人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2010年3月28日

事業は人なり(ビジネスサプリメント412号)

先日の朝日新聞の経済気象台と言うコラムに「事業は人なり」と言う記事が掲載

されていた。不透明・不安定な経済状態の時は、社員自身が会社の将来を思い、

業務のあり方やお客様満足などのカイゼンに取り組み続けるような企業でなけ

れば生き残れないとあった。そう!当事者意識なくして存在できない時代に突入

したのである。決まったことしかやらない社員、権利を主張するだけの社員など

を抱えた企業は早番破綻するともある。最近の企業破綻を見ていると誠に怖い

状況である。確かに大きな組織にぶら下がり、考える力をなくし、そのことに

気づかないことは怖いことである。以前の私がそうであった、大きなロープに

ぶら下がっておれば絶対に切れることはないと確信している自分があったが、

突然切れたのである。切れればまた別のロープを探しまくっていた自分があった

ことを思い出す。このような時代はしっかりと「自立」することが求められる、

即ち主語は「会社」ではなく「自分」なのである。「自分のことは自分で行い、

自分で責任を持つ」自立した集団が勝ち残るのではないだろうか。マーケットの

変化をいち早くキャッチし更にはマーケットを変えていくぐらいの気概が求めら

れるのである。また社員は経営者を映す鏡、上に立つ者の器量や度量、マネジ

メント力次第で社員の意識も大きく変わるとある。数々の企業をご支援していて

このことを凄く感じることが多い。トップ自ら現場へ出向いて社員の話を聴く、

また会社のいろいろな情報を伝え共有していくことも大切であり、何も難しい

ことはなく、簡単に実現できることである。現場を大切にすることこそが、

自立した社員を作るのであろう。このような時こそ日本の誇りであった現場力

を高めていかなければいけないのではないだろうか。成果主義も大いに結構だが

「大事なのはお互いの信頼関係」であるし「形」ではなく「中身」とその「運用」

が大切なのだ。

動物園の檻の中の虎になるのは楽である、しかしこれからは野生に放たれた虎に

ならないと人も組織も生き残れない時代になった。

2010/03/28 07:28 |

2010年3月21日

この時期に合同就職説明会(ビジネスサプリメント411号)

先週末に東京で間もなく卒業を控える大学4年生の合同就職説明会が開催され、

数人枠に何と800人も参加したと言うニュースを見て驚いた。皆さん真剣な表情で

必死である。今年の就職内定率は80%と言うではないか。リーマンショックによる

景気の後退は底を打ちやや改善の兆しはみられるものの誠に厳しい状況であること

に変わりはない。内定をもらえなかった学生の中には、大学を卒業せずに留年しよ

うとする人が増えているそうだが簡単に「新卒ブランド」を捨てて欲しくはない。

また大学院への進学枠も満杯になった大学も多いと聞く。本当に勉強のために大学院

に進むならば素晴らしいことだが、就職できないからという状況で進むのは異常と

しか言いようがない。またお金に余裕がある人は海外留学希望も増えていると聞くが

現状から逃げて欲しくはないし、今後の自分作りのためにもしっかりした信念を

持って取り組んで欲しい。来春の卒業生に対する今年の企業採用動向は、昨年よりも

更に悪化するのではないかと言う見方もある。リクルートワークス研究所が昨年末に

公表した「採用見通し調査」の結果では、2011年卒の採用予定数が「減る」と回答

する企業の割合は9.3%で「増える」と答えた企業よりは依然多く、さらに「分からな

い」と回答する企業が2010年卒の25.1%から約11ポイントも増えて36.6%となったと

ある。特に中小企業では計画すら立てられないのが実態のようだ。

元職場でもある時期採用を数年ストップした時があったが、将来的にはその年代が

中核を担う時は本当に大きなひずみが出来て運営上も厳しいことになったことを

思い出す。フレッシュな人材が働けないと言うことは誠に心が痛む。

以前のような拡大成長はもう来ないだろうが、景気はこのまま続くとは思われない。

短絡的な判断で採用中止することは後で大きな禍根を残すものと思われる。未だ

内定が決まらない学生の方も、決してあきらめず「目的意識」を持って取り組んで

いって欲しいものだ。

企業における人は「コスト」であると共に「財産・資産」であることを忘れて欲しく

ないこの頃である。

2010/03/21 07:14 |

2010年3月14日

心のハグ(ビジネスサプリメント410号)

