先日の日経新聞に<「1日8時間」常識じゃない>という面白い記事が掲載されていた。最近の運転手の過労常態化による連続した大事故、飲食業の長時間労働による裁判沙汰など労働時間の問題が大きくクローズアップされてきた。その記事を少し紹介すると
「1日8時間は本当に最適な労働時間なのか、働き方の常識を問い直す取り組みがスウェーデンで広がっている、<じゃ後は頼むよ>トヨタ自動車系の販売会社、トヨタ・センター・イエ―テボリで働く男性は正午になると、出勤してきた社員と交代した、<午後は運動で汗を流すか>と・・・
ここのエンジニアは午前、午後の2交代制、みんな1日6時間だけ働く、8時間勤務の時は大変だった、車の修理で従業員達は疲れ、納車は最大1ケ月待ち、顧客の不満も募った、そこで労使で話し合い営業時間を延ばす一方、1人当たりの労働時間を6時間に減らした、給料は減らさず人員を2割増やしたのだ、改革の成果はすぐに出た、<6時間なら集中力が続く>と現場が活気づき、納車は最短で4分の1に短縮、顧客の評判も高まり、人件費が増えても売上高と利益は5割超増えた、働き方の<カイゼン>の結果だとある」。労働時間が長ければ、それだけ成果が出ると言う考え方はもう通用しない時代なのだ。そう言えば私がまだ前職で中堅社員だったころ、仲間に残業の多い方がおられたが、麻雀を約束された日は残業もせず、仕事も速く終わっていたのを記憶している。
また記事は続けて「同じ市で介護施設に6時間勤務を入れた、同国で広がる6時間勤務には世界中から視察や問い合わせが相次ぐ」とある。今日本の介護の世界は労働時間が長く介護職の方々は疲れ切っておられるのが実態で事件まで起きている。
8時間労働が定着したのは20世紀初め、大量生産による長時間勤務で健康を損なうと1919年に国際労働機関が1日8時間・週48時間を労働基準に定めたそうだ。もうそれから1世紀が経過した、付加価値の創造や、女性で働く人達が増えた現在、労働環境は大きく変わってきたのである。硬直的な労働時間に縛られず、いかに成果を上げていくのかが問われ始めたのである。
つい最近国会開催中答弁者の横で堂々と本を読んでいた議員がいたなんてニュースがあったが、全く驚きである。
長時間労働がはびこる日本であるが、リクルートワークス研究所の石原氏が日本企業約600社を調べると「長時間労働と業績に何の相関もなかった」らしい、むしろモチベーションの低下が目立つという結論を出されたようだ。生産年齢人口が減っていく日本は、働き易さと成果を両立させることを考えていかないと、進んでいる海外の会社にますます離されていくのではないだろうか。
2016/04/01 05:59
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最近の講演後中小企業経営者の方々とお話しをする機会があり、あるトップの方が中途採用してもすぐに辞めてしまうケースが多くなったと仰る。採用に掛かる経費、育成期間の経費は馬鹿にならないものだ。
私も1度転職しており中途入社の経験があるが、各企業には独自の文化や風習があり理解するまでの違和感は少なからず残るものなのだ。
「何で?」「それっておかしいよ!」「トップの言うことがよく変わるね!」など転職した人の多くはこのように感じることが多い。
私はあるとき転職先で「前の会社では○○していましたよ、どうしてそのようなことをするのですか?」と問いただしたことがあった。その時トップ曰く「そのような考え方だから破綻したのではないですか?」と言い返されたことがあり、恥ずかしくて言い返せなかったのを思いだす。いわゆる「出羽の守」だったのだ、要は「前の会社<では>」とすぐ言葉に出してしまう癖が付いていたのであろう。自分の「経験値」は相手から問われて披歴するものである、そうすると「さすが、やはりご苦労されたからでしょうね、良いご意見をいただきありがとうございます」と返ってくるものだ。
考え方を変えて見ると、異文化のところを経験できるのは、自分の幅が広がることにつながり良い経験が出来たと考えないと自分自身が損をすることになる。
もちろんコンプライアンスに違反していることがあれば論外ではあるが。
中途入社者はそれなりに期待して入社してくるものだが、案外中に入ってみると、バカみたいに見える事が当たり前に横行していることが多い。しかし本当に理解出来るのは少なくても3年間ぐらい経過しないと見えてこないものだ。まさに「石の上にも3年」である。
1つの会社で長く勤務していると、世間から見ればおかしいことも、当たり前に感じてくるものだ。いわゆる「会社の常識は社会の非常識」なのだ。その中にあっても「イワシの生簀に鯰1匹」的な存在感を出さなければいけない。すなわち「イワシは生命力が弱く、陸揚げすると殆ど生きてはいない、しかし全く違う鯰というものが入ってくると、少なからず緊張して刺激をうけ、生き残るイワシが多い」という例え話につながってくる。
まずは焦らず、慌てずに企業の風土を理解し、「出羽の守」にならずに、タイムリーに過去の「経験値」を出すと上手くいくものだ。「鯰」になっても上から目線ではダメであることは言うまでもない。
2016/04/15 06:02
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最近「聞く力」とか「伝える力」、また「聞く技術」などの言葉が氾濫し、本屋に行けばかなりの数の本が出版されている。
私も個人別ヒアリングを12年間続け、延べ6000人を超える方々と1対1で約1時間超向き合ってきた。その際は聞くことが「スキル」と感じた事はめったにない。相手の方とは何時も正面に向き合わずに90度の角度で座っていただく、そうするとお互いに時々目を見るし話し易いのだ。これをスティンザー効果と呼ぶらしい。聞くことの基本は「相手との信頼関係を醸成すること」が一番大事だと感じる。相手にホンネを語ってもらうには、まずこちらがホンネをぶつけることが大切、そして内容を絶対に外に漏らさないこと、このことをブレズに今まで実践してきたつもりだ。
聞くことは「単に相手が何か聞いて欲しいので聞き役になる」「聞いている中で、自分が何かを伝えたい」の2つのパターンがあるが、いずれも「聞くことに徹する」ことがポイント、これがなかなか難しいからやたら聞くためのスキル本が売れるのかも知れない。
自分自身の経験上でも聞く時は意外と聞いているつもりでも聞いていないことが多い、相手が言っているのに、途中で聞くことを中断してしまうことがある。何故なら次に自分の言うことを無意識に考え始め、相手の声が聞けない状態に陥りやすいからだ。私は何時も無意識にやっているが「アクティブリスニング=積極的傾聴」が大切、これは相手が言ったことを必ず「復唱」してから、自分の意見を言うようにすることだ。いちいち相手の言ったことを「○○さんは△△と言われましたよね」と確認していては会話が弾まないが、積極的傾聴を身に付けることが「聞く力」の唯一スキルかも知れない。
でも一番大切なことは「信頼関係を築く」こと、そのためには「相手の話をさえぎらない」「聞き手が聞きたい話題に絞り切らない」「話し相手が求めていないことを押し付けない」ことが肝心。
相手が意見を求めてきても「すでに相手の中に答えを持っていること」も多い。
そのような時は「あなたはどのように思いますか?」と返すこと、また「あいづち」や「うなづき」も大きな効果があるのは言うまでもない。
随分昔に1人だけ相手の方が私のヒアリングに対して拒否反応をされた時があった。こちらが真剣にホンネを言っても乗ってこない、的確な返事がない、ついつい私は無意識にイライラしてしまったことがあり、大失敗したのを記憶している。ことほど左様に「聞く」と言うことは難しいものであるし、テクニックだけでは通用しないものである。
2016/04/20 19:21
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