人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2011年4月 8日

阪神淡路大震災から学んだこと(ビジネスサプリメント458号)

東日本大震災は未だ原発の被害、津波による行方不明者など多くの厳しい現実を

残している。被災地の皆様には本当に心からお見舞い申し上げたい。

16年前の阪神淡路大震災のことを少し述べてみる。5:46の大きな揺れで目を覚ま

した、近くの阪神高速道路が折れ曲がってバスが落ちかけているではないか!

もしお昼であればもっと大惨事であった。まずは人命救助ありき、企業では安否確認

が急がれるが、今のようにネットや携帯は普及していない。幸い広域ではなかったの

で有志によるキャラバン隊を組み避難所の隅々まで巡回し1000人以上の安否確認が

出来たのは2週間後だった。想定外と言う言葉が使われることがあるが、危機管理

マニュアルは通常時に作られたもので、非常時には役に立たないことが多いものだ。

まずは復旧である、物流倉庫で食料品や生活用品の販売を開始した。いわゆるBCP

へのスタートである。不安な社員の方たちには出来る限りの正しい情報開示が必要、

あやふやな発信は不安を増幅させるものだ。避難所で凄いストレスを受けた社員の

方たちには社員寮や近くの保養所を開放した。そして建築審査を含めて復興への

ビジョンを示さなければいけない。将来の姿を明らかにしていかないと「希望」が

無くなる。当然本社に対しての要望事項、近隣店舗へのヘルプ体制など即実行しな

ければならない課題は山積みであった。そんな中にあって働く場所が無くなったわけ

だから、大きな労務問題が生じてくる。期間雇用の非正規社員の方たちとのお互いに

ムダだった労使紛争も長く続き、雇用と言うものはそんなに軽くは無いことを痛切に

感じたのである。また社員の方々は海外まで含めての配置転換を実施せざるを得な

かった。小売であるのでお客様とのお約束商品の確保やお預かり商品のお届けも大き

な課題であった。そのうち被災した社員の中にはメンタル面で不調を訴える人もかな

り出てきた、可能な限りの相談や、医師との連携も大切である。一番大切だと感じた

ことは非常時の人と組織のあり方だった。リーダーには胆力が求められる(自分が動

いてはダメ)・組織はシンプルな方が良い・各々の役割を明確化し共有化することが

大切であることを学んだ。

2011/04/08 09:40 |

2011年4月 1日

伝える難しさ(ビジネスサプリメント457号)

最近東日本大震災における情報伝達のあり方の難しさを痛切に感じることが多い。

正論や事実だけの伝え方や、専門家の情報だけでは聴いてもらう方たちに上手く

受け入れてもらえないような気がする。聴く方たちが何を知りたいのかを把握し、

現場目線で伝えないといけないのではないだろうか。あやふやな返答は余計に不安

感が増すし、誰かの心を動かすには「思い」が入らないといけないように思う。

かなり昔に「人を動かす」「道は開ける」の著者デール・カーネギーの話し方教室

に半年間通ったことがあった。中身は毎回3分間スピーチを繰り返し、「誰の話が

心に残ったのか」を投票し1番の方が賞品をもらえ、講師の簡単なコメントがある

だけだった。私は自分では上手く話せると思っていたのだが、残念ながら1回しか

1番になれなかったことを思い出した。毎回投票の1番になられた方は実例を豊富に、

たんたんと話されたご年配で決して能弁ではない看護師の方だった。伝え方は本当

に難しいものだ。「人を動かす」の著書には人を説得するためには「まずは褒める」、

相手が間違っていてもそのまま伝えてはいけない、人は過ちを指摘されると反発し

否定しようとする、しかしはじめに褒めれば態度が軟化して聴く耳を持つとある。

また「人を動かす秘訣はただ1つしかない、自ら動きたくなる気持ちを起こさせる

こと」を学んだ。私が今行っているヒアリングはまさにこれを実践している、世に

言うコーチングではないだろうか。

「伝える」ことで最近非常に印象的で心に残ったのは、選抜高校野球の創志学園

(岡山県)の野山慎介主将の開会式における「宣誓」ではないだろうか。「私たち

は16年前、阪神淡路大震災の時に生まれました。今東日本大震災で多くの尊い命が

奪われ、私たちの心は悲しみでいっぱいです。人は仲間に支えられていることで、

大きな困難を乗り越えられることを信じています、がんばろう!日本、生かされて

いる命に感謝し正々堂々とプレーすることを誓います」と。被災を受けた地域の方々

から大きな拍手があったが、おそらく全国民が勇気づけられたことだろう。

2011/04/01 07:01 |

2011年4月23日

内向き指向の決別(ビジネスサプリメント460号)

