人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2015年6月 1日

おもてなしの技(ビジネスサプリメント608号)

東京オリンピック誘致のプレゼンテ―ションで滝川クリスタルさんが話した「おもてなし」は一躍はやり言葉になったが実践することはなかなか難しいものである。
先日の日経新聞に「おもてなしの技 見える化」と題した面白い記事が掲載されていた。「おもてなしの技を見える化出来ないか」、日本が誇るきめ細かなサービスを見える形にすることで、おもてなしの技術を共有しようという試みが始まっているらしいとあった。
伊勢丹新宿本店の女性販売員の話であるが、「模様替えで雰囲気を変えては如何ですか?」とお客様にこのように声をかけたらしい。お客様は「あなたがアレンジしてみて」と相談され、販売員が提案した机やカーテンの組み合わせが、お客様の心をつかみ商談が成立して大きな成果が出たという事例紹介があった。彼女は平均的な販売員の約4倍を売り上げ、抜きんでて優秀な販売員が選ばれる「シニアスタイリスト」の1人だそうだ。お店は何とか彼女のような優秀な販売員のおもてなしの技を映像やデータで見える化し、みんなで共有する試みを始めたとか。
私も前職の子供服売り場の優秀販売員の方(各メーカーから派遣された販売員の方も含む)を数名集めて「何故売り上げが素晴らしいのか?」を明らかにする会議をしたことがあった。今でいう販売技術の「見える化」であり「暗黙知」から「形式知」への転換を試みたことがあった。
共通して明らかになったことは、彼女たちはお子様連れのお客様が来られると、まずはしゃがみ、子供さんとの目線を同じにしている、そして子供さんに満面の笑顔で朝なら「おはようございます」昼なら「こんにちは」とお声がけしてから、速やかに親御さんの目線に合わせてお話を進めていたのである。
また販売トークでは、タイミング良くお客様のお考えを自然に引き出す技を持っておられた。決してムリにはお勧めしない、ご納得いただいてからしか商品のセールスポイントを話さない。お買い上げになって帰られる時には、必ずまた子供さんの目線になって「またね来てね!」と一言添えることを忘れない等々いろいろと明らかになったことが多かった。早速メーカーのお許しも得てみんなで共有できるような手引き書を作ったことがあった。今でいう「売れるための見える化」だろう。この手引書の共有で売り上げが上がったことがあった。
よく売っている人の技を盗めという時代はもう過去の考え方「どうすれば良いのか」を単なるマニュアルだけではなく、個人の力に頼らず情報共有することで底上げにつなげることが大切な時代になってきた。

2015/06/01 07:07 |

2015年6月15日

セブンイレブンの変化対応(ビジネスサプリメント609号)

過日の週刊ダイヤモンドに「鈴木敏文の破壊と創造」と題した記事が掲載されていた。
概要を簡単にご紹介すると次のようなことである。
セブンには悩みがあった、日販約66万と競合チェーンに10万円以上の差をつけ独り勝ち、しかし他チェーンとの差が10万を下回る地域があり、それが関西だったらしい。関西の商品作りを抜本的に立て直す、西日本プロジェクトが発足、商品本部のエースが単身で関西に乗り込んだ。関西はどこも商店街が元気、そこにヒントがあるということで、担当のエースは各地の商店街や、老舗で人気の飲食店を回ることから始めたとのこと。どこもリーズナブルな価格でおいしいものを提供していることを実感された。関西の客は商品を選ぶ物差しの基準が高い、そこで関西でセブンは他チェーンとの優位性はないと痛感された。まずは米飯、パン、麺など商品のベースとなる食材の質を上げることにとことん取り組まれた。米の食感が悪い、麺がぼそぼそしているなど一つ一つを見直していかれた。地道な努力を続け3か月を過ぎたころ、商品の売り上げが伸び始めたらしい。
例えばざるそば、麺は全国共通だがつゆを変えた。私も経験があるが関東のつゆは味が濃い、しかし関西は薄い、麺をつゆに軽くつけて食べる関東、しっかりとつゆにくぐらせる関西では、ざるそばの食べ方そのものが違ったのである。
「セブンのざるそばの理想型はこれだ、という思い込みが社内にあった」ことに気づかれたのである。関西では関東風の商品が地域の嗜好にあっていなかったのだ。つゆの味付けを変えてオーナーたちに試食をしてもらったところ「つゆを変えて欲しかったのだ」と喜びを持って迎えられ、即販売すると、低迷していた関西地区のざるそばの販売個数が全国平均を超えたそうだ。
全国どこでも同じ商品を並べ、大量仕入れで調達コストを引き下げ、価格競争力を付けるという時代は、世の中の変化と共に変わってきたのである。かつては東京の商品が目新しかったので、地方でも売れていたが、そのような時代は終わった。
鈴木敏文氏が何時も言われる言葉であるが「我々のライバルは競合するお店ではなく、常に変化するお客様のニーズである」を実践に移されたのである。
我々が心しなければならないのは、「常に現場を見ること」「現場に問題点が山積されている」「これで良いと思った時点で衰退が始まる」「思い込みや決めつけほど怖いものはない」ではないだろうか。

2015/06/15 06:13 |

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