2009年の全国百貨店売上高は24年ぶりに7兆円を割り込み、売上のピークだった91年

と比較すると、3兆円以上が吹き飛んだようだ。多くの評論家の方達は、ネットへの

顧客離れ、自主販売力のなさ、場貸しに成り下がったなどとの意見がかまびすしい。

このことに対して、先日元職場の後輩が「我々の努力も知らず簡単にコメントして

いるようなぁ」と不満げに話していたが評論家の虚飾の話には説得力がない。

先日の日経ビジネスに三越伊勢丹ホールディングスの故武藤会長が昨年「お客様を

ハグしましょう」と社内向けのビデオで大きな身振りを交えて社員に語りかけられた

そうである。「ハグ」とは抱きしめること、抱きしめるぐらいお客様に密着して

ニーズを組み取らなければ、これからの百貨店は生き残れないと言われたのである。

百貨店はこれまで消費者の生活に入り込み、さまざまなニーズに応えることで支持を

得てきた。今、目先にとらわれすぎて百貨店の強みを磨くことを忘れてはいないだろ

うか。元職場で真にお客様の心を捉えた中堅販売員のことを思い出した。

その方は自分の頭の中に100名までのお客様のお好みやご性格などが入っていた。

もちろんデーターを検索すれば出てくるものなのだが、常に自分のものとして更新も

していたようであった。その販売員がある時総額1億円の商品仕入れをすることに

なった。私は「どのようの仕入れをするのか」を詳細に聞いたことがあった。

そうするとまず商品展示場に行き、A様には○○を、Bさまには□□をと、まずは売り

先を具体的に決めて仕入れると言うのである。まさにお客様に密着した仕入れを行

うと言うではないか。そして店頭に入荷されたら、即お客様にご連絡し「良いお品

を仕入れました、ご来店いただけますか」と連絡をする、お客様は即来店され

「この商品はお客様のために仕入れてまいりました、如何でしょうか」と言うと

大変感動されて殆ど完売すると自信を持って言っていたのを思い出した。

お客様との「心のハグ」が出来ているのである。厳しい状況の百貨店であるが、

ある場面ではこのような真に販売力のある方々をもっと育成し、「心のハグ」が

出来るようにしていくべきかも知れない。

2010/03/14 07:48 |

2010年3月 7日

表彰台に見る涙(ビジネスサプリメント409号)

冬季オリンピックも終了したが、今一つ盛り上がりにかけたような気もする。

その中にあって女子フィギュアスケートは華やかなものだった。キム・ヨナ選手と

浅田選手の一騎打ちは見応えがあったし、残念ながら浅田選手は銀メダルに終わっ

たが誠に素晴らしい見事なものだった。

私は学生時代に弓道をしていたが、その中で「残心(残身)」と言う言葉は私の

心の中に深く刻み込まれている。弓道教本によれば「残心(残身)」とは矢の離れた

後の姿勢であり、矢が離れたことによって射は完成されたのではないとある。

残されたものが、「残心(残身)」である。精神で言えば「残心」、形で言えば

「残身」となり「残心(残身)」の善し悪しによって射全体の判別が出来射手の

品位格調も反映する。一貫した射が立派に完成された時は「残心(残身)」も自然

立派であると解される。的中しなかった時の「残念なしぐさ」や「心が乱れてはなら

ない」のである。大相撲の土俵でのしぐさが批判を浴びたりするのも「相撲道」だか

らではないか。双葉山が70連勝を安芸の海に阻止された時「双葉未だ木鶏たりえず」

と言う言葉を残されたのを思い出した。木鶏とは何事にも動じない真の強さなので

ある。

話は飛んでしまったが、フィギュアスケートの最後の決めも皆さん失敗しても毅然と

した形で終わられている。フィギュアスケートもある意味「道」なのかもしれない。

キム・ヨナ選手も浅田選手もプレーの最後は素晴らしい心や形で終わっていたのが

非常に印象的だった。

しかし表彰式は別である。キム・ヨナ選手は涙を見せた、これは「嬉し涙」であった

ろうし美しいものだった。浅田選手も涙を見せた、しかし彼女の涙は「嬉し涙」なの

か「悔し涙」なのだったのか。「悔し涙」であったとしたら銀メダルまで獲得したの

にあの涙は、本当に凄いと思った。これからの浅田選手の更なる飛躍が期待出来る涙

であったように感じたし、これからもこの経験を大いに活かし世界最強の選手になって

もらいたいものだ。

2010/03/07 08:17 |

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