いだろうが、山を張っては真の実力
は付かない。要領で世の中渡れるほど甘くはない。古い言葉だが「若い時の苦労は
買ってでもせよ」と言うものを全面肯定はしないが、今の世の中で一番欠けている
ような気がしてならない。必死で努力しても報われない時もあるだろうが、その
プロセスが将来に活きてくると信じたい、「無駄の効用」と言う言葉もあったが、
我々の仕事を消費者マインドで捉えたくはないとつくづく思ったのである。
2012/05/06 08:04