人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2013年7月 7日

ハロー効果(ビジネスサプリメント550号)

人事考課をする時の陥りやすい現象として「ハロー効果」「中心化傾向」「寛大化傾向」などがあるが、最も多くみられるのは「ハロー効果」であろう。これは心理的効果の1つであり、ある対象を評価する時に顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象のことを言う。一般的にはポジティブな方向への歪みを指すことが多いが、ネガティブな方向へのハロー効果もかなりみられる。例えばポジティブな面では「彼は素晴らしい提案書を書くので、きっと仕事の遂行力も素晴らしい」と思ってしまう、ネガティブな面では「うっかりミスで失注したことがあり、彼は仕事が出来ない」と決めつけてしまう。
以前にある組織で数回個人別ヒアリングをした方がおられたが、どうも彼の評価が芳しくないらしい、しかし良くお話をしていると懸命に努力をされている様子がうかがえ、それなりに成果も出されている。おかしいなと思いつつ、彼に事情を聞いたら、ある宴席でお酒を飲みすぎ自分を見失ったことがあり、上司や周りからひんしゅくを買ったことがあったらしい。もちろん彼に非があったのだが、その後はお酒を飲まず名誉を挽回しているとのこと、しかしまだ過去を引きずった評価になっていたようである。人を評価する時は客観的にそのプロセスと結果を見つめなければならないことは言うまでもない。
要は悪い意味での「思い込み」の怖さである。私は数多くの「思い込み」「決めつけ」「好き嫌い」で不遇になった人とお話をしてきたが、この方達はネガティブな面で損をされているケースなのだ。
要するに認知バイアス(認知心理学や社会心理学の理論であり、ある対象を評価する際に、自分の利害や希望に沿った方向に考えが歪められたり、対象の目立ちやすい特徴に引きずられて、ほかの特徴についての評価が歪められる現象を指す、直感や先入観<思い込み>、恐怖心や願望が論理的な思考を妨げる)が働くのである。知人でIT監査をしておられる方から「職業的懐疑心」と言う言葉を教えてもらった。これは些細な誤謬・誤解の事象が見られたときに、大きな改善を要する事象の前触れであることがあり、それらを発見するためには、常にヒアリングや実地調査の際に自分の目や耳を研ぎ澄ましている必要があり、先入観にとらわれない柔軟な心も必要、監査の全工程を通してこの気持ちを保持することで、疑わしい状況を見落とすなどの可能性を軽減させることが出来るとある。私の個人別ヒアリングでも特に心したいものだ。

2013/07/07 06:43 |

2013年7月17日

女性の就労促進(ビジネスサプリメント551号)

過日厚生労働省が発表した賃金構造基本統計調査によると、2012年のフルタイムで働く女性の平均賃金は前年比0.5%増の月額23万3100円と2年連続で過去最高を更新したらしい。男女間の賃金格差も過去最少に縮まったとのこと。賃金の伸び率では女性が男性を上回っており、アベノミクスの成長戦略でも言われているが女性の活用がデフレ脱却のカギを握りそうな情勢になってきた。男女合わせた平均賃金は0.3%増と3年連続で増加しているが、06~09年は団塊の世代の退職に加え、08年秋のリーマン・ショック後の定期昇給の凍結などで4年続けて減っていた。最近はデフレ脱却を目指し賃金増が叫ばれており、一部の企業ではその動きも出てきた。新聞記事には働く女性の数そのものも増えており、12年の女性の雇用者は前年よりも6万人多い2375万人と過去最高を記録したと掲載されていた。しかし直近のOECD加盟34ヶ国の「雇用アウトルック2013」では日本の25~54歳の女性の平均就業率は69%にとどまり、加盟国中24位だったとある。まだまだ女性の就業を支援していくことが大切。
女性の就労を増やすには保育所の整備など女性が働きやすい環境をつくる必要性が生じてくる。最近のニュースでは幼児教育の無償化について検討する政府・与党の連絡協議会が近く設置されることになり、衆議院で政権公約した3歳から5歳児の幼稚園児や保育所などを無償化する動きもある。しかし国の基準を満たす認可保育所に入れない待機児童は全国で約2万5千人に上り、その8割超は0~2歳児と言う現実もある。幼児教育の無償化も大切ではあるが、保育所整備も急務であるように感じる。
そういえばある団体で勤務時間が15分後ろにずれたために、保育所の迎えが困難になり悩んでいる女性の方がおられた。またあるところで女性従業員募集をしたところ、優秀な方がおられたがシングルマザーのため子供さんが急病の時に仕事に支障をきたすと言うことで採用しなかったとの残念なお話も聞いた。日本では働く女性の6割が出産を機に退職する状況が20年ほとんど変わっていないらしい。保育所が十分整備されておれば、出産後も働き続ける女性は確実に増えるのではないだろうか。人口の減るなかで、労働力の減少を抑え、経済の活力を損なわないようにするためにも、高齢者のさらなる活用と共に女性の就労促進につながる子育て支援策が求められるのは言うまでもない。
先日ある企業の定年前研修で、59歳の女性が継続雇用を希望され、職場は配置転換になるが、自分の新たな道として捉えてスタートしたいと言う力強いメッセージをいただいたのが印象的だった。

