人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2015年4月 1日

手抜き(ビジネスサプリメント604号)

リンゲルマン効果についてよく講演会でお話しすることがある。これは綱引きを例に1人対1人の場合はそれぞれが持っている100%の力を出す。しかしこの人数が増えてきて8人対8人になると、各人が無意識に手抜きをして約半分ぐらいの力しかでないという実験をリンゲルマンという方がされたものだ。
要は大勢いると誰かがいるので少しぐらいは手を抜いてもかまわないと思う気持ちが自然に出てくるのかも知れない。
そうすると先日の日経新聞のこころの健康学というコラムに国立精神・神経医療研究センター大野 裕さんが書かれた記事が目に留まった。少し内容を紹介すると、人間関係で直接相手に不満を口にできるようになったら、ずいぶん関係が進んだと考えられる、不満ばかり口にするのはよくないが、相手にとって耳当たりのよいことしか言わなくなるのも、同じように好ましくないとあった。
個人的な関係だけでなく、組織の人間関係でも同じことが言えるのではないだろうか。NHKの大河ドラマの中で軍師黒田菅兵衛でも晩年の秀吉には諌言が通じず、崩壊してしまったのである。いわゆる諌言を避けて甘言ばかりだと組織は破綻に向かっていく。またよく引き合いに出される例に、イエスマンしかいなくなった組織の問題がある。こうなると、不都合な情報が入って来なくなるし、その結果、トップの判断に狂いが生じてくる。よくない情報が入って来ないのは判断ミスが最も起こりやすい状態といえる。不満を口にできなくなると、その気持ちが行動に現れるようになる、最初は意識的であっても、他人に気づかれないように、場合によっては自分も意識しないうちに、力を抜いてしまうこともある。要は力を抜くという消極的な形で不満や反発心を伝える様になってしまっては、何にもならないと述べられている。
私が今行っている個人別ヒアリングでは、よく不満や不平が出てくるものだが、いろいろとお話ししていくと、いつの間にか不平や不満が消えて明るい顔をされる事例が多い。
またある組織で「何でも言って委員会」と称してトップと現場の人たちが自由に意見を交換する場を作ったことがあるが、最初は遠慮がちだったが、その後は思うことをどんどんと発言し、不満や不平が消えていく事例を経験している。要は組織内で「気楽にまじめな話が出来る」ようになってくると、見違えるほど個人のモチベーションや生産性がアップしていくものだ。
不満が言えず、無意識に手を抜くようなことになった組織の蘇生は難しい。

2015/04/01 08:04 |

2015年4月15日

労働生産性(ビジネスサプリメント605号)

労働生産性とは最近新聞等に良く出てくる言葉であるが、就業者がどれだけ効率的に仕事をしているかという指標のことである。就業時間を過ぎても上司が働いているから帰りづらいといった理由で無駄に残業すると労働生産性は下がりやすい。
企業の場合、営業利益や人件費、減価償却費などの合計を従業員数で割って計算する。国の労働生産性は国内総生産(GDP)を就業者数で割って算出する。
何と日本の1時間あたりの労働生産性は2013年に41.3ドル、経済協力開発機構加盟34ヶ国のうち20位にとどまるそうだ。トップはノルウェーで87ドル、アメリカも65.7ドルと4位、労働政策研究・研修機構によると日本では週50時間以上働く人の割合が32%とフランスの3倍にのぼる。ムダな残業が生産性の低下につながっている可能性が高いと言えるし、まだ時間の長さで評価されているケースがあるのかも知れない。
私が勤務していた数十年前の思い出なのだが、今日は18時から麻雀の約束をしていると決まっておれば、素早く仕事を進めて、定時の17:45分には終わったものだ。多分何も予定がなければ集中せずにだらだらと残業していたかもしれない。そう言えばご支援していた企業事例でお昼時間になっても上司が席を立たないとみんなが昼食休憩にいかない組織があった。何故みんな席を立たないのか聞いてみたが、以前からそのような風土で、自然にそのスタイルに慣れてしまったというではないか。おそらく12時のチャイムがなってからの労働生産性は著しく下がっていたのは確かだろう。上司に聞いてみたら嘘のような話であるが「その状態を自分自身何も意識していなかった」とのこと、早速改められた事例を思いだした。
また反対に10数人の小さな事業所では、責任者が部屋のカギを持っており、定時が来れば「さぁ終わろう!」と声をかける、残っている人がもしあれば、明日にまわすか、全員で手伝って一緒に退社する癖を付けていたところもあった。
最近ではホワイトカラーエグゼンプションという言葉が出て来たように、より労働生産性を上げていくための取組みが数多く出始めて来た。伊藤忠商事が午後8時以降の残業を原則禁止、早朝の時間外手当の割増率を25%から50%に変えた。先日の日経新聞によると「残業削減へ朝方勤務、政府が助成金検討」という記事も掲載されていた。いずれも従業員の残業時間を減らし、労働生産性を高めるのが狙いであろう。これからは労働時間が長い方が評価されるという時代ではない、如何に限られた時間で大きな成果を出していくかが問われるのである。日本では生産年齢人口が急激に減ってくる現象は避けられない、いよいよ労働生産性の向上が不可欠になってきたのである。

2015/04/15 08:56 |

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