人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

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2016年4月 1日

誰が1日8時間と決めた(ビジネスサプリメント633号)

先日の日経新聞に<「1日8時間」常識じゃない>という面白い記事が掲載されていた。最近の運転手の過労常態化による連続した大事故、飲食業の長時間労働による裁判沙汰など労働時間の問題が大きくクローズアップされてきた。その記事を少し紹介すると
「1日8時間は本当に最適な労働時間なのか、働き方の常識を問い直す取り組みがスウェーデンで広がっている、<じゃ後は頼むよ>トヨタ自動車系の販売会社、トヨタ・センター・イエ―テボリで働く男性は正午になると、出勤してきた社員と交代した、<午後は運動で汗を流すか>と・・・
ここのエンジニアは午前、午後の2交代制、みんな1日6時間だけ働く、8時間勤務の時は大変だった、車の修理で従業員達は疲れ、納車は最大1ケ月待ち、顧客の不満も募った、そこで労使で話し合い営業時間を延ばす一方、1人当たりの労働時間を6時間に減らした、給料は減らさず人員を2割増やしたのだ、改革の成果はすぐに出た、<6時間なら集中力が続く>と現場が活気づき、納車は最短で4分の1に短縮、顧客の評判も高まり、人件費が増えても売上高と利益は5割超増えた、働き方の<カイゼン>の結果だとある」。労働時間が長ければ、それだけ成果が出ると言う考え方はもう通用しない時代なのだ。そう言えば私がまだ前職で中堅社員だったころ、仲間に残業の多い方がおられたが、麻雀を約束された日は残業もせず、仕事も速く終わっていたのを記憶している。
また記事は続けて「同じ市で介護施設に6時間勤務を入れた、同国で広がる6時間勤務には世界中から視察や問い合わせが相次ぐ」とある。今日本の介護の世界は労働時間が長く介護職の方々は疲れ切っておられるのが実態で事件まで起きている。
8時間労働が定着したのは20世紀初め、大量生産による長時間勤務で健康を損なうと1919年に国際労働機関が1日8時間・週48時間を労働基準に定めたそうだ。もうそれから1世紀が経過した、付加価値の創造や、女性で働く人達が増えた現在、労働環境は大きく変わってきたのである。硬直的な労働時間に縛られず、いかに成果を上げていくのかが問われ始めたのである。
つい最近国会開催中答弁者の横で堂々と本を読んでいた議員がいたなんてニュースがあったが、全く驚きである。
長時間労働がはびこる日本であるが、リクルートワークス研究所の石原氏が日本企業約600社を調べると「長時間労働と業績に何の相関もなかった」らしい、むしろモチベーションの低下が目立つという結論を出されたようだ。生産年齢人口が減っていく日本は、働き易さと成果を両立させることを考えていかないと、進んでいる海外の会社にますます離されていくのではないだろうか。

2016/04/01 05:59

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