人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

ブログ

2014年5月 1日

前年踏襲(ビジネスサプリメント581号)

随分昔になるが前職で売り場のリーダーの方々に対して、もうこれからは前年踏襲の考え方は止めようとお話ししたことがあった。まさに「前例がない、だからやろう」と言う時代になっていることを数々の事例を基にお伝えをしたのである。例えば一つの催事にしても毎年同じ時期に同じ商品で同じ配置で本当に良いのか、また同じ面積で良いのか、販促物は新聞織り込みだけなのか、もっと効果的な方策はないのかといろいろ工夫凝らし現場を巻き込むべきではないか。そして今の時代にかみ合った新鮮なものにしていくべきであると具体的な内容でかみ砕いて説明をしたことがあった。皆さん納得された様子であったが、その後売り場を歩いていると、ある婦人服担当の女性販売員から「何かリーダーの方に前年踏襲のお話しをされたのですか?」と声をかけられた。私は「話はしたよ、どうしたの?」と問い返すと彼女は「やはりそうですか、今日朝礼で男性のリーダーが前年踏襲ではもう通用しない時代になった、今までと同じ売り方ではダメ、同じ商品ではダメでお客様ニーズの変化を捉えながら考えて販売態勢をとろう、時代は変わってきている」と言われたらしい。ところがそのリーダーの言葉に彼女は憤慨していたのである。どうやら男性のリーダーは婦人服をあまり販売したことはないらしい、実際に売っているのは「私達であり、そんなことは一番私たちが感じていることだ」と言うではないか、「掛け声だけで言われても仕方ない、私たちはリーダーと一緒になってどのようにすれば良いのかを考えて欲しい」のだと明確に訴えられたのである。なるほど彼女の言う通り、リーダーは私がお話しした内容のうわべだけをメンバーに伝えただけなのである、いわゆるコピーリーダー、オウムリーダーだったのである。話を咀嚼して分かり易く感じてもらえるように伝えられなかったのだ。
もっと現場に入り込み、メンバーの意見や、お客様の購買傾向を調べ上げて議論し合わないと答えは出てこない。商品の仕入れはするが、販売はあなた達ではダメなのである。この事例は一人の女性販売員が勇気を出して言ってくれたからこそ分かったのであるが、思っていても言わない方が多いし「また言っている」で終わってしまうことが多い。総論は分かるが各論は分からないでは話にならない。
要は抽象論では物事が伝わらない、言葉だけではなく全員を巻き込んで具体的なアクションを起こしてこそ理解納得できるのである。

2014/05/01 13:18

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