人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2013年9月 3日

人事経済学(ビジネスサプリメント556号)

人事の経済学的研究として「人事経済学」と言う考え方があるらしい。
合理的な人間を想定した場合、ある刺激を与えたらどのように反応するのか、その結果組織全体のパフォーマンスはどう変化するのか。これを数量的に見極め、論理的に整理することによって、自社に適した制度や運用方法を模索する上で役立てようとして開発されたのが「人事経済学」と言われている。
企業の成果主義など報酬体系と離職率の関係や、研修内容と従業員が生み出す付加価値との関係などを精査し、この理論や分析手法を応用して企業の人事制度に新たな視点を与える。そして生産性の向上に結びつく仕組みを設計したりする分野で「経営学に近い経済学」とも言われ、開発したアメリカスタンフォード大学経営大学院のエドワード・P・ラジア教授らが開拓し、ある新聞記事では同教授は「ノーベル賞に最も近い労働経済学者の一人」と紹介されていた。従来の経済学は労働者を単なる生産要素として扱ってきたが、「人事経済学」では個々人が損得勘定に基づいて行動すると仮定し、その上で組み立てた人事制度が上手く働くかを評価するらしい。何だか難しすぎて混乱してしまいそうだが、その「運用」が一番大切なことは言うまでもない。
この考え方はアメリカで発展したが、日本の高度経済成長を支えた三種の神器と言われた「終身雇用」「年功序列賃金」「企業別組合」の伝統的な人事制度の見直しが顕著に進む日本でも関心が高まってきたようだ。安倍政権も三本の矢の成長戦略に掲げている定年延長や限定正社員の導入支援などが進められると、ますます関心が高まるような気がする。
難しいことを引用し過ぎたが人件費を単なる「コスト」と見るのか、「資産」と見るのかが問われるし、非正規社員が2000万人余りとなり就労人口の38%を超えた現在、本当に生産性が上がっているのかが問われるのではないだろうか。「人材から人財」と言う言葉が使われるが、一番大切なことは経営者やリーダーに人財育成目線があるかどうかだと思う。
何でも数値化すれば解決するものではないだろう。未だに「追い出し部屋」なるものが存在する大手の企業や、時間外が無視されたり、ハラスメントが日常化しているブラック企業などが問題視されている現状、イキイキとした職場で生産性が上がっている企業がどれだけあるのかを再考する時でもある。
これからの「人事経済学」の課題は理論と現実の乖離をどのように埋めていくかが大切なことではないだろうか。

2013/09/03 10:16 |

2013年9月12日

マー君の快挙(ビジネスサプリメント557号)

過日の日経新聞「ニュースな/人・ヒト」に詳しくマー君のことが掲載されていた。プロ野球・楽天の田中将大投手は今季42イニング連続無失点をマークし、何と9月6日現在開幕から無傷の20連勝、昨年8月26日から続く連勝記録も24にまで伸ばした。20連勝の最多記録を持っていた「西鉄鉄腕稲尾和久」らをも超えて次々とプロ野球新記録を樹立している。稲尾投手は読売ジァイアンツとの日本シリーズで7試合中6試合に登板し、第3戦以降は5連投、うち5試合に先発し4完投、優勝時の地元新聞には「神様、仏様、稲尾様」の見出しが踊ったのを記憶しているが、その稲尾選手を超えるとは、まさにマー君の快挙ではないか。北海道・駒大苫小牧高校時代の監督は「高校時代からも走者を出しても点をやらなかったし、投球のリズムが良いから打線の援護も多かった、ただ当時は点を取られまいとガツガツと全力で投げて余裕がなかった」と言う。運もあるだろうが、それこそ運も実力の内である。彼の投球を見ていると「メリハリ」があると言えるのではないだろうか。良い意味で手を抜きながら、いざと言う時に全力になるのだ。走者がいない時は肩の力を抜いて打たせて取り、ピンチになると一気に全力投球で抑えにかかる。ビジネスにおいても同じことが言えるような気がする、ここが勝負時と考えた時に全力を出し切るのだ。私も阪神淡路大震災に遭遇、また大型倒産の悲劇と言うピンチが続いたが、そこでは「あきらめず」「あわてず」「あなどらず」「あてにせず」「あせらず」に徹し切り「深刻」にならず「真剣」に取り組んだことを思い出す。マー君は何と今季満塁の場面では13打数無安打、7奪三振と相手を完璧に封じている。本人は「自分なりに工夫してメリハリをつけたピッチンングを心がけ、とにかくいろいろと考えている、投げるボールだけではなくて、気持ちの部分でも勝負している、そういうところは成長かなと思う」と分析しているのである。そして一番大事なのは体調管理ではないか、あの4000本安打を達成したイチロー選手は過酷なスケジュールの中でも大きな怪我はしていない。私はサラリーマンでなくなった時、体調管理には特に気を付けた、熱が出たからと言って講演会を休めない、代理はきかないのである、それがプロなのかもしれない。そして彼の語った言葉で印象的だったのは「常に上を見てやっていきたいし、自分をもっと高めていこうと言う気持ちを持ってやっていく」と語ったことだ。そう!「これで良い」と思った時から衰退が始まるのを知っているのだ。

2013/09/12 08:11 |

2013年9月14日

マー君の快挙(ビジネスサプリメント558号)

