人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2011年7月24日

なでしこの不思議(ビジネスサプリメント470号)

「もうこれで終わり!」と2回も思ってしまった。先日の女子ワールドカップを

朝早くから3時間もTV観戦してしまった。オフサイドが何かも良く分からない

素人ファンの一人であったが、実に爽やかな気持ちになり早起きして良かったと

思った次第である。知っているのは沢選手ぐらいと言うお恥ずかしい限り。男子

は監督が変わるたびに「ジーコ」「岡田」「オシム」「ザック」と呼び方が良く

変わるが、女子は「なでしこジャパン」。

「人と組織」を考える上で多くのヒントに気づかされたのである。心身ともに

酷使する戦いを貫いた選手達には敬服するし、どんな試合でもボールを小柄な

選手がひたすらに追いかけ、つなぎ、跳ね返す姿を印象付けられたものだ。また

選手をまとめあげた佐々木監督の手腕はすばらしいものがある。決勝のPK戦前

の円陣での全員の「笑顔」は何だったのだろうかと思ったが、間違いなくある

清涼感に気づかされた。監督が「ここまできたら儲けもの!」と言って選手達の

緊張感を和らげたらしい。アメリカの選手達の固い表情とは対照的であった。

監督が負傷者をホテルで休めと言う指示を出されたら、沢選手の「試合に連れて

いって欲しい」との要望に応えチームメンバーの気持ちを十分取り入れられた采配

は素晴らしい。まさに現場目線そのものではないか。私がいつも講演で申し上げて

いる5つの(あ)あきらめない・あせらない・あわてない・あなどらない・あてに

しないを実践されている。ある新聞に掲載されていたが世界相手に「柔よく剛を

制す」そのものである。身体的なハンディ、金銭面も含めたプレー環境など所与の

条件が厳しい女子は「こうしたい」より「こうしなければ勝てない」と言う信念が

貫かれている。私が個と組織の関係で一番勉強になったことは、あるミーティング

の時に2人の選手が時間に遅れたらしい、その時に監督は遅れた選手に注意をする

のではなく、参加している他のメンバーに「どうして遅れた選手に声をかけなかっ

たのか!」と諭されたことがあると言うエピソードである。そう!まさにチームを

ワークさせるポイントの言葉である。日本は何か自信を失いかけているが、もっと

自信を持ちたいものである。

2011/07/24 19:20 |

2011年7月17日

働かないアリ(ビジネスサプリメント469号)

最近長谷川英祐氏著の「働かないアリに意義がある」を読んだ。会社の利益の8割

は一部優秀な2割の社員が生み出していると言ういわゆる「2・8の法則」、別名

「パレートの法則」とも呼ばれている内容を思い出した。この法則がアリの世界

にも存在しているという理由を実にはっきりと解説されているのだ。

働きアリの7割は休んでいるし、2割にいたっては働かない、1割は一生働かないと

言うではないか。働かない2割を排除しても今まで働いていた残りのアリの2割は

また働かなくなるらしい。何故なのか、この本には交替要員のためなのだと指摘

している。全員がいっせいに働いていると、同時に全員が疲れてしまうし、誰も

働かなければ組織は致命的なダゲキを受けるので、組織維持のために合理的な

システムが出来上がったらしい。私はあるセミナーで2割の優秀な社員、6割の普通

の社員、2割のパットしない社員がいる現状の中で「どのようにすれば良いか?」

と言う質問を受けたことがある。「6割の中でも優秀な2割を意識的に増やせば」と

お答えしたことを思い出した。また「みんな働く意欲は持っており、状況が整えば

立派に働く」ともある。人はムシの生き方から様々に教わることがあると言えるの

ではないだろうか。この本は効率追求の世界に一石を投じたような気がする。今回

の未曾有の東日本大震災で各種部品不足が生じたが、在庫を抱えると言うムダと思

われる部分も大切な時があることが証明されたのではないだろうか。

話は変わるが「リンゲルマン効果」と言う面白い実験がある。これは綱引きの実験

で1対1の時、人は持っている力の100%を出すが綱引きの人数がある一定の人数に

なると、無意識に力を抜いてしまうらしい。何とその人数が8人で約半分の力になる

と言う。要は組織には無意識の手抜きが生じているというものだ。東日本大震災の

危機の時、見事な対応をされたディズニーランドも会社の大切な優先順位は「安全」

「礼儀正しさ」「ショー」そして「効率」と位置づけているではないか。組織には

「効率」だけではなく「アソビ」や「バッファー」がなければならない、余裕を失

った組織がどのような結末に至るのかは私自身身をもって体験している。

2011/07/17 07:32 |

2011年7月10日

職場のいじめ(ビジネスサプリメント468号)

