人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2010年4月25日

内向き・上向き・箱文化(ビジネスサプリメント416号)

先日ある雑誌でこの3つの言葉を目にした。私が何時も「気づきに関する講演」で

「メタボ化した組織」の危険性があると申し上げている言葉と同じだった。

長年同じような組織体にどっぷり浸かってしまうと、どうしても「内向き」に

なってしまうものだ。即ち「会社」の常識は「社会」の非常識であることが感じ

なくなるのが怖い。最初は「おかしいな?」と思っていても「まぁいいか!」と

思い込んでしまうのである。出来るだけ「現場」に目を向けたいものだし、外の

状況を見る余裕が欲しい。そのまま放置すれば「ゆでガエル」になってしまう。

「内向き」にならないために一番大切なことは「問題意識(おや、おかしい)」

を常に持ち続けることが肝要である。また内向きになると、ついつい「他責」傾向

になりがちである。他責に帰することは非常に楽であるが「考える力」がだんだん

なくなってくるものなのだ。また「上向き」で一番怖いことは「トップに本当の

情報が入らない」ことなのだ。そのためタイムリーに手が打てず失敗につながる。

またトップにも「良いことは聞きたい」が「良くない情報は避けたい」傾向が

あってはならない。甘言(心地よい言葉)を好み、諫言(問題点を指摘するような

言葉)を避けていてはならない。組織体と言うものは「逆さまのピラミッド」でなけ

ればいけない、そう!一番下にくるのは「トップ」であり大変重い位置なのだ。

メンバー全員が「気楽にまじめな話」が出来る組織にしていかないと、この激変の

時代は生き残れないことは確実である。何よりもまず「下(現場のメンバーの状況)

や顧客(お客様の変化)を見る」組織は強いものだ。

そして「箱文化」は担当が違えば全く関心を持たない、いわゆる「よそごと」に

なってしまう。即ち自分たちの「箱」のみ関心があり、余計なことはしないと言う

風土は誠に怖い。組織と言うものは「箱」を作ってはいけない、箱なしで臨機に

対応出来る組織体にしなければいけない。組織メンバーが大きな目標に向かって

「ベクトル合わせ」が出来ていないと成果と言うものは出ないのである。

私は全てを経験・体験し失敗してきたので自信を持って言えるが、今ほど「外向き」

「下向き」「箱なし文化」の構築が求められている時はないだろう。

2010/04/25 07:46 |

2010年4月18日

スピード(ビジネスサプリメント415号)

日経新聞の春秋に「スピード、スピード、これからの歴史は、今までの何倍、

何十倍のスピードで進む、起(た)ちあがるのも、亡び去るのも、われわれの

考えもおよばぬほど早い時代なのだ」と敗戦直後の軍の高い地位にあった方が

述べられた言葉が紹介されていた。このフレーズは今でも、いや今こそ通用する

ことではないだろうか。政治や経営もスピードが必要になってくる、問題の先送り

をしていてはだんだん問題が大きくなるものなのだ。時は解決してくれない。

そんなことを考えていると、ある雑誌に早稲田大学の内田教授が次のような寓話を

紹介されていた。

「仲のいい2人の男がジャングルの中を旅していた、そうしたら虎が現れて、さぁ、

大変!と言う事態になった、1人の男は突然しゃがみ込んで靴紐を結び始めた、

もう1人の男が、何をやっているのだ?そんなことをしたって虎から逃げられる

わけがないだろうと馬鹿にした、しかし言われた男はお前より早く走ればいいのだ」

と答えたと言う話である。この話はスピードが大切だと言うことを示唆している。

教授曰くまず1つは「問題に気づくスピード」「虎より速く逃げる」と言う設定を

してもムリがある、もう1人の男より速く逃げれば良いと言うことに「気づく」こと

がポイントなのだ。2つ目には「意思決定のスピード」、この例えは人間としては

誠に非情なことなのだが、企業や組織の場合はもっとシビアでありどちらが速いか

で決まる。3つ目には「実践するスピード」意思決定しても実践しなければ何の

意味もなさない。つくづく感じるが意識レベルで止まってしまい実践されないことが

如何に多いことか。この男の場合は靴紐を結ぶと言う行為を実践したことが大事な

ことだったのだ。「知識は意識を変える、意識は行動を変える、行動は結果を変える」

と良く言われるが、いまや「行動が意識を変える」時代になっているかもしれない。

ことほど左様にスピーディーに意思決定し実践に移していかなければ亡び去るかも

しれない時代なのだ。「正しい判断」と「速い判断」今の時代はどちらが求められる

かと言えば、言い過ぎかも知れないが「速い判断」ではないだろうか。それほど

スピードが求められていると言っても過言ではないだろう。

2010/04/18 08:24 |

2010年4月11日

やってはいけないこと(ビジネスサプリメント414号)

