昔ある企業のお手伝いをした時のことである。非常に優秀で大きな成果を出してい
る中堅の男子社員がおられた。彼とお話すると良く勉強しているなぁと思うことが
しばしばあった。OFFタイムは自分で時間を作りボランティアもされている。誠
に言うことなしの人材であった。しかしお話をしているとどうも「上目線的」な言
葉遣いを感じるし、メンバーや上司に対しての物足りなさを訴えられるのである。
そこで上司やメンバーの個別ヒアリングの時に彼のことをそれとなく尋ねてみた。
上司は彼が組織を飛び越えて行動してしまい、自分が知らない時がある、しかし成果
を出すのであまり指摘はしていない、その部門の経験は彼のほうが長いのでそっと
見ているとのことだった。それは上司の責任回避であり、成果は組織のものである
との認識を植えつけていかないといけないと諭した。どのような組織にも「結果」
さえ出せば何をしても構わないと言う風土のところも多いが、組織はチームプレー
も必要なことは言うまでもない。またメンバーに聞くと若手は「凄い人です」、
勉強になりますと言う人もいたが「言い方がきつい」とのこと。また他のメンバー
は「チームのメンバーが何時も彼の機嫌を伺っている状態」であり楽しく仕事が出
来ない、彼のサポートをしているスタッフは、感情的に叱り飛ばすので頭が真っ白
になると言うではないか。どうやら職場では良く出来る人材だが、彼は腫れ物に触
るような存在なのだ。そこで彼と改めてヒアリングをしたのである、このようなこ
とを一方的に言うと彼との間に大きなカベが出来るし、周りの言うことが全て正し
い訳ではない。まず「あなたは本当に良く頑張っている」しかし「この仕事は自分
しか出来ないと思い込んでいないだろうか?」「あなたと上司のコミュニケーショ
ンは出来ているか?」「イライラする時は多いと思うが、感情が先に出てはいない
だろうか?」「自分目線でものごとを見るとイライラすると思うが、メンバーの方
達のそれぞれの目線に合わせた接し方を今後考えていこう、そうするとあなたの能
力の素晴らしさが益々出てくるし、これから管理者の立場に立った時に全員を巻き
込むマネジメントが出来る」とお話したのである。すぐには納得されない様子だっ
たが、終わりには言われることが良く分かりますとの発言、その後の彼の活躍は誠
に素晴らしいものがあったようだ。
2012/11/30 09:53