最近の朝日新聞に「いじめ 職場にはびこる」と言う記事が掲載されていた。

いじめは学校だけではなく職場にもあるし「職場のいじめ」をめぐる相談が増えて、

精神的に追い込まれ心の傷が癒えないまま苦しんでいる方が多いようだ。私もいろ

いろな組織の個人別ヒアリングをさせていただいているが、時々そのような方に出

会うが第三者が素直に聴いてあげることでかなり解消されることもある。記事によ

ればノート型パソコンが1台無くなり上司から「盗んだだろ」と責められたとか、

上司の嫌がらせも悪化し指示が聞き取れないと「難聴か!」と耳たぶを引っ張れ

たなど信じられない事例が掲載されていた。まさにパワーハラスメントである。

以前によくあったのが退職勧奨を拒んだのをきっかけに、窓のない部屋での勤務を

させられたなどリストラがらみの事例も数多い。厚生労働省によると、全国の労働

局などに寄せられたいじめや嫌がらせについての相談件数は2010年度で約4万件近

くあるらしい。セクシュアル・ハラスメントについては07年4月施行の改正男女雇

用機会均等法で雇用側に防止対策が義務化されたが、いじめについての基準はな

い。いじめについては加害者にいじめの意識がなく暴言等を吐くこともあるよう

だし、親しくしようと言う意図から乱暴な言葉遣いをする管理職がいるが、

いじめの判断が難しい場合も多い。「机をたたく、書類を投げる、灰皿が飛んで

くる(今は禁煙なのでないだろうが)」、「大声で命令、人前で叱責し見せしめ

る」「容姿や人格を否定する発言を繰り返す」「いかにも本人であるようなうわさ

や中傷を流す」などなどいじめのガイドラインはあるようだ。いずれにしても

「相手に対してのリスペクトマインド」が欠落しておれば問題であり、何か事が

起きても「言い訳が出来ないような言動は厳に慎むべき」であろう。悩みぬいた

結果メンタルな病になってしまったとか、退職をしてしまったなど不幸な結果を

招かないようにしたいものである。イキイキ職場で「何でも気楽にまじめな話が

出来る職場」でこそ生産性もあがり、個人の達成感が醸成されることを肝に銘

じたい。

2011/07/10 06:49 |

2011年7月 1日

危機管理(ビジネスサプリメント467号)

東日本大震災の発災以来世の中は危機管理が声高に叫ばれている。今夏は原発再

稼動の見直しなどもあり「節電」と言う大きな問題も惹起している。16年前の阪神

淡路大震災のことを思い起こすが、まさか関西に地震なんてと思っていたのである。

しかしその「まさか!」が怖い。あの時建物は壊滅、インフラも全滅、信じられな

いような世界だった。このような状況下において最近は「危機管理セミナー」が数

多く開催されているし、特に企業などのBCP(事業継続計画)について大きくクロ

ーズアップされてきた。私も危機管理セミナーをすることがある。BCPについての

教科書的なお話は出来ないが、過去の震災体験などから数多くの失敗事例をお話し、

少しでも危機感を醸成してもらうことは出来る。先日ある会に招かれお話をさせて

いただいた時のことである。主旨は危機管理マニュアルの話ではなく、危機を経験

しいろいろな状況に直面した時どのような対応をしたのかを話して欲しいとのこと

だった。また「まぁ何とかなるのでは!」とか「怖いがまさか!」と言う意識を変

えて、地域ごとにまとまって出来る対策を立てて行きたい、「BCPシート」を作っ

ても何か形だけに終わりそうで、もっと危機に対する基本的な考え方が先に来ない

ことには「絵に描いた餅」になるとも言われた。そこで阪神淡路大震災時の一連の

対応策や、倒産と言う危機を乗り越えたことなど赤裸々にお話をさせていただいた

のである。最終的には「起業の理念」を平常時に如何に全ての従業員に具体的に

「現場言葉」で徹底し行動出来るようにすることが大切では無いかとお話した。

そうすると後日ある方から次のようなメールをいただいた。「やはり体験談は凄く

響く、現在は大丈夫だろうとか、何か起こってみなければ分からないと言う気持ち

が大きいが実際の話を聞いたらこのままではいけないと言う気持ちがふつふつと湧

いてきた」とのお礼の言葉だった。「災害は忘れた頃にやってくる」を肝に銘じて

「備えあれば憂いなし」にしていきたいものだ。

2011/07/01 06:59 |

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