人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

ブログ

2016年1月20日

育成とは(ビジネスサプリメント627号)

以前ある組織でリーダーの方が部下の指導方法で悩んでおられた。その部下の方はまじめでおとなしいのだが、ご自分の考え方を自ら述べられることが少なかった。従ってリーダーは彼が仕事の出来ない方ではないが、何を考えているのかなかなかつかみにくかったらしい。またリーダーの目線で見るとイライラすることも多く、ついつい責め口調で問い詰める場面が多かったそうだ。
強く指摘すると「物言わぬ人」になり議論がかみ合わなかったのである。そこで私にどうすれば良いのかと質問された。私はお2人共良く存じ上げていたので、リーダーに「あなたは理詰めで隙なく指摘するが、彼の性格ではヤドカリ現象=触れると貝の中に入ってしまう、どうだろう温かい空気を吹き付けると中から出てくるのではないだろうか?」と、また「任せることは育てること、彼は出来ないわけではないから、思い切り任せてプロセスの報告のみ怠らず、結果責任はリーダーにあると言ってみてはどうだろうか?」とも申し上げた。言わせる雰囲気は大切で、その答えから最も良い解決法が見つかるものだし、思い切って任せることは「自立」する機会でもあり、例え失敗してもその失敗から必ず学べるものではないだろうかと思ったのである。
リーダーは随分悩まれたようであるが、自分自身には言わせる雰囲気作りはなかなか難しいので、まずは「ある仕事を思い切って任せ、結果責任はリーダーが持つと宣言された」とのこと、そして必ず途中経過は報告することを義務付けられた。
先日リーダーとその部下の方とお目にかかったがお2人共凄く笑顔があった。そして各人と個別ヒアリングをしたのであるが、リーダーはある案件を「思い切って任せました」と言われ、その結果その案件で外部の相手先から驚くような良い反応が出て、彼もヤル気が出たとのお話しだった。続いて部下の方とヒアリングをしたが何時もより明るい、そして「ある案件でリーダーから任せられて、自分なりにやってみたら思わぬ良い反応が返ってきた、何だが自信が出てきた」と言われるではないか。また困ったらリーダーに相談できるし、自分のこれからの方向性が見えてきたと断言された。そう!指摘の繰り返しばかりしても、あまり効果が出てこないことが多い、このリーダーは「任せることが育てること」を実践されたのである。

2016/01/20 07:10

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