人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2016年2月10日

デジャブ(ビジネスサプリメント629号)

先日の日経新聞の「大機小機」に面白い記事が掲載されていたのでご紹介する。
「中小企業の1つや2つ倒産しても」と、失言したと伝わっているのは、高度成長の立役者池田勇人元首相のことである。吉田茂内閣の通産相の時だったようで、不信任案を可決され辞任されたそうだ。しかし国会議事録は少し違う。インフレ経済から安定経済への過渡期に、経済原則に反した商売をした人が倒産し、倒産から思い余って自殺することがあっても、気の毒だがやむを得ぬ、という趣旨の答弁だった。与党内の反吉田派が欠席して不信任が通った。経済のパラダイムが変わる時、潮流を見誤りかじ取りを間違えた企業は市場から退出を迫られる。企業規模を問わぬ市場経済の理(ことわり)だ。池田氏の言葉はきついが正論だろう」とあった。誠にタイムリーな記事だった。
今経営危機にあえぐS社が官民ファンドの支援を受けて経営再建するのか、グローバル大企業が買収するのかと、連日経済記事に掲載されている。
自力で立ち直れない企業は、国が救うということが許されるのか、伝統的な大企業だから国がリスクをとるのか、難しい問題なので私には軽軽に意見を述べることは出来ないが、「デジャブ=既視感」という言葉が蘇ってきた。
そう以前勤務していた企業が、債権放棄をして預金保険機構がOKの決定をしたことがあった。しかし一私企業を国が救うのかという議論が巻き起こり、
報道キャスターまで、全国ネット放送でかなり厳しいコメントをされたのを記憶している。結局は救済されずに「大型破綻」したのである。
簡単に「破綻」という言葉が使われるが、働く人達やステークホルダーには随分痛手を与え、言葉では言い表せない誠に厳しい試練が待ち受けていた。
大学生が対象の就職人気企業ランキングを見ると、古顔の大企業が幅をきかせている。「大企業なら安心」と思い込んでいたら誠に怖い。
経済潮流を見誤りかじ取りを間違えたらだめなのである。経営トップは飛行機の機長であり、操縦を間違えたら墜落する。機長が乗客を絶対に守るという強い使命感と責任感がなければ辞めるべきである。リーマン危機に際して電機大手は軒並み屋台骨を揺さぶられたが、H社やP社はいち早く立ち直ったではないか。またデジャブを感じたくない今日この頃である。

2016/02/10 18:59

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