人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

ブログ

2015年3月15日

気づくまで待つ(ビジネスサプリメント603号)

私は講演会などで「気づき」のお話しをすることが多い、自分自身が納得しないと「気づき」は出てこないものだ。そんなお話をすると受講者の方から「部下の気づきにそんなに時間をかけられますか?」というご質問があった。その時は必ず部下の方に関心を持ち続けて「時間をかけないと人は育たないものですよ」とお答えした。
先日の日経新聞に「宮大工の育て方」と題して宮大工の小川三夫さんのお話が掲載されていた。「放り出し待つ、気づくまで」というサブタイトルもあった。弟子には簡単に教えたらだめとあるが、何と100人以上の弟子を育ててこられたのである。育てたのではなく、弟子が自力で育つ環境を用意しただけと言われる。現代によくある懇切丁寧な指導では、自分で考えられないひ弱な人間が出来てしまう「教えずに放り出し、本人がはい上がっていくようにしなくてはだめだと」書かれていた。弟子に簡単に教えたら、出来なかった時、教えてもらっていませんという答えが返ってくる。教わらないで自分で苦労して考えて実践した弟子は、その限界を乗り越えられる。放っておいて気づくまで「待つ」ということをしていかなくては人なんか育っていかないと述べられていた。
宮大工という稀な仕事だから言えるという考え方もあるが、人材育成の基本的な考え方ではないかと思う。
また「木も人も、ふぞろいでないと強くならない」という信念をお持ちだった。
木を上から下に引く鋸が昔はなかった、だからみんな縦に木を割っている、木は生まれたままにしか割れないから、どれといっても同じものはない、そんなふうにふぞろいの方が良いのだと言われる。同じものが集まったらろくなことがない、一本一本が強み生かして支え合っているから強いものなのだと。
組織を構成している人材も全く同じではないだろうか。同じ人が集まったら何も気づかないし、成果も出ないことが多い。
木は山に生えている時には南の方に多く枝が出る、それを南に向けなくてはいけない、節がなくきれいな北側の木を南に向けると立木の時に日の光に当たったことがないから木は腐ってしまうらしい。
人間も一つの組織を支えていくには、いろんな人を「適材適所」で使っていかないと同じ人ばかりが集まったら何も気づかないし力がでないと述べられているが、我々の組織にも同じことが言えることではないだろうか。

2015/03/15 08:52

お問い合わせ