人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2009年11月29日

空巣老人(ビジネスサプリメント395号)

朝日新聞の天声人語に「空巣老人」なる中国語が掲載されていた。私はてっきり

空き巣狙いの老人と思っていたが「独り暮らしのお年寄り」のことだという。

わが国だけではなく中国も1人っ子政策の影響で高齢者だけ残される世帯が増えて

社会的問題になっているようだ。そうするとまたまた朝日新聞に「平日昼間模様」

という記事が掲載されていた。今各地で猛烈に増えてきたいわゆる「スーパー銭湯」

に平日にリタイヤしたシニアが行かれるケースが増えてきたそうだ。利用料はかなり

お安くてもいろいろなお湯があり、マッサージまで工夫されていて1日ゆっくり過ご

せるのだ。またシニアと幼児の2人連れの姿をよく見ることも多いという。お孫さん

と過ごされている祖父母の方々である。まさに平日の昼間模様が変わってきていると

いう内容の記事だった。最近の社会情勢や経済情勢で若い両親が働かれているケース

が多くなってきた。保育園の空き待ちが凄いとも聞くし社会問題にもなっている。

平日の昼間の様子がかなり変わってきたのであれば、そこに新しいていあんが出来

れば、シニアの生活も変わってくるだろうし、新たな市場も生まれるのではないだろ

うか。そう言えば映画料金が60歳以上は1000円であり、平日はシニアで一杯である。

このような新しいニーズに対応できれば「空巣老人」も孤独ではなくなるし、生活の

質も高まることは確実である。消費マーケットの競争相手は「同業他社ではなく変化

する市場」であると言われた経営者がおられたことを思い出した。世の中マイナス面

ばかりを見ればネガティブに考えがちだが、変化をポジティブに捉えればまた変わっ

てくるものなのだ。しかしその前提にはシニアのセカンドライフがまずは「健康」

「経済」「生きがい」の3本柱がしっかりしなければ成り立たないことは言うまで

もない。継続雇用の延長でイキイキされているシニアも増えてきた。

高齢者や女性が活躍出来てワークライフバランスが確立されてこそ問題視されている

少子高齢化も乗り切れるのではないだろうか。

2009/11/29 07:07 |

2009年11月22日

実践知(ビジネスサプリメント394号)

ナレッジマネジメントの権威であられる野中郁次郎氏が最近の寄稿で「実践知」

なる言葉を使われていた。氏は「暗黙知」から「形式知」の理論で著名な方で

ある。「暗黙知」とは経験や勘に基づく知識であり言葉などで表現が難しいもの

とされ、それを文章やマニュアルなどで「形式知」化していく理論を確立された。

確かに従来の日本企業はコツやカンなどの「暗黙知」で組織内において代々受け

継がれていたし、またそれが日本の企業の強みでもあった。「俺の背中を見て覚

えろ!」なんて言葉もあった。でも時代の流れでそれを継承していくことが難しく

なってきて、明文化され共有化される「形式知」が生まれたのである。

しかし最近のように雇用形態が異なる組織内ではマニュアルだけでは解決できない

ことが多すぎる現実も出てきたのである。そこで「実践知」なる言葉が出て来た

のではないだろうか。筆者流に解釈すればこれからは現場で工夫し、模索した

現場の知、即ち「実践知」が求められることは間違いない。今求められるのは

失敗してもそこから生まれる無形の力=気づきの「知」が大切なのではない

だろうか。元職場で父の日セールを考えた時、もうネクタイ・甚平・ポロシャツ

では売れないと現場の方々が考え始めた。丁度その頃はお父さんの料理がブーム

になっていたので、お父さんの人体を作り、ネーム刺繍入りのエプロンをかぶせ、

包丁・まな板などをセットにして企画販売したのである。果たして売れるかどうか

全く分からないがチャレンジした、そうすると予測したよりも倍も売れたことを

思い出した。贈られたお父さんは大喜びで、父の日はお父さんがお料理をする、

家族はゆっくりと待つというような間逆な現象が起きたのである。

このように現場で実践した知が積み重なって成果に結びつく時代を迎えている。

その後の企画の参考となり、数々の成果に結びついたのはこの「実践知」の

賜物であった。

2009/11/22 08:07 |

2009年11月15日

いい会社(ビジネスサプリメント393号)

日経の春秋で掲載されていたが「いい会社をつくりましょう」、そんな社是を

掲げた食品会社が長野県の伊那食品工業だそうだ。たびたび雑誌や新聞で取り

上げられる有名な会社であり、見学者が耐えないと聞く。伊那食品は「企業は

社会を構成する人々の幸せのためにあるべき」という理念があるのだ。

リストラはない、成果主義はない、終身雇用は守られる、午前と午後には

ティータイムまであるそうだ。今までの日本企業の良さとされてきたことが

未だに良い意味で残っており、しかも業績は抜群だと言う。今の日本企業の殆どは

人がコストでリストラばかり、定年継続雇用を推し進めると新規雇用はストップ

するなんて現象も起こっており、プレストン効果と言う言葉まで出て来た。

リストラが贅肉落としにならず筋肉落としで身動きできない企業になってしまう、

成果主義の崩壊でモラールを落とすだけの会社が如何に多いことだろうか。

終身雇用は「安心して働ける」から生産性が上がるのではなかったか?

