あるヒアリング(ビジネスサプリメント456号)
以前にご支援した企業で入社2年目の男性社員とヒアリングした時のことである。
最近ミスが多く何となく元気がない様子と上司からは伺っていた。私と彼とは
2回目のヒアリング、向かい合わずに真横に座って緊張をほぐしながら話を始めた。
確かに以前より声は小さいし暗い感じがする。私がホンネでざっくばらんに話し
かけると意外に以前より能弁ではないか。彼は今の仕事に追い回され毎日が大変
だとのこと、与えられた仕事のやり方も変わったようである。話しながら感じたが、
メンタルヘルスの問題までは心配なさそうだし、辞めるということも口にはしない。
ともかくスピードが遅く残業になる、本人は「この仕事は向いていないのでは?」
と言う。1年ぐらいで向き不向きは分からないがしばらくじっくりと聴いた。直属の
上司からは今の仕事を整理して、優先順位をつけながら報告・連絡・相談をする
ように言われているらしい。しかし毎日の仕事に変化がなく変われない自分がある
と言う。そして「私は人から言われたことを素直に聞けない性格なのです」と言う
ではないか。正直びっくりしたが、ここで否定してはならない。「そうなのか!よく
そのことを素直に言ってくれたね」と話しかけると笑顔が出て来た。そして「こんな
に自分の気持ちをはっきりと言ったことは初めて」とのこと。私は「あなたの気持ち
や信念は決して否定はしない、しかし組織は大勢の人達がいるから、そのようにいか
ない時が多いものだ、そのあたりをあせらずに考えてみようよ!」と申し上げた。
彼は「確かに他の人からは変に思われることがありますね、指摘されたことが完全
には出来ないかも知れないが、一度やってみます」と私に誓ってくれた。
そしてまた困ったら話し合おうよと言うと「是非お願いします」と明るい顔で答えて
くれた。その後彼の様子を上司に確認すると、「何だがすっきりした様子で、イキイ
キと仕事をしてくれています」と言う答えが返ってきたのを覚えている。おそらく自
分のスタンスにやや気づき始めたのだろう。今は中堅社員として活躍しているらしい。
2011/03/23 10:09 | パーマリンク