人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

ブログ

2012年10月 1日

無縁社員(ビジネスサプリメント521号)

あるご支援した企業の話である、まず最初に社員全員に「気づき」の大切さを事例

を基に具体的にお話をさせていただいた。話だけでは「なるほど!」で終わってし

まう。そこで中堅クラスの方々5人を選抜して、その話から自分の身の回りで感じる

ことや、気づいたことを数回に亘って個別ヒアリングをさせていただいたのである。

最初はなかなかスムーズに話は進まないが、3回目あたりから、かなりの手応えを

感じるようになった。全員が言うには「みんな自分の仕事は熱心だが、講義を聞い

ても自分ごととして捉えず他人事、お互いの話し合いもない」と言うではないか。

そこで5人のメンバー同士がお互いにあまり話し合ったことがないので、自発的に話

し合い全員に「自分はあの話から具体的に何をするのか」と言うアンケートを発信

されたらしい。5人がそれぞれ役割を決めてアンケートを全員から回収、そして数

週間かけて朝礼で各人が自分の行動目標を発表する、期間を定めてその結果報告会

まで企画されたことがあった。私が提案したのではなく、5人のメンバーが気づき、

トップに報告されて動かれたようだ。個別ヒアリングで各人から途中経過もお伺い

してフォローしていったが、かなりの成果が残されたことを思い出した。5人のメ

ンバー曰く「今まで自分に関係ないことは殆どコミュニケーションせず、一体感は

全くなかったが、お互いに問題点を共有することが大切だと分かってきた」と言わ

れるではないか。そう!「やらされ感」は全くなく、自分たちでやろう、そして

「達成感」を感じながらイキイキ仕事をしていこうという風土に変わっていったの

である。その後もマンネリにならずに継続されているようだ。

そのようなことを思い出していたら、日経新聞に「無縁社員、職場で広がる」と題

して「今日も誰とも話さなかった」と言う特集記事が掲載されていた。不況を背景

に職場には緊張感が高まり、個々の成果が厳しく求められ連帯感は薄れてドライな

人間関係が生まれつつある。机を並べていても同僚とのつながりをいまひとつ実感

できず、メールでのやりとりですまされることはないだろうか。驚いたのは「お疲

れ様です」夕闇せまる勤務先の通用口で、退職時に警備員から声をかけられたのが、

その日会社で初めて人と交わした会話の人がいたと言う部分だった。冒頭にご紹介

したような組織にならないとこれからの厳しい時代に「組織力」は出せないと痛切

に感じる。

2012/10/01 09:23

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