ある組織でリーダーの方が部下の指導方法で悩んでおられた。その部下の方
はまじめでおとなしい方なのだがご自分の考え方を自ら述べられることが少ない。
従ってリーダーは彼が仕事の出来ない方ではないが、何を考えているのかなかなか
つかみにくかったらしい。またリーダーの目線で見るとイライラすることも多く、
ついつい責め口調で問い詰める場面が多かったそうだ。強く指摘すると「物言わぬ
人」になり議論がかみ合わなかったのである。そこで私にどうすれば良いのかと
質問された。私はお2人共良く存じ上げていたので、リーダーに「あなたは理詰め
で隙なく指摘するが、彼の性格ではヤドカリ現象=触れると貝の中に入ってしまう、
どうだろう暖かい空気を吹き付けると中から出てくるのではないだろうか?」と、
また「任せることは育てること、彼は出来ないわけではないから、思い切り任せて
プロセスの報告のみ怠らずに、結果責任はリーダーにあると言ってみてはどうだ
ろうか?」とも申し上げた。言わせる雰囲気は大切で、その答えから最も良い解決
法が見つかるものだし、思い切って任せることは「自立」する機会でもあり、例え
失敗してもその失敗から必ず学べるものではないだろうかと思ったのである。
リーダーは随分悩まれたようであるが、自分自身には言わせる雰囲気作りは難しく、
彼も頑なので「思い切って任せ、結果責任はリーダーが持つと宣言された」との
こと、そして必ず途中経過は報告することを義務付けられた。
先日リーダーとその部下の方とお目にかかったがお2人共凄く笑顔があった。個別
にヒアリングをしたのであるが、リーダーは「私は言わせる雰囲気作りはなかなか
出来ないので、ある案件を思い切って任せました」と言われた、その結果その案件
で外部の相手先から、思わない良い反応が出て、彼もヤル気が出たとの報告が
あった。続いて部下の方とヒアリングをしたが、何時もより明るい、そして「ある
案件でリーダーから任せられて、自分なりにやってみたら、思わぬ良い反応が返っ
てきた、何だが自信が出てきた」と言われるではないか。また困ったらリーダーに
相談できるし、自分のこれからの方向性が見えてきたと断言された。そう!指摘の
繰り返しばかりしても、あまり効果が出てこないことが多い、このリーダーは
「任せることが育てること」を実践されたのである。
2012/05/13 10:24