人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2015年12月 1日

成長戦略(ビジネスサプリメント622号)

先日の日経新聞「経営の視点」と題したコラムに「成長へ非正規の処遇見直せ」という記事が掲載されていたので、少しご紹介したいと思う。
コラムには家具小売り世界大手のイケアの事例が掲載されていた。
記事には非正規社員の能力開発は、女性や高齢者の活用などと並んで企業が労働力不足時代を乗り切る手立てとなると書かれていた。厚生労働省の調査によると、正社員以外の労働者の比率は昨年10月1日時点で40%に達しているらしい。非正規社員のなかで正社員になりたい人は少なくない。総務省の労働力調査では、正規の仕事に就けなかった「不本意非正規」の人の割合は昨年18%、25~34歳は28%とかなり高くなる。こなせる仕事の幅が広がれば正社員への転換もしやすくなる。企業による能力開発は社会が求める非正規社員の処遇改善にもつながるとあった。
その中にあってイケア・ジャパンは全従業員の7割にあたる約2000人のパート社員を対象に昨年9月から、職務遂行能力の向上と正社員への登用をセットで進めたそうだ。1週間の勤務時間が12~24時間や25~38時間の「短時間正社員」制度を受け皿として設けた。職務遂行能力チェック項目は多岐にわたる。来店客とのコミュニケーションをとり、ニーズを引き出して、それに見合った商品をご提案できるか、商品知識は使って素材の特色なども含め十分か等々。物流部門では倉庫のスペースを無駄なく活用する力量も求められる。仲間と連帯し、チームで成果を出せるかといった項目もある。
私が注目したのは、職場の上司がパート社員の能力開発にかける時間と熱意だ。自己評価が記入されたシートを前に、1対1で面談し、上司としての評価を伝え、どうすれば足りない力を付けられるかを話し合い、今後の目標設定をしているのである。面談は1人に付き3回重ねるなど、3から4時間割いているらしい。正社員になれば賃金が上がるし、それに見合った本人の生産性向上が企業としては必要になる。イケアはパート社員面談を重ねるなかで、職務遂行能力が高まる目途がついて初めて、正社員への転換を認めることとした。
一般に企業は非正規社員の教育訓練には消極的な場合が多い。社員でも仕組みは作ったが、上司との面談は行われずそのままで、運用されていないケースも多い。イケアのように正社員を含めて全社員を対象に、出来れば毎月1回は上司が面談する機会が欲しいものだ。面談していないのは時間がないと逃げているか、上司が部下を見ていないので面談する材料がないからかも知れない。成長戦略が叫ばれて久しいが、このようなきめ細かいことを実践する企業こそ、大きく成長するのではないだろうか。

2015/12/01 06:24 |

2015年12月11日

木鶏(ビジネスサプリメント623号)

大相撲のモンゴル勢の活躍は素晴らしいものがある。日本語を覚え厳しい稽古に精進されている結実であろう。
最近「未だ木鶏たりえず」という言葉を新聞記事で見た。久しぶりに聞く言葉であり、これは荘子に出てくる言葉で次のような内容である。
あるとき王の命令で軍鶏を訓練することになった。10日経過して王が訓練士に「もう戦えるか?」と尋ねた。そうすると訓練士は「まだまだです、むやみにやる気を見せているだけです」と答えた、また10日して王が尋ねると、訓練士は「いえ、まだです、ほかの軍鶏の声や姿にいきり立つ状態です」と答えた。
さらに10日経過して王がまた訓練士に尋ねたら、訓練士は「まだです、相手を睨みつけ、闘志を見せますから」と答えたらしい。そして10日してから王は訓練士にまたまた尋ねると「やっとものになってきました、他の軍鶏が声をあげても、いっこうに動じません、まるで木彫りの軍鶏のようで、徳がみについた状態です、もはや他の軍鶏でかなうものはなく、後ろをむいて逃げ出すでしょう」と答えたとある。
あふれる才能を内に秘めながら、そんなものは私には関係ないという顔をして立っている、そういう木鶏の姿こそ、荘子にとって理想の人間像であったのである。
この話は昔からよく語り継がれた内容であるが、前人未到の記録を達成した大横綱双葉山が69連勝した後70戦目、安芸ノ海に敗れてその後連敗したことがあった。当時の69連勝は今と比べ物にならないほど難しい記録であったことは言うまでもない。毎日が自分との闘いでもあったのであろう。その時寡黙な双葉山が発した「われ、いまだ木鶏たりえず」と語った話は有名である。
白鳳も63連勝していたが64戦目に稀勢の里に敗れ去ったのは記憶に新しい。平成の大横綱でもなしえていないのである。しかしこのような大記録を達成した人は、人には分からない猛練習を行い迷いなど吹っ切って心・技・体が充実された結実なのだろう。何事に対しても「動じない心」を持つことは大切であるが、我々凡人では非常に難しいことである。それにしても本年の九州場所の白鵬の猫だましは残念であった。
何事にも諦めずに自分の取り組んでいることに集中し、毎日の努力の積み重ねをして、人には見えない懸命な鍛錬をしていけば、無理な話ではないかもしれない。早く日本人でも「木鶏」に値する力士が誕生して欲しいものだ。この先いろいろなことが起きるだろう、何が隠れているか、何が待ち受けているかは誰も分からない。なかなか出来ないことではあるが、少々のことに身じろぎしない自分でありたいし、周り左右されない自分の力をつけて、双葉山の言う木鶏には遠く及ばないが、泰然自若たるその精神は学びたいものだ。

2015/12/11 06:40 |

2015年12月20日

今年も残り少なくなりました(ビジネスサプリメント624号)

今年は「ハラスメントやいじめ」など人権に関わる問題が特に増えています。

「パワハラ」「セクハラ」「モラハラ」「マタハラ」「オワハラ」「エイハラ」「リ

スハラ」「カラハラ」等々・・・・・・ちなみに「セクハラ=セクシャル・ハラ

スメント」は平成元年から使われている言葉のようです。

しかし現在はその防止対策ばかりとなり「この言葉はダメ」とか「ここまでは

言って良い」と言うものが目立つよう感じます。言い換えれば「頭が痛いから

頭痛薬を飲む」と言った対処療法で「どうすれば頭痛にならない体をつくるか」

の根治療法が欠落しているのではないでしょうか。安心して働ける職場を作っ

ていくにはお互いが「リスペクトしあいながら、コミュニケーションが活発な

職場」が大切になってくるのは言うまでもありません。一番大事なことはお互

い同士が「関心=関わる心」を持つことが大切、そして基本は日頃の声かけで

あり、そのことがお互いの信頼関係を構築していくのです。昨今の学校のいじ

め問題などは誰も関わりたくない気持ちが優先しお互いに関心を示さなかった

ために大きな問題となったのではないでしょうか。

来年こそお互いに「リスペクトマインドを持ったイキイキ職場」でよりコスト

パホーマンスを高めていきたいものです。

どうか良いお年をお迎えください。

2015/12/20 06:06 |

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