人と組織研究所 気づきナビゲーター 高橋貞夫

ブログ

2016年5月15日

現場こそいのち(ビジネスサプリメント637号)

以前ある物流関係の会社を数年間お手伝いしたことがあった。何時ものように最初は社員全員に個別ヒアリングを数回行ったが、現場で働く人達の声から危惧する事が明らかに浮かんできた。この会社は24時間フル操業体制なのだ、夜中に荷が入って受け取らないといけない作業があった。その作業をする人達とのヒアリングをしていると、かなり疲れている方々が多かったので、良く聴いてみると交代制で表面上の不満や不公平はないらしい、しかし深夜の作業は昼間と違いかなり疲れるし、周りが動いていないだけに寂しい環境になる。また不規則な勤務態様は体がなかなか慣れないとのこと。メンバーが言うには「会社のトップは我々の仕事が分かっているのかなぁ?多分何も知らないだろう」とつぶやかれたのである。
これはいけないと思い私は早速その声をトップにお伝えした、そして「社長!深夜に現場を見に行ってください、そして人数分の熱い缶コーヒー(冬場だったので)を持って行ってください、1人1人にお渡しされながら皆さんお疲れ様と一声かけてあげてください」と直言したのである。この社長は何時も働く人達を大切にされる方だったので、早速数日後深夜に缶コーヒーを持ってご自分の車で現場へ行かれたのである。そして1人1人に声をかけられ、何か問題があれば遠慮なく言って欲しいと言われたらしい。
その後現場の方達と話す機会があったが、彼らから「先日社長が深夜来られて声をかけられた、しかも缶コーヒーまでいただいた、我々の仕事の内容を理解していただきましたよ、ますますやる気が出て来ました」と言われるではないか。この社長はあるべき姿や意識を述べるだけではダメと理解されているし、また公平に評価している、報酬も正当に渡しているから頑張るのは当たり前と言う発想をされていなかったのである。働く人達の現場を見て同じ目線に立たれて励まされたのである。数日後社長から「現場に赴いて大変良かった、皆さんの顔を見て何か一体感を感じましたよ」と言われたのである。
そう、ミッションや企業理念や事業ビジョンなど難しい言葉を並べて唱和してもあまり意味はないかも知れない、トップは我々を何時も見てくれているという気持ちが伝われば、働く皆さんは良い仕事をされるし、コスパは高まるのである。まさに現場はいのちなのだ。

2016/05/15 06:45

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