最近の不況下での小売業は、のきなみ価格競争が激しい。牛丼270円、ジーンズが

1000円以下とは信じられない。08年の百貨店の衣料品売上高は、10年前に比べて

25%も減り、スーパーは半分になったと言うではないか。以前ある新聞でやっては

いけない競争と題して「価格競争」「規模拡大」「品揃え競争」の3つが上げられて

いた。「価格競争」は元職でもやりすぎたし、不毛な競争だと痛感したことが

あったが、今またもっと凄い規模でなされている。ついに百貨店は構造不況業種に

なってしまい、バーゲンの先食いや、キャッシュバックなどなりふり構わずに行われ

ている。しかし消耗戦に過ぎないことは明らかな事実である。「規模拡大」はバブル

の時は勇ましいが、このような状況では自分の体力を無視した背伸び経営になり不況

に弱い体質を作ってしまうような気がしてならない。

都心の一等地百貨店の閉店もどんどん出てきているし、希望退職は何千人規模でなさ

れている現実は嘆かわしいものがある。規模を拡大する時は常に自己資本とのバラン

スを考えなければならないのは言うまでもない。「品揃え」は豊富なほど良くは見え

るが、無駄な在庫抱えてしまい資金繰りなどに大きな問題を残すのではないだろうか。

ある新聞には強い小売業は3つの法則がある、即ち「ついで買いを誘う」・「自ら

開発し自ら売る」・「大量に売り切る」ことが大事とあった。

バブルの時は「高くて良い商品」が爆発的に売れた、しかし今は「安くてよい商品」

が売れるのは良く分かる。しかし消費者目線の価格と価値との関係は価格よりは価値

がある、即ち価値>価格の時に「値ごろ感」が出てくるのである。今はそのことを

忘れているような気がする。消費者の声は「かっこいいモノはユニクロでもエルメス

でも構わない」のである。安易にやってはならない競争をしてはならない。

三浦展氏は日本人の消費者意識が「あれがいい」「これがいい」から「これでいい」

に変わりつつあると指摘されている。今の小売業は真に消費者目線に立てたところ

のみ生き残るのではないだろうか。

2010/04/11 09:07 |

2010年4月 5日

踊り場(ビジネスサプリメント413号)

このように混迷した世の中では勤続疲労・制度疲労を起こす方々もさぞかし多い

ことであろう。そのような時には少し「自分の仕事の進め方や生き方」を見直す

良い時かもしれない。即ち「踊り場」が必要なのだが景気の「踊り場」とは停滞を

意味するがここで言う「踊り場」そうではない。もし長い階段に「踊り場」がなかっ

たら上る気がするだろうか、あきらめてエレベーターに乗ってしまうかもしれない。

「踊り場」があるから上れるのである。「踊り場」とは英語でlandingとあり着地の

意味がある、そして矢印が引かれてflight(飛立ち)につながっている。飛行機で

言えば着陸して機体整備を確実に行い、燃料補給をしてから新たな飛び立ちをする

のである。勤続疲労・制度疲労を起こす人は

1.完璧主義で満点を取らないと気がすまない
2.悪い面ばかりに目が行き考えすぎる
3.失敗を引きずり成功に結び付けられない
4.何時もMUSTでありWILLにはなれない
5.結果ばかりを気にしてプロセスを疎かにする
6.他責にはしないが「自責」が強すぎる
7.すべて先を読みすぎて疲れてしまう

などの傾向があるのではないだろうか。また「やらされ感」が多く「達成感」を

感じることが少ないように思う。このような思考から抜け出すにはまず自分の

「踊り場」を作って、自分の考え方にこだわらず本当にそれで良いのか、他のやり方

があるのではないか、成功体験から学べることはなかったか、また失敗体験からこそ

学べていないか等々振り返って見たいものだ。失敗してもたまには他責にはせずに

「たまたま運が悪かった」と考えて見れば道は拓けるものではないだろうか。

勤続疲労・制度疲労を起こした時こそ「生き方や考え方」を素直に見直す時である。

しかしそこで動かず前へ進めなければ意味はない、例え失敗しても必ず成功につなが

るものと信念を持ちたい。失敗を「成功とも読む」と言う考え方をしても良いではな

いか。上手く自分の「踊り場」を作っている人はどの方向へでも飛立つことが出来る。

期初めの4月は新たな飛び立ちの時かもしれない。

2010/04/05 09:12 |

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