人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

ブログ

2015年10月 5日

HOWよりWHY(ビジネスサプリメント618号)

現場の事故やミスをなくすためには、ルールづくりが絶対に必要なことは言うまでもない。以前ある大きな工場を見学させていただいた時、必ずヘルメットを被り安全靴を履き、指差し呼称が徹底されていたし、見学していて気持ちが良かったことがあった。ある大手食品メーカーでは「なぜなぜノート」を全従業員が常に携帯しているそうだ。作業現場で「なぜ?」と感じた疑問を書きとめ、休憩時間や仕事の後などに自分から先輩や上司に尋ねて分かったことを記入するノートらしい。そして疑問点を一つ一つ解消していく。ある時「何故製造工程ごとに静電気が帯電するのを防ぐ装置があるのか?」と思った人がいた。引火や爆発の恐れのある危険物を扱うメーカーならいざ知らず、食品の製造工程で「なぜだろう?」と感じたのである。帽子をかぶっていてもどうしても毛髪は落ちてしまうことがある。「毛髪の混入を防ぐ対策の一つであり、乾燥した室内では床の上に落ちた毛髪が静電気の作用によって60~70cmの高さまで吸い上げられて、製品に混入してしまう可能性があるから」だと分かったそうだ。仕事に対しての問題意識が段々と高まっていくことは素晴らしいことだ。
またある会社を訪問させていただいた時、従業員の方全員に笑顔で「いらっしゃいませ」と明るく挨拶をしていただいたことがあった。マニュアル型ではなく本当に気持ちが良かったのである。どうやら「どう言うか」よりも「なぜ言うか」ということを全員が理解し徹底されているようだった。前職でも「笑顔でお客様をお迎えしよう」というコピーよりも、「あなただってお客様」というコピーに変えたことがあった。何故なら抽象的なかけ声は心に響かないし心がこもらない、このコピーだと自分がお客様だった時、あのお店のあの人の笑顔が良かったと考えるし、自分の行動に結びつくと信じてのことだった。
人を育てる時も全く同じではないだろうか、HOW型の教え方は考える力がつかない、マニュアル人間になってしまう。今はWHY型の育成方法が求められている。但し「何故?」は責められているように感じる時がある、言い方に注意しよう。「なぜと考える力」を付けることが大事なのだ。考える力が付くと自然に行動に結びつき良い結果が生まれる。「ノウハウ」から「ノウファイ」の時代かもしれない。

2015/10/05 16:22

お問い合わせ