人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2011年10月30日

部下に任せる(ビジネスサプリメント480号)

ある企業の管理者の方のお話である。何時も笑顔がさわやか、人あたりも良く感じ

の良い人がおられた。唯一の欠点は「仕事を部下に任せることが出来ず自分でやっ

てしまう」ことだった。上司の方に伺うと「個人ヒアリングで刺激を受けたり」

「部下育成の話を聞いたり」すると、即翌日から実践されると言う。普通いくら良

い話でも現場に戻ると「忙しいから」と言う大義名分で殆ど実践されないケースが

多いものであるが、その方は実践に移されるらしいが暫くすると止めてしまい継続

されないそうだ。そのことを上司の方からお伺いしていたから、再度ご本人にずば

り「本当に育てる気持ちはあるのですか?」とやや厳しく質問をし「何故続かない

のか?」を分析しようとした。彼は「良いことだとイメージはされる」が、あきらめ

が早いようだ。ご本人曰くしばらくはやってみるのだが「任せるとスピードが遅く

生産性が上がらない、そしてイライラする」従って自分でやった方が早いのでつい

ついやってしまうと言われる。そこで「単純に仕事を任せていないか?任せる時は

その方の特性を良く見極めて、やり方のポイントや、要領を丁寧に教えて、途中で

チェックしているのか」を尋ねてみた。そうするとそんな時間はないので、ついつ

い「これをお願い」と言って任せているとのこと。それでは自分自身の仕事も軽く

ならないし、肝心の部下は育たないではないか。そこで彼と次のような約束をした。

「時間がかかっても誰に任せるのか、何時までに出来るようになるかを決めている

のか、その目的は何か、やり方のポイントを丁寧に教えてからやらせる、途中で必

ずフォローをする」と言うことを十分に話し合った。そして毎週私からメールで問

い合わせをする、その時の状況を教えてくれとまで約束をしたのである。その後し

ばらくメール攻勢を続けたが、思いのほか早く「部下の方が素早く出来るように

なった」とのメールが戻ってきた。おそらく彼はこの成功体験から学んだことを今後

の仕事に活かしてくれることだろう。今は管理職として凄く活躍しているらしい。

2011/10/30 18:08 |

2011年10月20日

えんぴつ(ビジネスサプリメント479号)

先日知人から聞いた話である。彼もいろいろと講演活動をされているのだがある

組織でのこと、何と開始30分前に参加者全員の机の上にレジュメと鉛筆2本とA4

用紙が3枚置かれていたらしい。彼は皆さんノートや鉛筆かシャープペンを持って

来られないのか担当者に聞いたそうだ。そうすると昔からこのようにしているとの

答えに唖然としたとのこと。何かおかしい!私が2度目に勤務したベンチャー企業

では自席には新品のPC1台のみ、それも社内販売で給与から天引きされる、引き

出しには何も入っておらず、必要なものは自分で揃えよとのこと。その時は仕方

なく文房具屋に行き必要なものを全て買い揃え、ゴミ箱まで買ったのを覚えている。

なんて言う会社だ、備品を自分で買い揃えるなんて考えられない、しかも給与天引

きとは!初めての職場では新人社員が入った時は組織図と社内電話表が机のガラス

面の下にひかれ、引き出しにはボールペンや鉛筆、消しゴムやホッチキス、集計用紙

がきっちりと揃えられていたのである。今から考えると企業ではなく起業マインドの

入り口を教えてもらったと思っている。講演に鉛筆や用紙を揃えている感覚が理解

出来ない。しかし長年そのようなことに慣れてしまうとそれが当たり前、何もおかし

いとは感じなくなってしまうものである。私もベンチャー入社時は「ここはそんなに

お金がないのか?」とも思ったことが恥ずかしくなってきたのはいろいろと異次元を

体験した1年後だった。即ち「ゆでガエル」になっていたのである、組織の中に甘え

が出て、自立マインドが欠落した自分があった。仕事においても主語は「上司や会社」

であり、決して「自分」ではないのではないか。改革や変革がうたわれて久しいが

まずは「自立マインド」「自律マインド」の醸成ありきで、手法やスキルでは決して

ないことは自明の理である。私が独立した時に痛切に感じたが「会社」は「自分」

なのである。変化の激しい今、組織内で自立した自分づくり、自分のことは自分で

しなければ始まらないと言うことを肝に銘じないといけない時が来た。

2011/10/20 07:20 |

2011年10月 9日

高齢者(ビジネスサプリメント478号)

