お手伝いしていた企業で変身されたリーダーのことを思い出した。彼はすごくまじ
めで仕事も良く出来る中堅どころでまさに会社の重要な戦力の方である。仕事は全
員の模範、ミスは殆どなく、周りからの信頼感も厚い方だった。ところが悲しいこ
とに周りの部下や後輩にはなかなか注意や指摘を出来されないのである。言い方を
変えれば周りは彼に甘えてしまう危険性があった。私が何回指摘しても頑固で聞く
耳を持たれなかった。彼にホンネで理由を聞くと「言って相手に嫌がられるのは嫌
だし、傷付けばかわいそう、よってその人が気づくまでは黙っている」と言われる。
ある時私が会社内のトイレに入ろうとした時、後ろ向きにスリッパを揃えている彼
の姿を発見した。見えないところでは当たり前のことを当たり前にされる素晴らし
い方なのだ。その後会社でリーダー研修の機会があった、少人数で和気あいあい、
堅苦しいものではなかった。1人ずつ前に出てスピーチ訓練をした時である「最初
にやりたい人?」と申し上げたが、誰も手を上げない、そうすると彼の横に座って
いた仲間の1人が彼に無理やり手を上げさせたのである。彼は人前で話すのは凄く
苦手、困った顔をしていたが、前に出てきて堂々と自分の意見を何と3分間話されて
全員の拍手喝采であった。彼も満面の笑顔である、その後も自ら手を上げられまさ
に研修のリーダー的存在になられたのである。周りの方にお伺いすると、元々素晴
らしい方だが、以前に何か指摘したことで嫌な思いをされたことがあったらしい。
そのことをこの研修をきっかけに乗り越えられたのだろう。研修後、気になっていた
ので、その方の職場を覗くと「お疲れ様です」と笑顔で元気に私にあいさつされる
ではないか。後輩達に聞くとイキイキとお仕事をされているし、サブリーダーの方
には「チームをまとめるのは難しいが、メンバー1人1人に関心を持つことから始ま
る、特に朝はメンバーの顔色を見ながら体調面まで気配りして、声をかけてあげる
ことが大切」と言われたとか。そう!元々持っておられたお力が仕事の進め方だけ
でなく、部下のマネジメント面までお出来になる方であったのだ。研修と言うきっ
かけでご自身が気づかれたのである。最近再び職場を訪れたが、私に素晴らしい
笑顔であいさつされたのが印象的だった。
2012/11/10 08:56