以前神戸のある大手工場を見学させていただいた事があった。必ずヘルメットをかぶり巡回したのだが、担当者の方はポイントで必ず「右良し」「左良し」とそれぞれの方角を見て大きな声で指差し呼称をされていたのを記憶している。挨拶も「ご安全に」という言葉が当たり前だった。
何故このようなことを思い出したのかというと、先日日経新聞にボストン・コンサルティング・グループの平谷悠美プリンシパルの話が掲載されていたからだ。内容は「論理的思考法」だった、明確な指示を出したつもりなのに、どうも部下や後輩が的外れな仕事をする、組織で働いていれば誰しもそのような経験をするのではないかから始まり解消法の一つが「論理的思考」だとあった。私が一番興味を持ったのは末尾に「進行確認」の重要性を述べられていた部分があり、それで「指差し呼称」を思い出したのである。
少しご紹介すると、「部下に的確な仕事をしてもらう、留意点は<進行確認>が大切、<7・3・1の法則>というものがあり、仕事の達成度が7割、3割、1割の時に進行状況を確認し摺合せ事が重要とある、特に気をつけるべきは3割の時だ、達成度3割の時点とは、仕事を果たすための計画は立てられたが、実行される前の段階、7割はいったんその計画実行された状態である、7割の時点で上司に報告する人が多いが、それだとやり直しなどの負担が大きくなり、生産性も落ちる可能性がある、進行度1割は仕事の内容を説明した段階であり、3割の段階になったら報告するよう、またそれが部下にもメリットがあると伝えておくのがポイント、自分から報告してこない部下には自ら聞きに行き、それを嫌がられない関係を築いておくことが望ましい」と述べられていた。
報連相が大切だと言われて久しいが、まさに言われる通りである。しかし特にリスクが少ない仕事を頼むとき等は、たまには途中で何も言わずに任せてしまうことも必要ではないだろうか。自分で考える癖も付き上手くいけば自信につながるし、失敗すれば自ら学び取り自分のものにすることも出来る。今の若い世代は指針がなければ、教えてもらえなければどうすれば良いか分からないという人達が多い。「進行確認」は極めて重要だが、進行確認抜きの訓練もさせながら自立マインドを醸成していかないと良い成果物が出てこないかもしれない。
2016/03/01 08:15
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我々は思い込みをしてしまうことがよくある。ある解説書には思い込み(おもいこみ)とは、深く信じこむこと。また、固く心に決めること、思い込みをする人は、ある考え方に執着し、合理的な推定の域を超えて、固く真実だと信じ、自分が正しいことを言うために、常識・道徳・前例・先入観・固定観念などを根拠にすることがある。しかし、こうした根拠が他者と全く共有できないものである場合も珍しくなく、合理的な説得をしても信じてもらえないとあった。身近なものでは人事考課のハロー効果はまさにその典型だろう。ハロー効果とは「優れた特性、劣っている特性が他の特性を隠してしまい、この全体印象によって無意識に評価され、その人のある特性の評価を思い込みでゆがめてしまうことをいう」。
人の思い込みがいかに根強いものか「パラダイムの魔力」という本に、次のようなダイバーの事例が紹介されていた。「ダイバーが潜水中、水深50mほどの深さの海底にビールのバドワイザーの缶が落ちているのを見つけた、バドワイザーの缶といえば、赤地と白地のコントラストが強烈に印象づけられている、ダイバーはその赤色が目立ったのですぐ目に入ったらしい、実は50mくらいの水深だと、光の屈折の関係で赤い色は濃いグレーに見えるのだ、ところがダイバーの頭の中で<バドワイザーの缶>と<赤地と白地>が結びつき、刷り込みが起きているため、見えないはずの赤が見えてしまった、より正確にいえば、本当は濃いグレーに見えるものが、グレーに見えず、赤に見えてしまった」とある。それほど人の思い込みは強いものなのだ。そのため過去の思い込みで周りを見ていると、本当の現実が見えず、自分が見たいように現実を変えてしまうことがあるという内容だ。
我々の日常の仕事でこのような「思い込み」はないだろうか、その結果絶好のチャンスを逃すことがあるかも知れない。
売り手の思い込みで商品を作ってはいないだろうか?買い手の目線に立っているだろうか?自分目線だけで判断し、上司目線で考えた事があるだろうか?また部下目線で考えた事があるだろうか?
過去の経験に縛られて、変化を見逃していないだろうか?
私自身講演をする時に同じことをお話しても、オーディエンスが変われば、言い方を変えないと伝わらない事が多々あった。また過去と現在は変化しているのに、同じトーンで言ってしまっては何も相手の心に響くものはない。変化が見えず思い込んで突き進むことほど恐ろしいものはないと感じる。
2016/03/15 08:22
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