先日日経新聞に次のような面白いコラムが掲載されていた。「経営不振が続くある
会社で、こんな話を聞いた。頑張れば会社は立ち直るのか、それともこのまま落ち
ていくのか。振り返れば、社員が会社を<うち>と呼ばなくなり、<この会社>と
言い始めた時が、転落の始まりだったのではないか。人々の顔色は少しずつ変わっ
ていたが、経営者は分岐点のサインに気づかなかった」とあった。そう!この言葉
は真実ではないだろうか、まさに私自身もこの経験をして痛い目にあった。企業の
個人ヒアリングをしていて「この会社はダメですよ!」と言う発言が多いところは
パフォーマンスもモチベーションも低いと感じる。
あるご支援していた中小企業では社長自らが「これからは情報を開示し全員が仲間
として会社を経営する<全員参加型経営>でなくては生き残れない」と社員に訴え
られたことがあった。この会社は地道に皆さんが与えられた役割を「やらされ感」
なく取り組んでおられて、ともかく明るい風土なのである。各人の「当事者意識」
が醸成されていた。そうすると先日の日経新聞にあるホテルの女性執行役員の方の
ご活躍されている記事があった。このホテルは経営破綻したが、新たな引き継ぎ先
に譲渡されたらしい。この方が着任されて従業員に接すると、礼儀正しくサービス
のレベルは極めて高かったようであるが「自分のホテル」と言う意識が足りないと
感じられたらしい、親しくなられた従業員から「この先どうなるのか凄く不安」と
打ち明けられた。ホテルは収益物件として売買の標的になるし、相次ぐ経営権の
譲渡が従業員に不安を与えていたのだ。そこでまずは「現場が安心して働ける環境
を整えることが大切」と感じられ日夜現場の疑問や不安を解いておられる姿が掲載
されていた。きっと従業員が「我々のホテル」と言う当事者意識が芽生えてくるも
のと確信する。
以前中根千枝さんが「タテ社会の人間関係」でも述べられていたが、タテ社会の
組織はじり貧になると、行くところまで行かないと、変化を起こせない弱さがある
のではないだろうか。私自身が最も感じるのは「同じ組織の中にどっぷり浸かって
しまい<ゆでガエル>になり、全て他責にしてしまう怖さ」を凄く感じることが多
い。働く人達が組織の中で「自立マインド」を持ちイキイキと動ける風土作りが今
ほど求められる時はない。
2012/07/29 13:04