人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2015年8月 2日

弱音(ビジネスサプリメント612号)

私の仕事は社内ではなかなか言えず密かに悩んでいる人の話を聴くことが多い。ある時認知行動療法研修開発センターの大野裕氏のコラムが日経新聞に掲載されていた。
精神的にタフな人とは「どんな状況に置かれても弱音を吐かないで頑張る人ではない」とあった。そう!弱音を吐くのが苦手な人ほど精神的な打撃を受けやすい傾向があるのかも知れない。あんなに頑張っていたのに「悩んで辞めた」という人を数多く見受けて来た。弱音を引き出せなかったのは、私の聴き方に問題があったのかも知れと反省しているが。簡単に弱音を吐いて諦めてしまうのも問題であり、また弱音を吐かないまま頑張りすぎるのも良くはないだろう。こころのエネルギーを消耗し、出来ないという体験が重なると自信がなくなってきて負のスパイラルに陥るのである。
現在の私の立場はあくまでも会社と関係ない第3者であり、言ったことが会社に直接伝わることがないというスタンスでお手伝いしている。そして理論ではなく、私の実際経験したことからヒントを投げかけている。ある時全く元気のない女性の人とのヒアリングがあった。その方はもう何を言ってもムダ、全くやる気がなくなり、精神的に疲れ切っておられた。幸い2回のヒアリングのチャンスがあったので、1回目は全て聴き役に徹したが凄くまともなお考えを持っておられたので、失敗しても上司の評価が悪くなっても、あなたが悪いのではなく、理解しない上司に問題があるのではないだろうかと示唆した。思うところがあればまずは「思い切りやってみる、やらずにそのままにしておくのはもったいない」と申し上げた。ダメであれば自分では出来ないと上手く捨て切り、切り替えをしていこうと申し上げた。2回目の時に「思い切ってやってみました、上司も評価してくれました」という嬉しい言葉が帰ってきたのを思い出した。ことほど左様に思いを溜めずに吐き出すことが大切である。
私は前職で何回こころが折れそうになったことがあったか数えきれない。その時にホンネを言える友人がいたのである。思い切り弱音を吐いたら、意外とすっきりするものだ。また信頼おける知人からは「深刻になるな、真剣になれ」というアドバイスもいただいた。東井義雄さんの「夜が明けるから陽が昇るのではない、陽が昇るから夜が明ける」という言葉で目が覚めたこともあった。我慢せず弱音を吐きだすことも大切ではないだろうか。

2015/08/02 06:54 |

2015年8月11日

ホウレンソウ(ビジネスサプリメント613号)

先日の日経新聞の常識ナビというコラムに報・連・相のことが掲載されていた。
ビジネスの世界でよく使われる用語「ホウレンソウ」報告、連絡、相談の頭文字をつなげた造語で、仕事を円滑に進めるために欠かせない要素とされている。
どの組織でも必ず「報・連・相」は大切なものだと言われ続けている。
もうずいぶん前の話になるが入社2年目の時、上司から「最近の時間外届をまとめておいて欲しい」と指示された。私はそんなものはすぐに出てくるし、簡単な依頼と思い込んでいたのである。出来上がったものを即上司に渡すと「こんなものを要求していない、全体の時間外など分かる、欲しいのは販売部門、外商部門、管理部門のそれぞれと、前年対比、目標対比、時間外削減のための具体策が欲しいのだ」と言われるではないか。それなら最初からそう言ってくれれば良いのにと嫌な思いをしたことがあった。上司はおそらく簡単な指示からどのような行動を起すのか私を試されていたのだと思う。
こんな経験があったので、このコラム半ばに企業の人事研修などを手掛けるハイブリッドコンサルティングの吉山勇樹氏の意見にかなりの興味を持った。
氏によると「ホウレンソウで最も重要なのは相談」という。「ソウ→レン→ホウの順で進めると仕事の効率がアップする」と言われていたのである。この程度のことでいちいち依頼者に尋ねたら、自分の評価が下がってしまうのではないかと考え、ためらってしまうことが多いと思う。「期限間際になって、上司や先輩が考えていたものと全然違う資料を作って持って来られても困る、仕事を進める上では上司と方向性を一致させておくことが大切で、早めに相談するのがよい」と述べられていた。
全くその通りで、私の失敗事例も簡単に捉えてしまったからで、相談をしてベクトルを合わせてからすればもっと効率的な仕事が進められたと思う。
このコラムの結びに、ただ来た仕事を無計画にこなしているだけでは、ホウレンソウを心がけようにも難しい。ホウレンソウを心がけると上司や先輩、後輩などと意思疎通が良くなり、新たなアイデアも浮かんでくるし、ミスやトラブルを未然に防げたりするので、仕事のモチベーションを上げるとあった。
確かに「やらされ感」から受けた仕事でも「相談」を重視して取り組むと「達成感」に変わり大きな成果へとつながる可能性があるのではないだろうか。

2015/08/11 10:51 |

2015年8月21日

部下に関心をもつ(ビジネスサプリメント614号)

メンバーを「やらされ感」から「達成感」へとナビゲートしチーム力を発揮させる「気づきのマネジメント」が大切なことは言うまでもない。メンバーのモチベーションを高め「自ら判断出来る裁量を与えて自ら考え行動出来る人材育成」を如何にしていくかを、ある時中小企業経営者の方々にお話をしたことがあった。
その時若手経営者から「部下に対して気づく力をどのようにして醸成したら良いか?」と言うご質問を受けた。ノウハウではなく「経営者の熱いハート」がなければならないとお断りして次のようなお話をした。

1. まずは部下に関心を持とう、関心を持たれた部下はヤル気も出てくる、「関わっていく気持ちが関心」につながる、そうすれば相手のことが見えてくるのではないだろうか、人間は無視されることが一番辛いものなのだ、逆に関わり過ぎは何の効果もない、バランスが大切だ
2. 常に自分の後ろ姿が見られていると意識しよう、いくら立派なことを言っても実際に自分が実践出来ていなければ、信頼感もなくなるし「タテマエ」の世界になる
3. 声かけを怠らずにしていこう、あいさつもその後に続く「一言」を工夫すること、この「一言」が重要であり、部下に関心がなければ言葉にして出てこないだろう、声かけをすることで相手も反応するものだ
4. 同じ目線になって考える癖を付けていこう、自分の価値観を押し付けてはいけない、たまには一緒に汗をかくことも必要かもしれない、そのことにより今まで見えていなかったことも見えてくることがある、自分が出来るから、出来て当たり前の気持ちは相手のモチベーションを著しく落とす
5. 有言実行を守ろう、トップは言いっ放しが多く、言うだけで何もしないことが多く、いつの間にか言ったことが消えてしまうことがある、部下はその姿を素早く見抜き「どうせ言うだけ」と思い込み壁を作ってしまい、大きな溝が出来たら気づくことも出来ない

などなど具体事例を交えてお答えしたことがあった。指示命令だけでは成果も限られている、何よりもモチベーションが高まらないし「指示待ち人間」を作ってしまう。この変化の激しい時代こそ「自ら考えて気づき、行動出来る集団づくり」が最も求められているように感じる。

2015/08/21 13:28 |

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