人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2013年8月14日

人材を人財に(ビジネスサプリメント554号)

あるセミナーで「ボトムアップとトップダウンの使い分け」についての質問を受けたことがある。一概にどちらが良いとか悪いとか言えないが「トップダウンは有事の時や創業期、ボトムアップは平時の時や成熟期」とお答えしたことを思い出した。そうすると先日の朝日新聞経済気象台のコラムに「会社は人生道場」と題したコラムがあった。自動車部品を作る会社の2代目社長が素晴らしいことを語っておられた。少しご紹介すると「会社の発展とは、人が成長していくことと同じ、最初の20年間は利益を上げることだけに集中した、経営者の心構えや、会計学など様々な研修会に参加した、だがどこかで歯車が狂い始め、いつの間にか<やらされ感>が蔓延してしまった、社長と社員、社員同士のコミュニケーションも薄れてしまった、社員達が生き生きしなくなっていたのだ、後半の20年間は<個人>重視に切り替えた、社長の名字の入った創業からの社名を変え、社員投票で社名を決めた、新社名に愛着を持ち、みんなで作り上げようと言う雰囲気が生まれた、指示待ちではなく何のためにこの仕事をやるのか目的を共有した、社員の自由度を認めると、社員自身も驚くほどの潜在能力が出てきた、前向きになり、自ら行動し、利益につながり始めた、会社は一人ひとりの人生を預かる<人生道場>だと実感した、会社の発展とはまさに一人ひとりの成長の上に成り立っている」と述べられていた。この経営者のお考えは凄いと思うし、実践レベルの話は評論家の言葉と重みが全く違う。最近ブラック企業と呼ばれている会社や、従業員を単なるコストと捉えている会社、また追い出し部屋なる部門を作っている会社など、いろいろと報道されているが、このような会社の永続的発展はあり得ないと感じる。また社員が経営者に対して、対案を持って「NO!」と言えない風土では生産性も上がらないし、モチベーションも著しく落ちる。政府の成長戦略で雇用の流動化が議論されているが、聞こえは良いが経営者がリストラしやすくするためのものであってはならない。非正規社員が2000万人を超え、就業人口の38%になると言う現在に危うさを感じてしまうのは筆者だけだろうか。
体質の強い会社は人が生き生きと働いているし、個人の成長なくして、組織の成長などあり得ない。衆知を結集して働き、生きがいを感じる企業こそがこれからの時代を生き残ると確信する。

2013/08/14 15:46

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