2013/07/17 09:21 |

2013年7月27日

気楽でまじめな研修会(ビジネスサプリメント552号)

ご支援している企業で初めて中堅社員の終日研修を行った時のことである。
管理職研修や新入社員研修はすでに実施済であったが、今後を担うであろう若手中堅社員の研修会は初めてであった。最初は彼らもかなり緊張気味で固かった。トップの経営理念や彼らに期待することを分かり易く述べてもらったが、みんな真剣にメモをとられている。私は「自立マインドの大切さと気づき」について、分かり易い事例を基にお話しした。もちろんノウファイ(なぜするのか)に重点を置いた研修であり、講義も一方的ではなく双方向で進めていくうちに彼らも雰囲気に慣れてきた。社会人としてのマナー研修も入れて実技指導まで組み込んだ、結構思い違いのマナーも多かったようである。やはり聞くだけではなく、体を動かすと楽しくなるようだ。グループで話し合っていただく時間もかなり割いたが、グループリーダーはお互いに譲り合うことなく、一番年長の方が自然に手を挙げられた。そこでは「何故そうしなければいけないのか?」「そのためには自分たちはこのようにしたい!」と皆で話し合っていただいた。何時も無口だと思っていた方も、どんどんと発言されている。各自発表の場面は、こちらが発表者指名をせずに皆さん自主的に手を挙げられる。自由にものが言える風土がすでに醸成されていたのかも知れない。今まで皆の前で発表することが苦手な方ばかりと伺っていたが、時間の長い人、やや少ない人とさまざまであるが、皆さん堂々とご自分の意見を言われるではないか。
きっと今までそのような場面がなかっただけかも知れない。また各部門の管理職からの講義もあり、最後に質問の時間を設けた。最初の管理職が話易い雰囲気であったのか、いろいろな質問が飛び交った。ある人は「○○マネージャーは何時も怖い顔をされているが、今日の様な顔で接して欲しい」なんて意見も出て、皆さん大盛り上がりで笑いを誘った。講義と言うよりも双方向のざっくばらんな交流会のような様子、それをご覧になっていたトップもニコニコされている。
私は数多くの研修会を運営したが、こんなに皆さんが明るくて楽しい研修会はあまりなかった様に思う。要は「やらされ感」など微塵もない、普通の研修会はあるべき姿をかっこよく言って終わっても、翌日からは実践されないケースが多いが、どうやら自分たちはどのようにしたいのかを気づき始めた様子である。「ネバーランド」から「タイランド」になったのである。半年後のフォロー研修の約束をして終わったが、私自身が全く疲れなかった研修会だった。

2013/07/27 08:11 |

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