東京オリンピック誘致のプレゼンテ―ションで滝川クリスタルさんが話した「おもてなし」は一躍はやり言葉になったが実践することはなかなか難しいものである。
先日の日経新聞に「おもてなしの技 見える化」と題した面白い記事が掲載されていた。「おもてなしの技を見える化出来ないか」、日本が誇るきめ細かなサービスを見える形にすることで、おもてなしの技術を共有しようという試みが始まっているらしいとあった。
伊勢丹新宿本店の女性販売員の話であるが、「模様替えで雰囲気を変えては如何ですか?」とお客様にこのように声をかけたらしい。お客様は「あなたがアレンジしてみて」と相談され、販売員が提案した机やカーテンの組み合わせが、お客様の心をつかみ商談が成立して大きな成果が出たという事例紹介があった。彼女は平均的な販売員の約4倍を売り上げ、抜きんでて優秀な販売員が選ばれる「シニアスタイリスト」の1人だそうだ。お店は何とか彼女のような優秀な販売員のおもてなしの技を映像やデータで見える化し、みんなで共有する試みを始めたとか。
私も前職の子供服売り場の優秀販売員の方(各メーカーから派遣された販売員の方も含む)を数名集めて「何故売り上げが素晴らしいのか?」を明らかにする会議をしたことがあった。今でいう販売技術の「見える化」であり「暗黙知」から「形式知」への転換を試みたことがあった。
共通して明らかになったことは、彼女たちはお子様連れのお客様が来られると、まずはしゃがみ、子供さんとの目線を同じにしている、そして子供さんに満面の笑顔で朝なら「おはようございます」昼なら「こんにちは」とお声がけしてから、速やかに親御さんの目線に合わせてお話を進めていたのである。
また販売トークでは、タイミング良くお客様のお考えを自然に引き出す技を持っておられた。決してムリにはお勧めしない、ご納得いただいてからしか商品のセールスポイントを話さない。お買い上げになって帰られる時には、必ずまた子供さんの目線になって「またね来てね!」と一言添えることを忘れない等々いろいろと明らかになったことが多かった。早速メーカーのお許しも得てみんなで共有できるような手引き書を作ったことがあった。今でいう「売れるための見える化」だろう。この手引書の共有で売り上げが上がったことがあった。
よく売っている人の技を盗めという時代はもう過去の考え方「どうすれば良いのか」を単なるマニュアルだけではなく、個人の力に頼らず情報共有することで底上げにつなげることが大切な時代になってきた。
2015/06/01 07:07