人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

ブログ

2012年12月 9日

原因は私(ビジネスサプリメント528号)

以前にお手伝いした企業で忘れられないことがあった。その企業は社員に対する

トップの熱い思いは人一倍強いものがあり、トップ曰く「指示されて動く社員から、

自分で考えて動ける人材作りがしたい」との強いご希望に沿って、私がお手伝い

することになったのである。トップはいわゆる体育会系、非常にものごとをはっ

きり言われるし、パワー溢れる方であり、何とかしたいと言う思いは凄かった。

そこでリーダーを中心に個別ヒアリングを重ねていった。1回目では分からないこ

とが多いが、数回しているとメンバーのホンネが見えてくる。ある方は「幹部ク

ラスはトップに萎縮しているので、何も言わない」、またある方は「トップにも

のを言っても必ず言い返されるので黙ってしまう」、またある方は「言われたこ

とをミスなくすれば良いと言う風土になっている」と言われるではないか。いさ

さか驚いたことは言うまでもないが、各人には「思い込み」ほど怖いものはない

ので決め付けずに、周りを巻き込んで提案していこうと申し上げたのだが。そして

幹部クラスとも打ち解けてお話させていただき、現場の思いをお話して、幹部ク

ラスがしっかりしないと組織は崩壊するとお伝えし、かなりご理解いただいた様子

であった。残るはトップにどのように気づいていただけるかにかかっていた。その

ためには社員全員からの声を聴かないといけないので、出てきた意見の全員検証

も行った。いよいよトップにお話する時が来た。まずは「社員の方々は考える力

は持っておられる、しかしあなたの熱い思いが末端にまで伝わっていない、感じ

られないかもしれないが、あなたの言動に萎縮している人が多い、決め付けてお

話されていないか、自分の目線で動かそうとされていないか、折角の思いが伝わ

らずもったいないではないか」とソフトに申し上げたのである。トップは眉間に

しわがより、不機嫌そのもの、そこで「そのお顔が怖い」と申し上げた。物分り

が良い方だった、しばらくして「原因は私にあるのですね」と言われるではない

か、そしてまずは幹部クラスと打ち解けて話し合ってみると言われたのである。

そう!同じ社内での諫言は難しいが、私の立場では出来る。その後私の手から離

れたが、メンバーからはものが言い易い風土になったとの知らせをいただいたこ

とを思い出した。

2012/12/09 07:06

お問い合わせ