人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2013年10月 1日

情報共有とチーム力(ビジネスサプリメント560号)

あるご支援している企業で、かなり意識の高い女性社員の方とのヒアリングのお話しである。彼女のお仕事は関連部門を巻き込んでいかないと上手くは業務を進められない、非常に重要な部門の一員である。各部門は距離的に離れたところもあり、情報のやり取りがし辛い状況、彼女は電話やメールやTV会議などを通じてもれなく、偏りなく情報を伝えて行きたいと強い決意を語ってくれた。そして情報共有すると言うことは組織が一体となり「チーム」としての活動することになるのではないかと、はっきりと言われた目は輝いていたのを思い出した。その後も素晴らしいお仕事をされている様子。
情報共有は大事と言われて久しいが、なかなか上手くいかないことが多い。ネットの掲示板に掲載した、メールで送った等々自分では発信しているつもりでも、相手は見ていないことも多いのではないだろうか。発信の確認や検証までしていないことが多く、齟齬をきたしているケースを良く見る。最近つくづく思うのだが「情報共有」とは発信者も受信者も「同じ船に乗った」イヤ!「同じ飛行機に乗った」と言う意識を持って共有しなければいけないのではないだろうか。自分には関係ない、別に知らなくても良い、私に責任はない等他人事であってはならない。このような混迷の時代は、メンバーそれぞれが、沈む時や墜落する時は同じ運命になると言うぐらいの意識と覚悟を持っていないといけない。
以前ご支援したメーカーでは「後工程がお客様」と言う意識が低く、自分たちのペースで仕事を進め次工程へのつながりには無関心と言う状態であり、まるで個人事業主が集まって勝手に仕事をしていると言う状況であった。彼らの意識改革には時間がかかったが、一人一人に「ここちよいリレー」をしていこう、あなたの前に「ここちよい」仕事をした人がいて、あなたの後には「ここちよい」仕事をする人が待っている、あなた自身も「ここちよく」仕事をすることで、お客様にご満足いただけるのではないだろうかと、語り続け「後工程がお客様」と言う意識がやっと醸成され、良い製品が作り上げられるようになったことを思い出した。
前職では「ゴミを拾うAさん」「ディスプレイするBさん」「ご案内するCさん」「ご提案するDさん」「お包みするEさん」「お見送りするFさん」「お届けするGさん」すべてが「ここちよいリレー」をすることで「今のあなたは、このリレーに、なくてはならない存在ですか?」と問いかけてチーム力を高めたことがあった。


2013/10/01 08:04 |

2013年10月10日

納得(ビジネスサプリメント561号)

昨今女性の活用が叫ばれているが、あるご支援している企業の女性社員のお話しである。彼女は百名弱の女性パート社員をまとめる役割を担っておられ、
彼女の下に数名のパート班長を配置し何班かで効率的な仕事の流れを作らねばならないのだ。私がお仕事で一番気を遣っておられることは何かとお尋ねした時に、彼女は「言われたことだけを処理するのは当たり前だけど、自分で考え納得する集団にしなければ良い仕事が出来ない」と明確に答えられた。
実際は現場が忙しくて、ついつい指示するのみで、指示がなければ動かない集団になってしまうことが怖いと言われたのである。その方とのヒアリングでどのようにすれば良いのかを話し合い、新人のパートの方にはやり方だけではなく「何故そのようにするのか」を徹底して伝えて「納得」してもらうようにしよう。そうすると自分で考えるから仕事が楽しいし、「やらされ感」は出てこない、大きな成果が出ると「達成感」が醸成されるのではないかと言うことになり、そのことを実践に移され大きな成果を出されたことがあった。
今大活躍の田中将大投手も偉大な名コーチ佐藤義則氏がフォームを見直して、上半身に力を入れ過ぎだったのを、下半身も使うように示唆され24勝無敗と言う大記録を達成された。その佐藤コーチは育成で一番大切なことは「納得」と言われたそうだ。常に観察をして関心を持ち、良いところを伸ばしながら、悪いところを直していく、その過程において「気づき」が出来「納得」するというサイクルなのだ。
前職で明石地区の外商員数名とフリーにお話しする機会があった。彼らは「毎日高速道路が渋滞するのでスムーズな移動がし辛い、朝は混むし、夕刻も渋滞で困っている」との意見が出た。みんなで知恵を絞って考えようということになり、ある人から「明石には駅近くに配達所がある、大きな金庫もあるので貴重品も管理できる、余白のスペースもあり数台は駐車できる、高速道路を使わずに事務所から明石まで通勤快速に乗れば良いのでは?」との提案があった。早速精査したところ、費用は大幅な削減となり、みんなの活動もスムーズになるとみんなが納得。現場の考えた意見であり、配達所と連携し実験的に実践に移して大きな成果を生み出したことを思い出した。今までのやり方を踏襲するだけではなく、「何故?」「何のために?」「それではどうする?」と考え、みんなが「納得」した結論はチームに大きな成果をもたらすことは間違いない。

2013/10/10 08:44 |

2013年10月20日

それを見たのか(ビジネスサプリメント562号)

過日の朝日新聞経済気象台に「君、それを見たのかね?」と言うタイトルで面白い記事が掲載されていた。松下幸之助翁のお話しである。あるとき、経理部長が松下幸之助翁に「今期の決算は大変好調で、最高の利益を上げることができ、現金も5兆円ほどたまりました」と報告したところ、ほめられるどころか、冷たい顔で「君、それを見たのかね?」と言われたとある。経理部長は「一体どういう意味なのか」と困惑したそうだ。幸之助翁は「景気の悪いときはみんながよく分かっていておのおの必死に努めるから何も言うことはない、しかし、好況時にはみんな「それいけ、やれいけと我先に走る、それをどう統御するか、というのが経営というものだ、残念なことに、世上の経営は、その逆をやっているように私には見える」と言われたそうだ。私のビジネス人生もまさにこの体験をしたと感じる、トップに追いつけ、追い越せとどんどん奈落の底に突き進んだ時期があったが、好調期こそ慢心してはならない、成功体験から学ぶものは少ないことは身をもって分かる。この話から「問題は現場にあり」、現場を見ずして語れない経験をしたことを思い出した。
労災事故が少ない企業だったが何故か「婦人靴売り場」の捻挫事故が多かった。
即現場を見に行った、そうすると靴のストック場を見ると高く靴が山積みされているではないか。また高いところの商品を取るために数台の脚立があったが、どれもグラグラする、即新しいものに取り換えた。現場の社員の方々に意見を聞くと「制服がスカートで脚立に上りにくい」「売り場にはあまりにも多くのサイズの靴が陳列され過ぎてお客様が選びにくい」「ストック場を広くして欲しい」「ストックを探す係りは当番制にして欲しい」等々いろいろと現場の改善案が出てくるではないか。早速責任者と相談して「女性社員にはスカートと共にパンタロンを支給」「ストック探しは当番制」「どこに何があるのか即分かる様にタグシステムを導入」し「まずは売り場を3分の2にして、ストック場を広げよう」と提案した。すると責任者は「売り場を縮めると売り上げが落ちる」と言うではないか、まさに変な思い込みがあったが、ともかくやってみようと言うことになった。数か月後には捻挫事故は殆どなくなったし、売り場は狭くなったが、お客様が選びやすく、ストックからもすぐ探せるようになり、売り上げはアップしたのである。事故が多いから注意しようと口頭で伝えていたら、何も改善はしなかったかも知れない。やはり現場に赴き、新しい目線で現状を見ないことには問題解決は出来ないと言うことを思い知ったことがあった。

2013/10/20 07:00 |

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