過日の日経新聞「ニュースな/人・ヒト」に詳しくマー君のことが掲載されていた。プロ野球・楽天の田中将大投手は何と9月13日現在開幕から無傷の21連勝、あの鉄腕稲尾投手の記録を抜き、昨年8月26日から続く連勝記録も25にまで伸ばし、大リーグ記録24を超えたのである。以前野村元監督が「マー君、神の子、不思議な子」と言われたが、まさにその通りではないか。
稲尾投手は読売ジァイアンツとの日本シリーズで7試合中6試合に登板し、第3戦以降は5連投、うち5試合に先発し4完投、優勝時の地元新聞には「神様、仏様、稲尾様」の見出しが踊ったのを記憶しているが、その稲尾選手を超えるとは!北海道・駒大苫小牧高校時代の監督は「高校時代からも走者を出しても点をやらなかったし、投球のリズムが良いから打線の援護も多かった、ただ当時は点を取られまいとガツガツと全力で投げて余裕がなかった」と言う。運もあるだろうが、それこそ運も実力の内である。彼の投球を見ていると「メリハリ」があると言えるのではないだろうか。良い意味で手を抜きながら、いざと言う時に全力になるのだ。走者がいない時は肩の力を抜いて打たせて取り、ピンチになると一気に全力投球で抑えにかかる。ビジネスにおいても同じことが言えるような気がする、ここが勝負時と考えた時に全力を出し切るのだ。私も阪神淡路大震災に遭遇、震災に伴う4年間に及ぶ労働争議、そして大型倒産の悲劇と言うピンチが続いたが、この時こそ勝負時と捉え「自分なりにブレないこと」を心がけたものだ。マー君は何と今季満塁の場面では13打数無安打、7奪三振と相手を完璧に封じている。本人は「自分なりに工夫してメリハリをつけたピッチンングを心がけ、とにかくいろいろと考えている、投げるボールだけではなくて、気持ちの部分でも勝負している、そういうところは成長かなと思う」と分析しているのである。そして一番大事なのは体調管理ではないか、あの4000本安打を達成したイチロー選手は過酷なスケジュールの中でも大きな怪我はしていない。私はサラリーマンでなくなった時、体調管理には特に気を付けた、熱が出たからと言って講演会を休めない、代理はきかないのである、それがプロなのかもしれない。そして彼の語った言葉で印象的だったのは「常に上を見てやっていきたいし、自分をもっと高めていこうと言う気持ちを持ってやっていく」と語ったことだ。「これで良い」と思った時から衰退が始まるのを知っているのだ。
この記録は何処まで伸びるか分からないが、周りで関わっている人達やメンバーのバックアップがあってこそなしえることを忘れてはならない。

2013/09/14 08:41 |

2013年9月20日

気持ちが大切(ビジネスサプリメント559号)

先日の日経新聞に「その叱責、効果ある?」と言う記事が掲載されていた。
経営者や学識者でつくる日本生産性本部が国内企業に実施した調査によると、叱ることが部下の「育成につながる」と答えた課長級が89%に達したのに対し、部下である一般社員は56%が叱られると「やる気を失う」と回答したらしい。叱責の効果に対する上司と部下の差は大きく、熱血指導は必ずしも「やる気アップにはつながらないようだ」とある。企業の社員ヒアリングをしていて「叱ってくれない上司」に失望すると言う部下の声がかなりあったのに、この結果には少し驚いた。
また「褒め」についても双方の認識に差があり、「部下を褒める」と答えた課長級は80%に上ったのに対し、「上司が褒めてくれる」と答えた一般社員は51%にとどまったとある。上司が褒めたつもりでも、部下はそう受け取っていないようなのだ。「嘘の褒め言葉」と捉えているのかも知れない。以前「叱り方検定」なるブログ537号を掲載したが、叱るや褒めるは「検定」にはなじめないのではないだろうか。検定的に「叱るや褒める」をしても、上司と部下の間に必ずギャップが生まれると思うし、正しい叱り方や褒め方などを意識しすぎるから上記のような乖離が生じるのではないか。叱り方をビジネス書で学べるだろうか?やや言い過ぎだが職場のミスに怒り心頭があってこそ、互いの信頼関係が構築されるような気もする。
要は「相手に対するリスペクトマインド」があればこのような結果につながらない。この記事を見て過日ブラジルで行われた柔道世界選手権大会の井上康生男子監督の「選手を奮い立たせる言葉」が印象的だった。しかし最近のニュースに見られるような日本の柔道界の悪しき慣習が消えていないのは誠に残念でならない。その中にあって井上監督は金メダルを獲得した海老沼選手の目を見据えて「おまえは世界一にふさわしい人間だ、誰よりも努力して、ひた向きにやってきた、自信を持てばいい」励まされ、また同じく金メダルに輝いた高藤選手に対して「おれの監督最初の世界チャンピオンになってくれ、約束だぞ」と声をかけられたらしい。常に目線は選手に向いている、一緒に戦っていると言うスタンスから出た言葉であり、選手たちに自信を与えたのは間違いない。
私も以前は部下の方達に厳しい言葉を投げかけたことがあったが、その後必ずフォローしたし、また上司の方から厳しい叱責の言葉があったことはその後の自分に凄く役立ったことを思い出した。叱るや褒めるは「検定や書籍」からは学べることは少ない、部下の育成を望みサポートする気持ちが最も大切なことは言うまでもない。

2013/09/20 15:53 |

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