個人や組織の内向き、上向き、箱文化の怖さが叫ばれて久しい。即ち個人や組織が

内向きの姿勢に決別しなければ次への発展はない、上向きの姿勢では組織は活性化

しないし衰退へ向かう、箱文化とは他の分野のことは全く分からないと言うスタンス

では効率的な組織にはならないと言うものである。

以前に朝日新聞に「さあ踏み出そう」と言う特集記事が掲載されていた。記事による

と去年8月に米ニューズウィーク誌が特集した「世界最高の国ランキング」で日本は

世界100カ国の中の総合順位は9位だったが、上位にはスイスなど小さな国が並び、

「人口5千万人以上の大国」に限れば、日本は堂々の1位だったとある。東日本大震災

により日本は危機管理の時であるが、世界が日本を見る視線はそれほど陰ってはいな

いのではないだろうか、このような時こそ内向き姿勢に決別し世界に目を向けなけれ

ばならないようだ。また教育の達成度は高く、女性は世界一、男性も世界5位の長寿国、

生活の質や治安、技術力は世界有数の水準にあり、表現の自由や民主主義は社会に根

を下ろしたし、国としての総合的な達成は今も世界に胸を張るに足るとある。しかし

視線を外に向ければアジア各国が台頭し、日本の存在感や独自性は埋没しつつあるの

も現実だ。ユニクロでは店長や本部の幹部クラス全員に海外での経験をさせるらしい

し、三菱商事でも若い人は必ず全員海外勤務の経験をさせるようだ。日本では若い人

の内向き指向が進み、海外への留学生も極端に減ってきたようであり、韓国などが

凄い勢いで世界に目を向け留学生も大きく伸びていると言う。これから本当に大切な

ことは一人ひとりの個人が従来の殻を脱ぎ捨て、立ち上がる勇気を持つことであり、

それが個人や組織に活力を付けるものと確信する。即ち「変えるべきものを変える

勇気と、守るべきものを守る信念」で今こそ内向きに決別することが求められている

時はないように思う。この記事の最後に故ピーター・ドラッカーが述べた「いざとな

れば日本人ほど大胆な変化をする国民を知らない」という言葉が印象的であった。

「頑張ろう!日本」。

2011/04/23 09:07 |

2011年4月15日

軽い言葉と現場言葉(ビジネスサプリメント459号)

最近の東日本大震災報道で感じることは非常に軽い言葉が多いように感じる。

要は現場目線の無さ、被災地の方々のお気持ちを理解出来ていないからなのだろ

うか。責任者が「一日も早く復興したい!」なんて抽象的な発言をしても、被災地

の方々は「そんなことは解っている!今後の具体的な話を聴きたい」のである。

情報とはタイムリーに具体的に言わないことには何の意味もなさない。しかし初動時

には元気づけることも大事、阪神淡路大震災時に壊滅的被害を受けた職場を見て、当

時の最高責任者は「大丈夫!心配するな、必ず復興する」の一言を言われたことが忘

れられない。今の被災地とは状況が違うとは言え、どれだけ勇気づけられたことか。

以前ある地の中小企業同友会に招かれで「企業理念の浸透」についてのセミナーと

討論会をしたことがあった。企業理念は誠に大切なものである。しかしそれが咀嚼

され現場の行動につながらないと何の意味もなさないのではないかと申し上げた。

例えば接客業において「笑顔で丁寧な応対」を掲げて、笑顔訓練をしても本当に心

からの笑顔が出せるだろうか?要は現場でお客様に対しての感謝の気持ちが持てる

ような風土になっているか、否かが大事であり、一番大事なことは現場言葉で発信し

考えてもらうことではないか。「笑顔で接遇しましょう!」と掲げずに「あなただ

ってお客様!」と簡単なコピーを掲示したことを思い出した。要は「あなたは今

お客様に応対する仕事であるが、あなたもお客様になる時がある、その時にはどの

ような応対をしてもらいたいか」を考えようと訴えた。そうすると自然と笑顔が出て

丁寧な応対をされるようになったのである。

ある有名なホテルで「清潔が一番」と言う理念があったが、その考えを受けて各人が

現場において具体的に「どのようなアクションをするのか」を発表する機会を作られ

たそうだ。ある方は「チリやゴミが落ちていたら必ず拾いポケットに入れる、素晴ら

しいホテルマンのポケットは膨らんでいる」と言われたとか。その話を全員で共有

され実践に移されたのである。抽象的な言葉で人は動かない「現場言葉」の大切さ

を考えるこの頃である。

2011/04/15 11:09 |

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