「ゆでガエル」になってはいけないが、リストラや退職勧奨におびえる組織には

うんざりするし、真剣に働く気はしない。またトップは有言実行型でなければ

ならないことは言うまでもないし、今の時代は変革が必要なことは明らかなこと

である、変革の先には社員1人1人の「気づき」がなければならない。

まさに社内が気づきにナビゲートされるような風土作りが急がれる。

そうすると指示されなくても動ける風土になるし、会社に対するロイヤリティー

も高まり、自ら考えて動く風土が生まれ「無形の力=気づき」が生まれてくる

ものなのだ。

ギスギスした職場ではなく一体感が醸成された組織づくりの突破口は全員の

ベクトルが合った時ではないだろうか。あせってはならないが、経営層は

「気づかせ屋」になりきり、上司や仲間の信頼感が増した職場が出来れば

100年に1度の危機も乗り切れるのと確信するこの頃である。

2009/11/15 07:28 |

2009年11月 8日

考える風土(ビジネスサプリメント392号)

NHKのドキュメント番組で楽天の野村監督の采配が放映されていた。

野村監督はID野球でデーターを重視されるとばかり思っていたがそうでも

ないようだ。残念ながら今期で辞任されるようだが4年間もかかり今の

寄せ集めチームを変貌されたのだ。試合ごとの「ぼやき」ももう聞かれない

のは残念である。選手育成法に1流選手には非難、2流選手には褒める、

3流選手は無視と聞いたことを記憶している。

一番変わったのは「選手が自分で考えて動けるようになったこと」とコメント

されていた。首位打者の鉄平選手は和製イチローといわれ続けたが今期は大きく

花が咲いた、ノーアウトランナー2塁の時に一塁ゴロを打って「よし!」とうな

ずいているではないか。そう!野球の鉄則で3塁に転がしてもランナーは進塁

しにくいが1塁であれば進塁できる、もちろんヒットが一番良いのだがランナー

3塁になると得点の可能性が高まるのである。また渡辺選手が1塁に出た時に

盗塁は様子を見ろのサインであったが、渡辺選手がピッチャーのモーションを

見て確実に盗塁出来るとベンチにサインを送り見事に成功した場面もあった。

ベテランの山崎選手もチームリーダーとして気を抜いた選手に懸命に諭している

姿があった、ベテラン選手の後姿は美しいものだ。みんな言われなくても一体感

が生まれてチームが動いているのが映し出されていた。打率は昨年より悪い、

防御率も昨年より悪いのに勝ち越し11の貯金も出来たのである。残念ながら

日本シリーズには出られなかったが、きっとメンバーは更に学習したことだろう。

管理野球にはどこかに「やらされ感」が付きまとうが考える野球には「達成感」

が生じるのである。これは企業組織にも当てはまる、もちろんスピード感が求め

られるがメンバーが主体的に動いている組織は強いものだ。そこには自然に状況を

読みとる力が付きその変化対応が素早いのである。だから成果となって残るもの

なのだ。組織についてのお話をすることが多いがやはり強い組織には

「無形の力=気づき」が生まれているのである。この番組を見て改めて確信した

次第である。

2009/11/08 06:43 |

2009年11月 1日

理念の徹底は行動から(ビジネスサプリメント391号)

ある中小企業様を訪れた時のことである。訪問は2回目であったが会社に入るや

否や事務所ではなかったが、会う人全てが儀礼的ではなく笑顔で元気よく挨拶

されるではないか。事務所に入ってお手洗いをお借りしたが、若い方が控えめ

にスリッパをそろえられている光景を目にした。私は思わず「素晴らしいです

ね!」とお声をかけたら「とんでもないです!当たり前のことですから」と

言われた。何とさわやかな、感じの良い会社なのだろうと感心した。

皆さんには「やらされている」という雰囲気は全くない、まるでご自分のお家

感覚で行動されている。「大きな声でご挨拶」「常に笑顔で接しよう」なんて

スローガンをいくら掲げていても出来ていなければ何の意味もない。

トップの方にそのことをお話したら「現場の行動で理解しているからでしょう」

と言われた。そう!高邁な企業理念をいくら掲げても「実践」されなければ意味

はない。元職場で「ニコニコ・ハキハキ・キビキビと笑顔で接しよう!」と掲げ

ていたが、大勢の方たちの中では単なるスローガンだけに終わってしまった経験

があった。そこで皆さんに考えていただくコピーをシリーズで考え出したので

ある。まずは「あなただってお客様」とシンプルに表現した、即ち今はお客様に

ものを売る立場であるが、「あなたがお客様になる時もある、その時にどのよう

に接してもらえば気持ちが良いだろうか?」を考えて接してみようとのメッセー

ジを徹底した。最初は戸惑われた方が多かったがその主旨を良く理解される方が

大勢出てきてサービスレベルの評価が上がっていったことがあった。

また「あなたがいるからまた来たい」を第二弾で掲げたら、懸命にお客様の立場

に立った応対が増えて「リピーターのお客様」も増えたことがあった。

難しい言葉は現場での行動につながらないものである。「何故その言葉なのか、

その言葉は現場でどのように行動すれば良いのかを気づかせる」事が大切であろう。

理念と現場目線が一致してこそ職場はイキイキするものである。

2009/11/01 08:23 |

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