私事で恐縮だが今年で満65才となり「前期高齢者」となってしまった。役所からは

介護保険者証なるものが送られて来て、介護保険料を支払えとのこと、確か健康保

険料と一緒に支払ったのではと思いつつ納めることにした。来年からは年金から天

引きされるらしい。一般的に65才を超えると高齢者と呼ぶようで、この定義による

高齢者人口は約3000万人にのぼり、総人口の23%を占めているとのこと、いわゆる

団塊の世代は来年から65才を迎えることになりますます少子高齢化の現象が進んで

いくことになる。先日久しぶりに同窓会が開かれたがみんなますます元気、腰の曲

がったいわゆる老人はいない。歳だけで高齢者と呼ばれたくはないのが実感である、

その中にあっても未だ仕事を継続している仲間達はみんな元気で気のせいか目が輝

いていた。日本では65才以上の人の就業率は19%と低いが元気な内は大いに働くこ

とを勧めたい。しかし60歳を超えるとなかなか働く仕事がないのも厳しい現実である。

私の知人で67歳であるが毎日元気に第3の仕事人生を送っている方がおられるが、

彼はイキイキされている。仕事が終わってからはジム通いで気持ちの良い汗をかか

れているらしい。仕事の内容は毎日いろいろな方の相談を受け的確な助言をされて

いるようだ、経験を積んでいるからこそ出来るので若い方では難しいように思われる

ものだ。彼が今の仕事を見つけられたのは、あらゆるところにアンテナを張り巡らせ

て、失敗しても仕方ないというスタンスであり、そこに悲壮感は全くなかった。

60才を過ぎると意識せずとも冠婚葬祭の機会はますます少なくなり、なるべくなら

避けたいと思うし、義理のお付き合いはだんだんと減ってくるものだ。老害と呼ば

れるようになったらお仕舞いであるが、出来れば世の中との接点を持ちたいと思う。

また少子高齢化の現在、不況や円高による産業の空洞化が進んでいるようだが、

ベテランの経験やスキルがより求められているように感じる。本を読んだだけで

解決することは誠に稀な現実の中、高齢者の知恵をもっと活かせる社会になって

欲しいと思う。但し「出羽の守=前の会社<では>と何時も口に出す」にはなり

たくないが。

2011/10/09 09:21 |

2011年10月 1日

遊び心(ビジネスサプリメント477号)

最近またまた「ヤル気」とか「モチベーション」が注目され出した。「あきらめ感」

や「やらされ感」はどのような組織でもあるものだろう。組織に属さなくても、

この頃「ヤル気」が出ないと実感されている方も多いのではないだろうか。

「ヤル気」や「モチベーション」は個人の問題でもあるが、組織に属すると全て

組織が原因と思ってしまう怖さも感じる。「ヤル気」で一番大切なことは良い意味

での仕事に対する「遊び心」ではないだろうか。最近また「ボーリング」が流行りだ

しているが、私の学生時代は第一次ブームであった。初心者でもある程度のピンは

倒せるし、小さい子供はレーンの両脇に柵が出てガターにならないようにされて

いる、先日のTVでは何と90歳のお年寄りがストライクをとられた映像が流されて

いた。ボーリングは即結果が出る、翌日に発表なんてことはない。たまにストラ

イクでも出ようものなら参加者から拍手、ご本人は「やった!と言う達成感」と

周りの人に認められたと言う「充実感」が出てきて夢中になる。そして得点と言う

ものを意識し、自分で「目標管理」を実践し投げ方の創意工夫をするのではないだ

ろうか。なぜこのようなプロセスが「仕事」となると違ってくるのだろう。そう!

数々のセミナーや個人別ヒアリングをしていて改めて感じることは、組織と言うも

のの潤滑油が不足し「遊び心」が欠落しているからではないか。成果主義と言う名

のもとに一直線に突き進む経営者、ますます委縮する社員、場合によればメンタル

ヘルスの問題にまでなってくるケースが多いのは嘆かわしい事態である。そこでも

う少し「遊び心」を入れてみたら随分違ってくるのではないだろうか。自分の力を

高め組織に貢献する風土が醸成されないのは、メンバーに仕事の「達成感」を味あ

わせ「気づき」を与えていないからだと感じる。即ち会社と言うものを「働く場所」

としか考えられないところに大きな問題点がありそうだ。「お金や職位や結果」だけ

ではなく個人の目標と組織の目標のベクトル合わせが如何に大切かを痛感している。

仕事をもっと楽しくやろうよ!と感じるこの頃である。

2011/10/01 07:47 |

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