東京電力原子力発電所事故調査委員会の黒川清委員長が語られた内容が日経ビジネ
スに掲載されていた。黒川氏は委員長就任前に太平洋戦争の生存者の証言で振り返
るテレビ番組をご覧になったそうだ。その頃には福島第1原発に関わった人々の証言
もテレビで報道されていたが、この2つの証言は驚くほど似ていたと述べられていた。
つまり多くの責任ある立場の人間が、いくつもの機会に「分かっていたけど黙って
いた、止められませんでした」と言うことを言っている。それを見て、何故日本人
は過去の失敗に学ばないのか、責任ある立場の人達が変われないのかを強く感じら
れたとある。全く同感である、私の経験からも失敗からこそ学ぶことが多いが、多
くの場合逃げてしまう。「利他」より「利己」を大切にすることが多い。
以前ある企業の幹部クラスの方々が「うちのトップにはものが言いにくい、おかし
いと思っていてもおかしいと言えない」風土があると言うではないか。もちろん
幹部クラス以下の方々の思いも同じであった。しかしトップの方は社員の諫言は聞
いているし、甘言は大嫌いとお話されている。トップと社員との溝は随分深いもの
があったが、幸いトップの方は私の話を良く聞いていただけたので時間をかけて
現場の実態を詳しくお伝えした。かなりの時間が経ったように思ったが「良く分か
りました」と言われ、その後は部下の意見を聞かれるようになり、非常に風通しの
良い職場に生まれ変わったことがあったのを思い出した。人が変われないのは「今
のままが良いではないか」「他の人も変わっていないではないか」「何故自分が
リスクを犯してまでする必要があるのか」などと思ってしまうからではないだろ
うか。同じ環境下にいると「おかしい」と思っていたことでも「これが当たり前」
と錯覚をしてしまう危険性がある。実は私も社員として、トップとして同じような
経験をしたが、組織から離れると「おかしい」ということに気づくのである。だか
ら第三者として私が組織に入ると「おかしいよ!」とお伝えすることが出来るのだ
と感じる。多くの組織の人達は「それを当然」と思い皆が共有してしまうものだ。
「思い込み=マインドセット」は組織を破綻させる大きな原因である。要は各人が
「利己」から「利他」のマインドを持てる組織こそ生き残るのではないだろうか。
2012/09/01 09:09