人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

ブログ

2015年11月15日

受け身(ビジネスサプリメント621号)

多くの個人別ヒアリングをしていて最近の印象的なケースをご紹介したい。
彼は中途入社3年目の男性社員、3回のヒアリングを行ったのである。このヒアリングの主旨は聞いていたようだが、初回は「何を聞かれるのか、何のためなのか?」が疑心暗鬼で非常に硬い雰囲気で始まった。私が「あなたの人物評価をしているのではない、そんな仕事はしない、第3者の利害関係のないものが、私の過去の経験値から学んだことを参考にして、あなたの隠れた部分に気づいていただくものだ」とかなり熱くお話をした。しかし初回はあくまで私が主導でお話が進んだが、質問に対しては明確なお答えをされる方であった。
2回目の課題を与えて終了、見ているとかなりメモ書きをされていたようだ。
その後2回目のヒアリングの日が来た。彼は課題に対して忠実に検証を行い、まとめた資料まで作って、私に渡してくれたのは驚きであった。2回目も課題を与えて終了したが2回目は、かなり彼からの発言も増えてきた、しかし何か物足りなく感じるところがあり、気になっていた。いよいよ最後の3回目の場面が巡ってきた。彼はいままでにも増してまじめな姿勢でお話になり、再度資料も作り直してくれていたのである。3回目が終わりの頃に私は彼に「今までは私が指摘したことに対して忠実にお答えをいただいたし、必ず実践に移して欲しい」とお話して「こんな機会はなかなか巡ってこない、何か私に質問はありませんか?」とお尋ねした。そうすると彼は「今までのお話で分かってきましたので、別にありません」と返答してきたのである。
そこで私は少し意地悪に「あなたは3回とも会社から言われてヒアリングを受けたと言うスタンスしか見えなかった、こんな機会はめったにない、自分から何か聞いてみたいということはなかったのか、つまりこのヒアリングは何時も受け身だったのか?職場でも上司から言われたことに対して問題意識を持って取り組んでいるのか?言われた通りにミスなく仕事をする癖がついているのではないか?」と言ってみた。彼は「今イラット!としました、何故なら私の一番出来ていない核心をついた言葉だったからです」と言うではないか。私は「ごめんなさいね!それに気づいて欲しかったので、わざと嫌なことを言いました、指示待ち人間になって欲しくないので」と付け加えた。最後に彼はにこやかな表情になり「ありがとうございました」という言葉で締めてくれたのである。

2015/11/15 06:13

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